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第四章「友情」

「まさか、クルクス様が来てくれるとは思わなかったです。」

ベッドの上で居たラリイは上半身を起こして、横に座っている
クルクスに、嬉しそうに微笑んだ。

「ラリイの託けを聞いた、小鳥が私を見つけてね。
ラリイの状況は簡潔だったけど、大体教えてくれたよ。」
「おまじない程度で頼んだものだったのに・・・でも良かった。」
「ああ、良かったよ。ラリイが無事で。」
「クルクス様・・・」

二人は静かに微笑み、見つめ合う。
まるで、もう夫婦かのような雰囲気だった。
だが、その雰囲気をベアードがわざと咳する振りをして壊す。

「おっほん。すいませんね。お2人様。
にしても、クルクス殿はどうして、ラリイ王女の危険を知ることが
出来たんですか?」
「ああ、簡単な事です、別の小鳥が教えてくれたのです、
謀反を起こした奴が、城に入って、ラリイを狙ってるらしいと。」
「へぇ・・・それはまた凄い・・・」

ベアードはクルクスの答えに、ただ感心した。
一部の鳥人の中には、鳥と会話のようなものが出来るらしい。
それを知ったのは、ついさっきのことだった。
ネイル達側は皆、驚いた。

「それにしても、今回は聖騎士団の副団長殿にまで、助けて頂き、有り難うございます。」

ネイルは、クルクスに頭を下げて、感謝する。
クルクスは静かに笑って、ネイルの感謝を受け取る。

「いえいえ、フェニキアの至宝を守るのは、大教会の使命のようなものなので、お気になさらず。むしろ、私こそ、招かれてもいないのに、勝手に入城したことをお許し下さい。」
「それは、もちろんです。こちらは一切、咎める気はありません。」
「そうですか。有難うございます。」
「良かったですね!クルクス様!」

ネイルとクルクスのやり取りを聞いて、ラリイは本当に嬉しそうだった。
ネイルは今まで見たこともない、ラリイの無邪気な笑顔を見て、
少し悔しいような気持ちになった。
あんな風に俺にはまだ笑ったことないのに・・・と。

「この件に関わった、黒魔術師達は、聖騎士団の方で、捕らえました。詳しい事情などは、こちらで取り調べさせて頂いてからの報告となりますが、よろしいでしょうか?」

クルクスが空から降りて来て、ラリイを無事に助けて、1時間後くらいの出来事だ。
クルクスはネイル達に政務室に呼ばれ、自分の状況を話せるとこだけ話した。
ラリイはその間、休息を取る為にベッドに寝かされて、
死んだように寝てしまった。想像以上に体力を消耗していたのだ。

「しかし、タイミング良く、聖騎士団の皆様が、このドラゴネスの
国境近くに居たとは、思いもしませんでした。」

カミーラが何か探りでも入れるように、クルクスに言う。

「ええ、たまたま、こちらの方面に用事がありまして、来ていたのですが。
今回は、この様にドラゴネス国の方々に協力する形になれて、こちらも幸いだと思っております。」

クルクスは物腰も和らげに、カミーラにそう答える。
カミーラはすぐに思った。この男はだ只者じゃないと。
数時間の情報のやり取りの後で、クルクスはラリイの
居る客室に向かった。
ラリイがドラゴネス国に行ってから、何の音沙汰もないので、
クルクスは心配だった。
だから、普段はあまり受けない、遠征の仕事を受けたのだ。
丁度、いい具合にドラゴネス国付近の仕事だったから。
クルクスが訪ねると、ラリイはすでに深い眠りについていた。

「ラリイ。何にも連絡が無いと思えば、ドラゴネス国の内戦に
巻き込まれていたなんて、しかも、あの大鎮魂歌を
あんなに長時間も・・・」

クルクスは昔の様に寝ているラリイの頬を撫でてやる。
子供の頃、よくやっていたものだ。
寝ていても、ラリイは嬉しそうな顔をして、ぐっすり寝てしまう。

「フェニキアの至宝がこんな扱いを受けているなんて、
とても大教会に報告出来ないな。大戦争にもなりかねんぞ。」

クルクスは一人でそう呟いて、苦笑いする。
フェニキアの至宝とはラリイの事を指している。
何故、クルクスがそう呼ぶのか。
実は、フェニキアでは、王族の女性が極端に少ないのだ。
ラリイの歳まで生きているだけでも、かなり珍しく、稀に生まれたとしても、大体の者は、身体が弱いので長生きが出来ない。
なので、大教会は、久しぶりに生まれた女の子である、ラリイを
フェニキアの至宝として大事に守ることを裏で約束していたのだ。
ネフィリートは実はそのことを知っていた。
だから、ネイルに凄く怒ったのだ。

「少し痩せたか?気苦労が絶えないんだろうな。ここは。」

クルクスは早く、ラリイをどうにかして、国に戻してやりたかった。
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