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第五章「決意」

「姉上・・・ラリイ様に変な話されたりしてませんよね?」
「あら?何のことかしら?」
「はぁ・・・」
「何よ?せっかく私が用意した、晩餐会で、そんな辛気臭い
溜息しないでくれる?」
「誰の所為だと思ってるんですか・・・」
「何?何か言った?」
「いいえ・・・」

朝にお茶会、お昼は城下町でラリイを連れて買い物、そして夜は、
晩餐会と、今日は1日中、メディーナはラリイを連れ回していた。
ラリイの方は、最初は戸惑っていたりもしてたが、今では、
すっかりメディーナと仲良くなっていた。
晩餐会は賑やかに行われている。
そんな中で、カミーラ姉弟は、壁側で話し合っていた。

「ねぇ・・・あんたはどう思ってるわけ?ラリイ王女様のこと。」
「なんで、私なんですか?ネイルに聞くべきでしょ。」
「何でよ、関係ないわけないでしょ?ネイルが結婚したら、
あんたの守るべき人の1人になるのよ?
忠誠を誓えるか、どうか聞いてるの。」
「それは・・・」

姉の言葉にカミーラは口篭もる。正直言って、カミーラはまだ、
鳥人が好きにはなれない。
ラリイ王女のことにしても、前よりは憎しみなどないが、
それでも心の底ではまだ信用出来なかった。

「あんた、おじい様のこと好きだったもんね。だから、まだ許せないんでしょ?鳥人のこと。」

メディーナは久しぶりに優しい顔で弟を見る。そして視線を逸らして話を続ける。

「もう、あんたも子供じゃないから、言うけどね。
あの事件で、おじい様は殺されたんじゃないわよ。
ご自分で命を絶ったの・・・ある方を守る為にね。」
「え?」

普段は感情を抑えるようにしていたカミーラが、姉の突然の言葉に驚愕する。

「しかも、あんたが恨んでる側の人・・・つまり王の弟側の人を守るためにね。」
「そんな・・・嘘・・・ですよね?」
「私が、そういう大事な話の時に、嘘ついたことある?」

メディーナはしっかりと弟の目を見て話す。
カミーラは、今までにない程、手が震えて動揺する。

「私もね、つい最近知ったのよ。あんたも今度父上に聞くといいわ。
だからね、もう変な目でラリイ王女様を見るのは止めなさい。それだけよ。」
「姉上・・・」

重大な話をした後だと言うのに、メディーナは何事もなかったように、
ネイルとラリイの元へ笑顔で話しかけに行く。
カミーラはそんな姉に、やっぱり勝てそうにないなと思った。

「そうだーちょっとネイル。あんた、ラリイ王女様に、
ヴァイオリン弾いて見せなさいよ!」

メディーナがニヤニヤと意味深な笑いでネイルに言う。
ラリイも、ちょっとニヤニヤしている。

「メディーナ・・・あの話、ラリイにしたな?」

2人のニヤニヤした顔を見て、ネイルは怪訝そうにした。
すっかりラリイはメディーナに取り込まれたのかと思うと、
ネイルは少し悲しい気持ちになった。

「ほら!はい!ヴァイオリン!」

有無も言わせず、メディーナはネイルにヴァイオリンを渡して急かす。

「知らないぞ・・・どうなっても・・・」

嫌々ながら、ネイルはヴァイオリンを演奏し出す。
王の演奏に、会場は静かになる。
ラリイは思わず、ネイルに見惚れてしまった。
憂いを帯びた顔に、プロにも引けをとらない演奏。
元々、美形なだけあって、その姿は様になっている。
まるで一枚の有名な絵画でも見てる気分になった。
会場も感嘆の声が溢れる。
1曲、弾き終わって、盛大な拍手が送られる。

「ほら、これで満足か?」

ネイルはやれやれと言った顔で、ヴァイオリンをメディーナに返す。

「ネイルは、ヴァイオリンの演奏してる姿だけは、カッコいいのよね。」
「は?なんだそれ。」
「まぁまぁ!ほら、ラリイ王女様もどうだった?」
「はい!ネイル!とっても素敵でした!」

メディーナに言われて、うっとりとした笑顔でラリイは
ネイルに称賛を送っている。
まだ可愛く、拍手をしているくらいに。
そんなラリイを見て、何故かネイルの方が恥ずかしくなる。

「良かったじゃない?ラリイ王女様に褒められて♪」
「う、うるさい!」

メディーナが来てから、からかわれっぱなしでネイルは
少しイライラする。何か、企んでるような気がしてならない。
ネイルは、胸騒ぎを感じずにはいられなかった。
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