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第六章「確認」

ネイルに温泉に行こうと誘われて、2人で馬車で2時間ほど移動した先には、
ラリイが今までに見たこともない景色が目の前に広がっていた。
まるでどこかの異世界にでも迷い込んだかのような街並みだった。
様々な獣人達が居て、商売や観光で賑わっている。

「ここは、とある異世界に存在する極東の島をモデルにしてるって街で、
ここでは衣食住が俺達が知っているのとは、違って少し変わってるんだ。」
「へぇー」

ネイルの説明を受け、ラリイは納得する。
通りで、見たことがない服に食事、それに家が存在しているのだと、ラリイはすぐに理解出来た。

「ここが俺達の泊まる宿な。」

まずネイルは、慣れた感じに街の中を歩いていき、自分達が宿泊する
宿にすぐに向かい、ラリイに言う。

「とりあえず、宿で荷物置いて、着替えて落ち着いてから、行動しよう。」
「うん。」

2人が宿の出入り口でやり取りしていると、宿から元気のいい若い男の
兎人が、出て来て、2人を出迎える。頭にはウサギの耳がついている。

「ああーネイル坊ちゃんじゃないですか!ようこそ!幻庵へ!
今日はまた可愛い子まで連れて来て・・・もしかして、噂のコレですか?」

若い男の兎人は、ネイルに小指を立てながらニヤニヤしながら聞く。

「相変わらずだな。バルト。
昔馴染みと言え、客に露骨に聞くか?普通・・・」
「いやーだって、噂はこっちまで流れて来てますよ?
あのネイル王が、とうとう嫁を娶るかもしれないって!
宿の女達も、そりゃー噂しっぱなしですよ!」
「はぁ・・・相変わらずだなーお前達は。」

ネイルは溜息をつきながら、兎人のバルトに答える。

「こら!何を無駄口を叩いてるんだい!さっさとお客様を案内しな!」

宿の奥から、もう1人の若い兎人の女が出て来て、バルトを一喝する。
如何にも姉御肌と言った感じの、カッコいい大人の女性と言った雰囲気に、ラリイは思わず、素敵だなぁと見惚れてしまっていた。

「ネイル様、ようこそいらっしゃいませ。
そして、ラリイ様も初めまして。
当宿、幻庵へ、ようこそおいで下さいました。」
「うん。女将、少しだが世話になる。」

ネイルは出迎えてくれたもう1人の女の兎人にそう答える。
ラリイも、慌てて、お世話になりますと頭を下げる。

「うふふ、これはご丁寧に。ささ、ここで立ち話は何ですから、
もう奥にお2人のお部屋もご用意してありますので。」

慣れた手つきで、女将を呼ばれた兎人は、2人を宿の中に誘導する。
隣同士の部屋に別々に案内され、ラリイはとりあえず安堵する。

「一緒の部屋だったら、どうしようかと思ったけど・・・
流石にネイルもそこは気を使ってくれたんだ・・・」

建前上は2人は夫婦になると言う事にはなっているが、
それはあくまで表向きだ。
ラリイは宿と言う場所で泊まると聞いた時は、どうなるのか、
少しドキドキしていたのだ。
色々と自分で勝手に考えて、ラリイは恥ずかしくなる。

「ラリイ様。失礼致します。」

部屋の外から声がして、ラリイは我に返る。
さっきの女将と呼ばれた、兎人が、ラリイに断り、部屋に入る。

「先ほどは宿の者が失礼を致しました。」
「いえ!そんな、大丈夫です!」
「うふふ、ラリイ様は御噂通り、可愛らしい方ですね。」

女将はラリイの態度に好感が持てたのか、優しい笑顔でラリイを見ている。

「自己紹介が遅れましたね。私はこの宿、幻庵の女将をしている、コットンと申します。どうぞ、気軽にコットンでも、女将とでもお呼び下さいませ。」
「はい!じゃ、女将さんって呼ばせて貰ってもいいですか?」
「はい。ラリイ様がそれで呼びやすいのであれば。」
「じゃあ、それでお願いします。」
「うふふ、かしこまりました。」

ラリイと女将は互いに笑い合う。ラリイは、この兎人に、強い憧れを感じた。
そう思っていると、女将はラリイに話を続ける。

「ラリイ様は、この温泉街の事は今回が初めてで、
いらっしゃいますでしょうから、色々教えてやってくれと、
ネイル様から頼まれましたので、お伺いしました。」
「そうなんですか!」
「はい。なので、まず浴衣と言う服に着替えて貰いながら、
簡単に説明させて頂きたいと思います。」
「はい!それでお願いします!」
「では、浴衣も初めてだと思いますので、お着替え手伝いますね?」
「はい!」

ラリイは色々なことにドキドキしながら、女将の話を聞いていた。
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