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第二章「理解」

「どうしたんですか?ネイル?」
「あ、ああ、悪い・・・つい考え事してた。」
「昨日のネフィリート様の話の件ですか?」
「ん。それだ。」

政務室でカミーラといつもの様に仕事していたネイルは、
朝にラリイと話していたことを思い出した。

「どうして、断らないんだ?ラリイには何の得な事はないだろう?」
「でも、お断りするのは、すぐ出来るじゃないですか。」
「それはそうだが・・・
だからって、返事を伸ばせば、自分が国へ帰るのが遅れるだけだぞ?」
「それも、そうなんですけど・・・」

二人でこんなやり取りをして、結局、答えはでないまま、ラリイは日課の祈りの儀式をしに、教会の方へ行ってしまった。
話はまた時間がある時にと。

「にしても、あの鳥頭王女は、まさか、婚姻の試練の儀を、
受けるとか言い出しませんよね?」
「知らん。今のところは、断る気はなさそうだ。」
「なんで、もっとはっきり言ってやらないんです?」
「俺は言ったぞ。結婚する気ないって。」
「なのに、あの鳥頭王女がしつこいと?」
「カミーラ。あんまり、ラリイを虐めるなよ。昨日、おばあ様に散々、俺が怒られたんだからな。」

ネイルは昨日、ネフィリートに散々、説教されたのを思い出す。
教会の大修繕のお礼をしてないことから、日頃のラリイへの態度、
王として、何と情けないことをしているのだと。
あまりにもラリイへの今後の無礼が酷く続くようなら、
いくら孫の自分でも容赦しないとまで言われたのだ。

「あのネフィリート様がそこまで?!」

カミーラが驚く。気に入っているのだろうなとは、思ったが、
そこまでとはカミーラも思っていなかったようだ。

「俺だって驚いてるんだ。同じ家族にだって、ろくに興味を
示さなかった、おばあ様が、何でかラリイには優しいんだ。」
「何でなんです?」
「よくは知らないが、共通の知り合いがいるらしい。」
「共通の?」
「ああ。」

ネイルがそう答えると、カミーラは考え込む。
そして、いつも言い聞かせるように言ってる話を言う。

「ネイル。いつも言ってますけど、鳥人だけは、絶対に信用しないで下さいよ。
数十年前にドラゴネスが家督争いになり、国内で大戦争に
なりかけ、多くの犠牲が出たのは、鳥人の王族の女の所為なんですからね。」
「それは、わかってる。
だから、尚更、結婚する気なんてないって、
お前にはいつも言ってるだろう。」
「なら、いいんですが。
ネイル・・・変なとこで優しいから心配なんですよね。」
「なんだ、それ。」
「ま、さっさと仕事しましょう。」
「うん。」

二人の会話はここで一旦終わる。カミーラがラリイを毛嫌いするのは、その事件があったからだ。
なので、カミーラはラリイだけじゃなく、鳥人族すべてを
憎んでいると言ってもいい。
だが、ラリイがこの事を知るのは、当分、先の事だった。
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