第五章「決意」
2人は怪しまれないようにする為に、極力、一緒に居た。
決まった時間に二人きりでお茶もすることにして、
お互い、密に連携を取るようにする。
でないと、ボロが出そうで怖ったからだ。
だが、共有の秘密が出来たことが、二人の仲を深めていた。
「はい!ネイル、これ、クッキー作ったの!食べてみて!」
「へぇー今度はどんな味のだ?」
「ナッツ系とこっちはシンプルなの・・・なんだけどね・・・」
ラリイはシンプルなクッキーの方に、レモンの皮で出来た、
ジャムを乗せて、ネイルに渡す。
「こうして、食べてみて?」
「ん?うん・・・」
ラリイに言われたまま、ネイルはそれを食べる。
甘すぎないクッキーに爽やかなレモンの香りと酸味が広がる。
ネイルは食べたことのない味に、驚きながらもラリイの顔を見て、
すげー旨いと、素直に感想を述べた。
自分好みの味だったのも、何故か嬉しかった。
「でしょ?♪この時期のレモンの皮は香りがいいんだよ!」
「へぇー・・・ってこのジャムもまさかラリイの?」
「うん!私が作ったんだよ?なんで?」
「いや・・・普通に凄いなと思って・・・」
ラリイは王女なのに、料理が得意だった。教会で食事をしていた時
だって、ラリイが率先して食事を作っていたくらいだ。
感心しているネイルにラリイは言う。
「フェニキアは、国土が狭い分、人も少ないからね。
王族とは言っても、助け合いながら生活してたんだ。
で、私の出来ることは何だろう?って考えたら、料理だったの。」
「そうか、ラリイは偉いんだな・・・」
「そ、そんなことないよ。」
ネイルに素直に褒められて、ラリイは顔を赤くする。
「このジャムって、パンでも旨いか?」
「うん、合わなくはないと思うよ?」
「もし、余ってるなら、欲しいんだが・・・」
「まだ残ってるから、後で瓶詰して、渡すね♪」
「うん、頼む。」
こうしたお茶会を通して、ネイルもラリイも互いをどんどん知っていく。
家庭の味と言うものを知らなかったネイルからすれば、ラリイが
作ってくれるものは、どれも新鮮で、美味しいと思えた。
女が苦手だったのも、最近はラリイとダンス出来る
くらいまでにはなっていた。
平穏な時間は、どんどん過ぎていく。
ラリイがやりたかったことも、どんどん減っていく。
なのに、お互いの本心だけは、伝えないままだ。
ネイルもタイミングを見計らっているのだが、
ラリイに変に告白して、このいい雰囲気が壊れるのを
嫌だと思い、告白に躊躇してしまい、ラリイの方も、ネイルは
結婚する気はないのだから、節度は守らなきゃと思いつつも、
楽しい時間につい羽目を外しそうになる感じだった。
「え?お兄様が?」
「ええ、今日、お会いに来るそうです。」
カミーラにそう告げられて、ラリイは嬉しそうにする。
久しぶりの家族との再会だった。
「にしても、何故?」
「何やら、確認したいことがあるそうで・・・」
ラリイに聞こえないように、ネイルとカミーラはひそひそ話す。
婚姻の試練の儀を行うのは、ラリイの国にも、ちゃんと伝えた。
もし、話があるのなら、そのことだろうか?
と、ネイルもカミーラも、そんなに難しく考えていなかったのだが。
「い、痛い!お兄様!離して!!!」
ラリイが借りている客室から、ラリイの悲痛な声が聞こえる。
今は兄と面会してるはずなのに何故?
慌てて、ネイル達が、ラリイの部屋に入ると、ラリイの兄の
アディリスが、ラリイを無理に引っ張り、帰ろうとしていた。
「こんなところに長居する必要はない。お前は、我が国の大事な
姫だ。それを、こんなとこで、命の危険に何度も晒される必要は
ない。大人しくしろ、私と帰るんだ。」
「嫌です!私はまだやることがあるんです!」
「いつから、そんな我が儘を言うようになった?あの男に
唆されているのか?」
「ち、違います!!」
兄妹のやりとりに、流石に見かねて、ネイルは止めに入る。
「止めてやって下さい!ラリイが痛がってるじゃないですか!」
「これはこれは、ネイル王。我が妹がお世話になってます。
ですが、今は家族での話。口出しは無用に願います。」
アディリスは冷たい笑顔で、ネイルを威圧した。
ネイルも一瞬たじろぐが、すぐにラリイの腕を掴んでいる、アディリスの腕を掴む。
「妹が大事なら、そんなことしないで、話し合えばいいだろ?」
「ほう?なら、説得して貰えませんか?国に戻れと。」
「それは出来ない相談だな。ラリイと俺は、婚姻の試練の儀を
すると、ちゃんとお伝えしてあるはずですが?」
「ふっ。」
アディリスはネイルの腕を払い、ラリイを一旦離した。
怒り狂っている、兄にラリイは泣く。
「なら、私と決闘して貰えませんか?ラリイを賭けて。」
「は?」
アディリスの提案にネイル達を皆は度肝を抜かれた。
まさか、こんなことになろうだなんて、流石にネイルもカミーラも
想像していなかった。
決まった時間に二人きりでお茶もすることにして、
お互い、密に連携を取るようにする。
でないと、ボロが出そうで怖ったからだ。
だが、共有の秘密が出来たことが、二人の仲を深めていた。
「はい!ネイル、これ、クッキー作ったの!食べてみて!」
「へぇー今度はどんな味のだ?」
「ナッツ系とこっちはシンプルなの・・・なんだけどね・・・」
ラリイはシンプルなクッキーの方に、レモンの皮で出来た、
ジャムを乗せて、ネイルに渡す。
「こうして、食べてみて?」
「ん?うん・・・」
ラリイに言われたまま、ネイルはそれを食べる。
甘すぎないクッキーに爽やかなレモンの香りと酸味が広がる。
ネイルは食べたことのない味に、驚きながらもラリイの顔を見て、
すげー旨いと、素直に感想を述べた。
自分好みの味だったのも、何故か嬉しかった。
「でしょ?♪この時期のレモンの皮は香りがいいんだよ!」
「へぇー・・・ってこのジャムもまさかラリイの?」
「うん!私が作ったんだよ?なんで?」
「いや・・・普通に凄いなと思って・・・」
ラリイは王女なのに、料理が得意だった。教会で食事をしていた時
だって、ラリイが率先して食事を作っていたくらいだ。
感心しているネイルにラリイは言う。
「フェニキアは、国土が狭い分、人も少ないからね。
王族とは言っても、助け合いながら生活してたんだ。
で、私の出来ることは何だろう?って考えたら、料理だったの。」
「そうか、ラリイは偉いんだな・・・」
「そ、そんなことないよ。」
ネイルに素直に褒められて、ラリイは顔を赤くする。
「このジャムって、パンでも旨いか?」
「うん、合わなくはないと思うよ?」
「もし、余ってるなら、欲しいんだが・・・」
「まだ残ってるから、後で瓶詰して、渡すね♪」
「うん、頼む。」
こうしたお茶会を通して、ネイルもラリイも互いをどんどん知っていく。
家庭の味と言うものを知らなかったネイルからすれば、ラリイが
作ってくれるものは、どれも新鮮で、美味しいと思えた。
女が苦手だったのも、最近はラリイとダンス出来る
くらいまでにはなっていた。
平穏な時間は、どんどん過ぎていく。
ラリイがやりたかったことも、どんどん減っていく。
なのに、お互いの本心だけは、伝えないままだ。
ネイルもタイミングを見計らっているのだが、
ラリイに変に告白して、このいい雰囲気が壊れるのを
嫌だと思い、告白に躊躇してしまい、ラリイの方も、ネイルは
結婚する気はないのだから、節度は守らなきゃと思いつつも、
楽しい時間につい羽目を外しそうになる感じだった。
「え?お兄様が?」
「ええ、今日、お会いに来るそうです。」
カミーラにそう告げられて、ラリイは嬉しそうにする。
久しぶりの家族との再会だった。
「にしても、何故?」
「何やら、確認したいことがあるそうで・・・」
ラリイに聞こえないように、ネイルとカミーラはひそひそ話す。
婚姻の試練の儀を行うのは、ラリイの国にも、ちゃんと伝えた。
もし、話があるのなら、そのことだろうか?
と、ネイルもカミーラも、そんなに難しく考えていなかったのだが。
「い、痛い!お兄様!離して!!!」
ラリイが借りている客室から、ラリイの悲痛な声が聞こえる。
今は兄と面会してるはずなのに何故?
慌てて、ネイル達が、ラリイの部屋に入ると、ラリイの兄の
アディリスが、ラリイを無理に引っ張り、帰ろうとしていた。
「こんなところに長居する必要はない。お前は、我が国の大事な
姫だ。それを、こんなとこで、命の危険に何度も晒される必要は
ない。大人しくしろ、私と帰るんだ。」
「嫌です!私はまだやることがあるんです!」
「いつから、そんな我が儘を言うようになった?あの男に
唆されているのか?」
「ち、違います!!」
兄妹のやりとりに、流石に見かねて、ネイルは止めに入る。
「止めてやって下さい!ラリイが痛がってるじゃないですか!」
「これはこれは、ネイル王。我が妹がお世話になってます。
ですが、今は家族での話。口出しは無用に願います。」
アディリスは冷たい笑顔で、ネイルを威圧した。
ネイルも一瞬たじろぐが、すぐにラリイの腕を掴んでいる、アディリスの腕を掴む。
「妹が大事なら、そんなことしないで、話し合えばいいだろ?」
「ほう?なら、説得して貰えませんか?国に戻れと。」
「それは出来ない相談だな。ラリイと俺は、婚姻の試練の儀を
すると、ちゃんとお伝えしてあるはずですが?」
「ふっ。」
アディリスはネイルの腕を払い、ラリイを一旦離した。
怒り狂っている、兄にラリイは泣く。
「なら、私と決闘して貰えませんか?ラリイを賭けて。」
「は?」
アディリスの提案にネイル達を皆は度肝を抜かれた。
まさか、こんなことになろうだなんて、流石にネイルもカミーラも
想像していなかった。