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第二章「理解」

いつもの日課の祈りの儀式を終えて、ラリイは教会の掃除をしていた。
が、その都度、ラリイは自分が溜息をついてることに気が付く。

「どうしたんですか?ラリイ様?何か悩み事でも?」

いつもと違って、元気のないラリイにモア神父は心配そうに声を掛ける。

「あ、その、ううん。何でもないんです。すいません。」

ラリイは昨日からの婚姻の試練の儀について、話そうと
してしまい、会話を止める。
だが、そんなラリイの態度に、ますます心配した神父は、ラリイの側に寄り、膝を折って、頭を下げる。

「ラリイ様。どうぞ、悩みがあるのでしたら、お話下さい。
私ではラリイ様の悩みを解決できる力はないかもしれません。
ですが、辛い時こそ、私で良ければ、少しは拠り所にして頂ければと願います。」
「そんな!モア神父様!顔を上げて下さい!」

そこまで心配をかけてしまったのかと、ラリイは慌てて、神父にそう言って、神父の手を取った。

「あの、うまくお話出来るか、わからないんですが、聞いて頂けますか?」
「はい、もちろん喜んで。」

神父は教会の横に新しく出来た、家で、ラリイの話を聞くことにした。
その方が人の出入りはないし、ラリイの話からして、
大勢の他人に聞かれては、まずい話なのだろうと察したからだ。
ラリイは昨日の城での出来事を話していく。

「なんと!そんな、お話が出ていたのですか?」
「はい、実はそうなんです。」

ラリイの話を聞いて、神父は心底驚いてるようだった。

「私としてましては、ラリイ様がもし、それをお受けされて、
このドラゴネス国の王妃になって頂けるのなら、
これほどの幸せはございませんが・・・
ですが、ラリイ様の一生のことですし、悩まれるのは当然かと。」
「そ、そうなんですよね・・・」
「私は、ラリイ様の幸せを何より望んでおります。ラリイ様のお気持ちのままに、どうか、後悔することだけないようにして欲しいです。」
「モア神父様・・・」

モア神父の優しい眼差しに、ラリイは少し報われた気がした。
やはり、悩み事は信頼出来る誰かに聞いて貰うのが一番いいのかもしれない。
今のラリイにとっては、ドラゴネス国で一番信頼できるのは、
ベアードとモア神父だった。

「ネイル王が、もし返事を急いでないのでしたら、ラリイ様は、
ご自分が納得されるまで、考えられるといいと思います。
もし、また新しい悩みがあれば、私に話して下さい。
話すことで、ラリイ様の心の整理に役立つかもしれません。」
「モア神父様、そこまで心配して頂いて、ありがとうございます。」
「いえいえ、この教会を復興して下さったラリイ様に、
こんなことしか出来ない自分が歯がゆいのですが。」
「うふふ、またモア神父様はそう言う。」

ラリイは、気持ちが少しは晴れたのか、またいつもの様に笑顔になる。
そうだ、答えを出すには、色々なものが不足してる気がする。
ラリイはそう思った。
そして肝心のネイルとは、まだ全然話し合いが足りないではないか。
ネイルの事を何も知らないままで、はい、さようならなんて、
ラリイには出来そうにない気がした。
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