第五章「決意」
「ひっく・・・ひっく・・・罰が当たったんだ。
ネイルに迷惑かけて、自分の我が儘を通そうとしたから・・・
ひっく、だからお兄様が来たんだ。」
「ラリイ・・・」
アディリスから決闘を申し込まれてから、10分後くらいだろうか。
なんとか、兄のアディリスからラリイを奪取して、一旦、
ネイルの自室にいることになった。
カミーラ達もその方がいいだろうと言ってくれた。
ラリイはネイルのベットに座り、泣いている。
「今はお兄様と居たくない!!」
ラリイはそうしっかりと兄を拒絶したので、アディリスも
仕方なく、今の所は引き下がった感じだった。
「ラリイ・・・泣くなよ・・・ほら。」
ネイルはラリイの涙を手で拭いてやる。
痛々しいラリイの姿に、ネイルは黙ったままには出来なかった。
「ネイル・・・ごめん・・・ごめんなさい。」
涙を拭いて貰っても、ラリイは泣き止まなかった。
「ラリイは悪くない。悪いのは、帰ろうとした、ラリイを
引き留めた俺だ。だから、謝るな。」
「ネイル・・・・」
「ラリイは何も心配することはない。俺がちゃんと話つけてくるから。」
「でも、これ以上!ネイルに迷惑かけられないよ!」
部屋を出ていこうとするネイルの服をラリイは引っ張って止める。
ネイルは振り返って、ラリイの頭をぽんと軽く撫でた。
「嫌なんだよ・・・ラリイが悲しそうな顔するの・・・見るのが」
「え?」
ネイルはボソッと呟いてから、再度、ラリイの頭を撫でる。
そして、掴まれた服をスルりと抜いて、部屋を出て行った。
ラリイはそんなネイルを何とも言えない気持ちで見送っていた。
「先ほどは失礼しました。」
「いえ、こちらこそ。」
ネイルは、再度、ラリイが使ってる客室に戻った。
そこにはアディリスが静かに立っており、先ほどの無礼を詫びた。
ネイルもそれを無表情で返した。
どうやら、さっきよりは冷静に話し合いが出来そうで、
ネイルは少し安心した。
「ラリイは・・・」
アディリスは、いきなり誰に言うとでもなく、語り出した。
「小さい頃は身体は弱く、すぐに死んでしまうのではないかと
何度も言われていた。だが、今日まで、あんなに成長して育ってくれた。
だからこそ、誰よりも幸せになって欲しいと、私は真剣に今も
思ってる。もちろん、父上も。」
「アディリス王子・・・」
「ネイル王。クルクスから聞いたが、貴方はラリイと結婚する気が
ないと最初言ったそうだな?なのに、すぐにラリイを国に戻さず、
あげく内戦に巻き込み、今度はやっぱり結婚の為に、命の危険の
ある婚姻の試練の儀を執り行うと言い出す。
貴方はラリイを、私の大事な妹をどうしたいんですか?」
「どうしたいって・・・それは・・・」
アディリスの何かを探るような、鋭い視線にネイルは、一旦言葉を止める。
ここは大事な場面だ。ネイルは確信する。
ここで、変なことを言えば、アディリスは何が何でもラリイを
連れて帰ろうとするだろう。
例え、戦争になったとしても、だ。
それだけの気迫がアディリスから感じられる。
ネイルは深呼吸し、会話は続けた。
「俺はまだまだ王として未熟者です。ラリイとの結婚も、最初は
自分には相応しくないと思ってました。
ですが、ラリイと過ごしているうちに、ラリイから、
色々学ばせて貰って、気が付いたんです。
俺にはラリイが今後も必要だって。だから、ラリイに恩返し
したい、誰よりも幸せにしてやりたい、俺の手で。そう思ってます。」
「・・・・」
ネイルの言葉を静かにアディリスは聞いていた。
アディリスの表情からは何も読み取れない。
ただ、否定も肯定もしなかった。
「なら、覚悟を見せて貰うだけですね。」
アディリスはただ、それだけ返事した。
「わかりました。」
ネイルもそれ以上は無駄な事は言わなかった。
ネイルに迷惑かけて、自分の我が儘を通そうとしたから・・・
ひっく、だからお兄様が来たんだ。」
「ラリイ・・・」
アディリスから決闘を申し込まれてから、10分後くらいだろうか。
なんとか、兄のアディリスからラリイを奪取して、一旦、
ネイルの自室にいることになった。
カミーラ達もその方がいいだろうと言ってくれた。
ラリイはネイルのベットに座り、泣いている。
「今はお兄様と居たくない!!」
ラリイはそうしっかりと兄を拒絶したので、アディリスも
仕方なく、今の所は引き下がった感じだった。
「ラリイ・・・泣くなよ・・・ほら。」
ネイルはラリイの涙を手で拭いてやる。
痛々しいラリイの姿に、ネイルは黙ったままには出来なかった。
「ネイル・・・ごめん・・・ごめんなさい。」
涙を拭いて貰っても、ラリイは泣き止まなかった。
「ラリイは悪くない。悪いのは、帰ろうとした、ラリイを
引き留めた俺だ。だから、謝るな。」
「ネイル・・・・」
「ラリイは何も心配することはない。俺がちゃんと話つけてくるから。」
「でも、これ以上!ネイルに迷惑かけられないよ!」
部屋を出ていこうとするネイルの服をラリイは引っ張って止める。
ネイルは振り返って、ラリイの頭をぽんと軽く撫でた。
「嫌なんだよ・・・ラリイが悲しそうな顔するの・・・見るのが」
「え?」
ネイルはボソッと呟いてから、再度、ラリイの頭を撫でる。
そして、掴まれた服をスルりと抜いて、部屋を出て行った。
ラリイはそんなネイルを何とも言えない気持ちで見送っていた。
「先ほどは失礼しました。」
「いえ、こちらこそ。」
ネイルは、再度、ラリイが使ってる客室に戻った。
そこにはアディリスが静かに立っており、先ほどの無礼を詫びた。
ネイルもそれを無表情で返した。
どうやら、さっきよりは冷静に話し合いが出来そうで、
ネイルは少し安心した。
「ラリイは・・・」
アディリスは、いきなり誰に言うとでもなく、語り出した。
「小さい頃は身体は弱く、すぐに死んでしまうのではないかと
何度も言われていた。だが、今日まで、あんなに成長して育ってくれた。
だからこそ、誰よりも幸せになって欲しいと、私は真剣に今も
思ってる。もちろん、父上も。」
「アディリス王子・・・」
「ネイル王。クルクスから聞いたが、貴方はラリイと結婚する気が
ないと最初言ったそうだな?なのに、すぐにラリイを国に戻さず、
あげく内戦に巻き込み、今度はやっぱり結婚の為に、命の危険の
ある婚姻の試練の儀を執り行うと言い出す。
貴方はラリイを、私の大事な妹をどうしたいんですか?」
「どうしたいって・・・それは・・・」
アディリスの何かを探るような、鋭い視線にネイルは、一旦言葉を止める。
ここは大事な場面だ。ネイルは確信する。
ここで、変なことを言えば、アディリスは何が何でもラリイを
連れて帰ろうとするだろう。
例え、戦争になったとしても、だ。
それだけの気迫がアディリスから感じられる。
ネイルは深呼吸し、会話は続けた。
「俺はまだまだ王として未熟者です。ラリイとの結婚も、最初は
自分には相応しくないと思ってました。
ですが、ラリイと過ごしているうちに、ラリイから、
色々学ばせて貰って、気が付いたんです。
俺にはラリイが今後も必要だって。だから、ラリイに恩返し
したい、誰よりも幸せにしてやりたい、俺の手で。そう思ってます。」
「・・・・」
ネイルの言葉を静かにアディリスは聞いていた。
アディリスの表情からは何も読み取れない。
ただ、否定も肯定もしなかった。
「なら、覚悟を見せて貰うだけですね。」
アディリスはただ、それだけ返事した。
「わかりました。」
ネイルもそれ以上は無駄な事は言わなかった。