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第1章「津雲百の陰謀」

俺は期末試験の勉強が、区切りのいいところで休憩していた。
祖父ちゃんの頼まれごとを手伝ったのが、良かったのか、
その後の勉強は自分が思っているよりも捗った。
盆栽を移動しただけの事なんだが、何か祖父ちゃん以外にも
人助けをした感じが、俺にはいい気分だった。

「俺も物に宿った、人の怨念とかは感じることは出来るのになぁ・・・」

俺は居間で、のんびりとコーラを飲みながら、ポテチを食べる。
ポテチを食べながら、俺はぼんやりと考える。
九十九神家のする仕事を。

「俺も清香のように、何か能力があれば、俺が九十九神家の
次期当主になることも出来るのか?
なりたいってわけじゃないけど、もし清香が本気で将来、
九十九神家を継ぎたくなかったら、他人事じゃないよなぁ・・・
俺にも何かしら関わるだろうし・・・」

時期が来れば、いずれは祖母ちゃんが母さんが話してくれるだろうけど、
俺は何でだか、今、気になって仕方がなかった。
気にしたとこで、すぐに現状が変わるわけもないのに。

「何じゃ?一は勉強してたのでは、なかったのか?」
「あ、祖父ちゃん・・・」

俺は居間に来た祖父ちゃんに話しかけられた。
祖父ちゃんは俺が盆栽の移動を手伝ったばっかりなのもあって、機嫌が良さそうだった。

「うぬ。その顔は何やら九十九神家の事でも考えておったな?」
「え?何でわかったの?祖父ちゃん?」

俺は祖父ちゃんに自分の考えがバレて、ちょっと驚いた。
そんな俺を見て、祖父ちゃんはニヤリと笑う。

「なに造作もないことよ。お前の小言が聞こえたからだ。」
「はぁ、なんだ。そういうことか。」
「それにしても、お前は将来の事を考えていたのか?九十九神家を継ぐかどうかの?」
「うん・・・まぁねぇ・・・」

俺は祖父ちゃんに隠すことは無いと思い、素直に言った。
祖父ちゃんは俺の前に座り、自分でお茶を淹れながら、俺に向かって言う。

「九十九神家としては、どうしても男子は女子よりも、才能が低いと見られやすいのよ。
何も九十九神家では、祓う力だけ強ければ、良いと言うものでもないのにな。」
「え?そうなの?」
「うぬ。わしとて、確かに祓う力は祖母さんよりは無い。
だが、その分、別の才能で補えていると思っている。」
「別の才能って?」

俺は祖父ちゃんが意味深に言う、別の才能とやらを聞こうと尋ねる。
しかし、祖父ちゃんはお茶を啜ったままで、答える気配がない。
しばらく祖父ちゃんはお茶を飲んで、黙っていたが、お茶を飲み終わると俺に言う。

「一。お前はまだ若い。清香に宿ったモノ達の言葉に、動揺させられることはない。
お前の父さんは婿養子だから、才能がないのは仕方がないかもしれないが、
お前は清美の息子だ。
いずれ、何かしらの才能が目覚めるだろう。それまでは、両親の言うように勉学に励め。」

そう言って、祖父ちゃんは湯呑を流しに入れて、もう一度俺の方に来ると、
ポチ袋を俺の目の前に置く。

「今日は巌さんの為に感謝するぞ、一。ちょっとしたお小遣いだ。
祖母さんや母さんには内緒にするんだぞ?」
「お!有難う!祖父ちゃん!」

俺はすぐにそのポチ袋を自分のズボンのポケットにしまった。
祖父ちゃんはそんな俺を見て、またニヤっと笑ったかと思うと、
自分の部屋に帰っていった。
やった!祖父ちゃんの手伝いをして良かったなー今日は。
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