第1章「配信者としての我が主」

我が主は今日も楽しそうに人間達のくだらない相談に乗っている。
いや、そういう風に見えてるだけで、主が本気で人間なんかの相談に
乗るわけがない。
あの方が本気になって人間の相談に乗る時には、
普通の人間では想像が出来ないくらい、特殊な対価が必要なのだ。
金さえあれば、いいものでもなく、それなりの知識も必要だ。
主を呼び出す手段さえ、現代では難しいのではないかと思う。
正確に呼び出すための魔術道具さえ、現代で揃えるには、かなりの金額がかかるだろうしな。
何せ超絶有名も有名な大悪魔ですからねぇー我が主は。
主に常に仕える私でも、気軽に名前を口にすることは出来ない。
なので、ここでも我が主の名前を出すことは出来ないのであしからず。

「メリフィスト、お酒持って来て、私がいつも好きなやつな。」
「わかりました。只今お持ちします。」
「配信には映らないようにな。」
「心得ております。主。」

私は主が配信中に人間どもに会話を聞かれないようにテレパシーで私に指示してくるので、
配信画面に映らないように細心の注意を払いながら、
陰で見守りつつ、時たま指示があれば、それ通りに動いた。
配信画面に映らないように、そっと主の側に主が大好きな魔界産のワインを置く。
小さい物音にも最大の注意を払って。

「うん。ありがとう。後30分くらいで終わらせる予定だから、
次の仕事の準備しておいて。」
「承知しました。では、私は一旦部屋から出ますね。」
「はいよー」

主は私が置いたワインを、陽気な笑顔で受け取ると、また人間達とワイワイと
コメント欄を通じて会話し始めた。

「いや、だったら、〇〇してみたらいいんじゃないですか?
うんうん。そうそう!
結構〇〇するのも勉強になりますよ♪」

とか

「えーっと、なになに?なんで〇〇は無くならないんですか?
ですか?
それはその手の人達が馬鹿だからでーす♪^^
今騒いでる人もいるかもなんですが、それって、実は結構昔からあったりするんですよねぇ。
だから今後も無くならないんじゃないかな?」

などなど、次から次へと楽しそうにコメント欄に反応していた。
流石は我が主。
同じ悪魔であっても、主の魅力は凄まじいのに、それがただの人間相手であったのなら、
あんなネットを通じただけの会話であっても、すぐに虜にしてしまう。
主の話題の多さを始め、話術を側で見れて、私も久しぶりに感動したくらいだ。
何よりあのあくどい笑顔で、人間達を弄んでいる姿が何よりも素晴らしく素敵で・・・
女の悪魔なんかは、そんな主の姿だけで惚れるだろうな。うん。
今は地味な人間の男に化けているとは言っても、主の魅力は隠し切れない。
ま、そもそも今回の勝負も、主は前から勝算があって始めたに違いない。
勝負が始まる前に裏で準備したと言う感じがなかったもんな。
私なんかは配信の機材を用意したくらいだし・・・
でも今後は配信をしながらも、裏工作はさせられるかもしれないな。
だったら、諸々と今の内から、もっと調べた方がいいか。
やっておいて、損はない。これが主に仕えてから学んだことの1つでもある。
主は本当に気まぐれな方でもありますからね・・・
食事で例えるなら、手間のかかる和食を用意させておきながら、
食べる寸前になって、洋食のフルコースがやっぱり食べたいと
言い出すような・・・
そんな感じですからね・・・普段から。
もちろん、それに満足に答える事が出来なければ、最悪は自分の命を持って償うしかありません。
魔界では、それが当たり前ですから。
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