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第三章「確執」

戦いが開始されてから、もう少しで30分になろうとしていた。
アンデット達との戦いは、ラリイの歌のおかげもあって、
ネイル達の有利になっている。
だが、ネイルは肝心のゴートレスを見つけることが出来ない。

「一体、どこにいるんだ!あいつは!」
「正門にも、城下町にもそれらしい人物を見たと言う報告は
ありませんでした。」
「まさか、すでに城の近くにいるってことか?!」

何故かネイルは凄く嫌な予感がした。
まさか、想像よりも少ない人数で動いていたのかもしれない。
そして、もし城に忍び込まれていたとしたら、祖母とラリイを
人質に取るだろう。二人に危険が迫ってる。ネイルは直感でそう感じた。

「すぐに城に引き返すぞ!」

ネイルは部下に叫んで、城に向かって急ぐ。
どうか、どうか無事であってくれと願いながら。

一方で、逃げ出したはずの黒いフード魔術師達は、全員、
ある騎士団に捕まっていた。

「やはり、あの王女が滞在しているのなら、近くにいるのではないかと思ったぞ。
大教会の直属の組織、聖騎士団。」

一人の魔術師が憎々しげに呟く。
騎士の一人が、その魔術師の側に寄る。

「王女は関係ない。我々はたまたまお前達を追って、
ここに来ていたのだ。だが、お前達にとっては災難だったな。
しかし、フェニキアの至宝と言われる、王女の歌が聞けたのだ。
それを最後の慰めにするのだな。」

そう告げて、騎士は自分の部下に魔術師達を連行させる。

「クルクス様。報告にあった者はすべて捕らえることが出来たようです。」
「そうか。では、大教会へ戻ろう。」

クルクスと呼ばれた、鳥人の騎士は、馬に乗り、帰ろうとする。
それを見た、部下は、動揺したように言う。

「いいのですか?ラリイ様に会わなくても?
ここまで来たのなら、会いに行かれては?」
「それは出来ないよ。私はドラゴネスに招かれた客じゃないからね。」

クルクスは部下に笑って、そう言い、馬を走らせようとした、その瞬間に、小さい小鳥が、クルクスの肩に停まり、激しい声で鳴く。

「なんだって?!」
「ど、どうされたんですか?!」

クルクスの叫びに、部下も慌てる。只事ではない雰囲気だ。

「ラリイの命が今狙われているらしい。やはり、私はすぐにドラゴネスの城に向かう。後の事は頼めるか?」
「はい!お任せ下さい!」

部下はクルクスに心配させまいと、しっかりした態度で答える。
その答えを聞いて、クルクスは、ありがとう、頼むと短く答えて、馬をドラゴネス城の方に向けて走り出した。
本来であれば、これは違法行為だ。
酷ければ、それなりの罰則もあるだろう。
だが、そうだとしても、クルクスにとっては、ラリイは大事な
存在だった。どうしても助けたい気持ちには勝てない。

「ラリイ。どうか無事で居てくれ・・・」

クルクスは自分の悲痛な心の叫びを感じていた。

「なんたる子よ。もう30分は過ぎたのに、まだあの様に歌うとは。」

ラリイとは大分離れたところで、ネフィリートはラリイを見守っていた。
自身も今だに魔法を使って、ラリイの歌の効果を助けてはいるが、ラリイの気丈な態度にネフィリートは感心せずにはいられなかった。

「だが、あれ以上の無理は、命に関わる。
ええい、ネイルは何をしておるのだ!」

今だにゴートレスを討ったと言う報告が来ないことに、ネフィリートは苛立ちを隠せない。
もうこれ以上、ラリイに歌って貰うのはやめようかと、考えていた最中、思いもよらない人物が、ラリイの背後に迫っていた。

「ゴートレスじゃと?!」

ネフィリートは驚愕する。
そして、ラリイの側に居た、演奏者達も悲鳴を上げる、演奏者達の
悲鳴にラリイも気が付き、歌を止めて、後ろを向く。
剣を引き抜いた、ゴートレスは、徐々にラリイに迫っていた。
じりじりと獲物を追いつめる獣のように。
ラリイを見る、その顔は憎悪そのものだった。

「お前が、ラリイか?」

ありったけの憎しみを込めて、ゴートレスはラリイに名前を聞く。

「そうです。」

ラリイはゴートレスの憎しみに負けないとばかりに返事を返す。

「お前さえ、お前さえ、居なければ、私の計画は順調だったのだ。
あの青二才のネイルを蹴落として、私がドラゴネスを
治められたものを・・・」

ゴートレスは、憎しみを込めた言葉を投げかけながら、
ラリイを怖がらせようと剣で威嚇する。
だが、ラリイは動じなかった。

「貴方のような方に、国を治める資格はないと思います。」
「なんだと?!鳥女の分際で生意気な口を聞くな!!!」
「貴方のような、死者を冒頭してまで、自分の力を誇示する
ような人に、民は導けません!」
「減らず口を・・・叩くな!!!」

ゴートレスの剣がラリイに向かって振り下ろされそうになる。
その瞬間、剣が飛んできて、ゴートレスの肩に突き刺さる。
ゴートレスは剣を振り下ろすことが出来ずに、自身の肩を抑えて、うめき声をあげて、剣を落とした。

「やめろ!ゴートレス!ラリイから離れろ!」

ネイルは怒鳴りながら、ラリイ側に走り、ラリイを庇うように前に立つ。
腰にある、もう1本の剣を抜いて、ゴートレスと対峙する。
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