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第六章「確認」

アディリスはラリイに再度、逢う事もなく。
決闘が終わって、ネフィリートに「ラリイを頼みます。」
とだけ、告げて、すぐに帰って行った。
もう、妹は大人になったのだ。自分が守らずとも良いほどに。
これからは、自分の信じた者と歩んでいくのだろう。
いつか迎えるであろう日が、こんなにも早いとは、
アディリスは思わなかった。
ドラゴネスで苦しんでいるのだとばかりだと思っていたのに・・・

「父上は大泣きされるだろうな。全く、報告するのが嫌になる。」

アディリスは、苦笑いするしかなかった。
取り戻せなかったのだから、しょうがない。
あのラリイ本人が拒否したのだから・・・

「おい・・・ラリイ・・・」
「ひっく、ひっく・・・ううう、よかったよぉ・・・」
「わ、わかったから、もういいだろう?」
「うん?・・・ぐすぅ」

泣いてるラリイを宥めて、ネイルはラリイから少し身体を離す。
抱きつかれて嬉しいのは嬉しいのだが、ネイルは素直に
喜んでる場合ではなかった。

「お2人さん熱いね!」
「やれやれ、やるなら寝室でして下さい。」
「これは早くにひ孫の顔でも見れるかのぉ?」

ネフィリートとカミーラとベアードに見られていたのだ。
ネフィートとベアードはニヤニヤしながら見守り、カミーラは
ほぼ呆れている。
皆に見られていたのを知ったラリイは、さっきまであんなに泣いていたのに
一瞬で泣き止んで、一気に顔を真っ赤にして、ネイルの背中に隠れた。

「あわわわわわわ!は、恥ずかしいですぅう!!!」
「だから、もういいだろう?って聞いたのに。」

呆れるネイルの後ろに隠れたラリイを見て、3人に大笑いされ、
ラリイはますます恥ずかしくなって、動けなくなってしまった。
余りにも心配してたので、ラリイは感情を抑えることが出来なかったのだ。
ネイルが無事で帰って来てくれた事が、嬉しくて。
兄も大した怪我などはしていないと言う事も含めて。

「ネイル・・・ありがとう、お兄様の事もありがとう・・・」

ラリイは再度、感謝した。心からネイルに。
ネイルも、いい結果を報告出来たことが何より嬉しかった。
ラリイを喜ばせようとした事なのに、悲しませては意味がないのだから。

「お兄様・・・もう帰ったんですね。」
「ああ、短く、ラリイを頼みますとだけのぉ・・・」
「くす、お兄様らしい。喧嘩した後はいつもそう・・・」

ネフィリートに兄は帰ったと聞き、ラリイは少しだけ兄を思い涙目になる。
別に一生の別れになるわけではないのに、今は少しだけ、普通以上
に悲しい気持ちになる。

「おお、泣くでない、ラリイ。なに、すぐ逢えるじゃろ。」
「え?本当ですか?」
「ああ、お主等の結婚式でな!」
「あっ・・・」

そうだ、ネフィリートはそう思っているのだ。
2人は、もう結婚するつもりで、婚姻の試練の儀をする気だと。
せっかく慰めて貰っているのに、ラリイは罪悪感を感じていた。

「婚姻の試練の儀の前に・・・その、温泉に行こう。」
「温泉?」

バタバタとした、昨日の決闘騒ぎから、次の日。
ネイルは、少し顔を赤くしてラリイに、温泉に行こうと誘う。
しかし、ラリイは温泉と言うものを知らなかった。

「源泉って、水とかお湯が出る場所があって、その中でも温泉って
言って、身体にいいお湯が出る場所があるんだ。」
「へぇー!それは凄いですね。」
「だろ?だから、婚姻の試練の儀を受ける前に、体調を整える為にも、
行こうと思うんだ。ラリイはどうだ?行きたいか?」
「うん!行きたい♪」
「よし、なら、今から行こう。」
「え?!今から?!」

唐突すぎる展開にラリイは驚きはしたが、でも楽しそうなので、
すぐに不安はなくなった。
ネイルが居れば、きっといつだって大丈夫だと思えるように
なっていたから。
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