このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

プロローグ

ドラゴネス国から迎えの馬車が来て、ラリイはその馬車に乗り込んだ。
その馬車の向かい側には、ラリイの護衛役として、
一人の大柄な竜人族の男が乗り合わせていた。
茶色の短髪に、耳はドラゴン特有の羽に無精ひげ、戦士であるのは恰好でわかるが、
おおよそ、おしゃれには興味がなさそうな、そんな感じのする男だった。
だが、ラリイは外見で人を区別するような性格ではなかったので、
その男の恰好を不思議そうに見ていた。

「いやーすいませんね。俺なんかが、護衛で・・・」

その大柄な男は、何やら申し訳なさそうに、頭を掻いて、
ラリイに謝罪して来た。

「どうしてですか?」
「いやーほらーだって、普通は将来旦那になる者が、
迎えに来るのが道理じゃないですか?
って、あ、こんな言葉遣いじゃ、駄目ですよね。
すいません俺、敬語とか苦手で。」
「うふふ、面白い方。」

ラリイはこの大柄な男の言動が可笑しくて、クスクス笑う。
だが、それは決して、この男を馬鹿にしてでの態度ではない。
ただ、純粋に可笑しくて笑っているのだ。

「言葉遣いは全然気にしないで下さい。
私も、そうして貰えた方が気が楽ですし。」
「そりゃー有難い!いやーラリイ王女は話が分かる方で良かった!」

大柄な男は、大袈裟に喜んで見せた。
ラリイはそれにビックリしたが、また可笑しくなって笑う。

「あ、自己紹介が遅くなって申し訳ありません。俺はドラゴネスの総軍団長をしております、ベアードと申します。ネイル・・・王とはネイル王が幼い頃から仕えさせて貰っておりまして、その頃からの付き合いもあり、今は片腕としても務めております!」
「まぁ!」

ベアードの紹介にラリイは更にビックリする。
まさか、総軍団長自身がわざわざ迎えに来たのなら、何も失礼には当たらないとラリイは思うのだが、ベアード自身はそう思ってないらしい。

「あの、そんなに畏まらなくても、ネイル王がお忙しいのは、
存じておりますし、ベアード様も、かなりのお立場の方なのに、
私なんかの為に、わざわざフェニキアまで迎えにお出で頂いて、
こちらこそ恐縮です。」

ラリイはしゅんと身が縮まる思いだった。
やはり大国ともなると、仕えに出す人間の役職まで違うのかと、
ラリイは素直に感心していた。

「いや・・・あの、ネイルの・・・いやネイル王のことなんですが、
最初は気まずいかもしれないんですが、嫌わないでやって貰えませんかねぇ・・・
ここだけの話なんですが。」
「え?」

急にひそひそ声になるベアードにラリイ釣られて小声になる。

「何でですか?」
「いやーあいつは本当に奥手で、女性の扱いに不慣れなこともあって、
ラリイ王女に不愉快な思いさせるかもしれないんですが、
付き合っていけば、きっと、あいつも心を開くと思うんで・・・」
「はぁ・・・」

自分の片腕となる男に、あいつなんて呼ばれているネイル王。
ラリイが想像していた、ドラゴネス国のイメージと違っていて、
ラリイは面食らう。
もしかして、自国民には、かなり優しい方なのだろうか?
とラリイは考えた。
にしても、奥手で女性の扱いが下手とは、これも想像していなかった。

「ま、俺はラリイ王女の味方ですから!
あいつがあんまりにも酷い場合は俺に言って下さい!
俺はあいつの兄替わりみたいなもんなんで、説教してやりますよ!」
「まぁ・・・うふふ。ベアード様は本当に面白い方ですね。」

馬車に揺られながら、二人はそんな会話で盛り上がりつつ、ベアードにドラゴネス国の現状なども教えて貰いながら、二人はドラゴネス国へと向かって行った。
2/5ページ
スキ