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第1章「津雲百の陰謀」

あの電話の後、俺は陽一とろくに話すことも出来ず、陽一も何かを察したのか、
俺と大した会話もせずに、後はひたすら二人で対戦ゲームをしていた。
俺の家の夕食時間ぎりぎりまでゲームして、今日はなんかごめんと
陽一に軽く謝って家に帰って来た。
妹の清香に夕食作るの手伝ってくれなかったとギャアギャア言われたが、
そこも素直に謝るしかなかった。
(お小遣い貰える日にお菓子奢る約束させられたけどな)
そして祖父ちゃんに祖父ちゃんの部屋に呼ばれる。
緊張した俺は祖父ちゃんに怒られるんだろうなぁーと思いながら、
重い気分で祖父ちゃんの前に正座した。

「一。お前、またいつものように陽一君に話したな?」
「ご、ごめんなさい。祖父ちゃん。その・・・つい・・・」
「しょうがないやつだ。まぁ、その点は陽一君にも言えるがな。」

祖父ちゃんは一瞬だけ俺を睨み怒りはしたが、すぐに普通の祖父ちゃんに戻った。

「あんな経験をさせたのは初めてだったからな。お前が動揺したのもわからなくもない。」
「やっぱりあれは祖父ちゃんが俺にしたの?」
「そうだ。お前が将来の事で少し悩んでいたようだからな。
だからお前もいい歳になったし、これを機にわしの仕事を少し見せたのよ。
しかしなーあれくらいでこんなにも動揺するならば、まだまだだったようだ。」
「うぅう・・・」

やっぱり俺にはその手の才能がないんだろうか?
俺は申し訳ない気持ちで、何故が唸ることしか出来ずにいると、
祖父ちゃんは何故だか笑った。

「早とちりはするなよ?一。
わしはお前に才能がないと言ったわけではないのだからな?」
「え?でも・・・」
「お前がわしや祖母さんのような仕事をするには、
まだまだ「未熟なだけ」で「才能が無い」と言ったわけではない。
それに妹の清香のように祓う力に恵まれなくても、
わしの様に特殊な呪物に好かれれば、立場が逆転することだってありえるのだから。」
「と、特殊な呪物?」

俺は祖父ちゃんにそんなことを言われて、一瞬だけゾッとした。
呪物に好かれるとか、普通にそんなのありえるのか?
しかも怖いことなんじゃ?
持ってる持ち主を呪ったりとかする話が多いと思うが・・・
でも俺も祖父ちゃんの孫だし・・・呪物に?好かれるなんて日も来るのか?
悩む俺に祖父ちゃんはニヤリと笑う。

「お前は若い頃のわしに似てる。それにまだ若いのだ。
この先どんな出会いがあるかわからん。それに呪物は日本だけでない、
海外にでも沢山あるのだからな。」
「うーん・・・祖父ちゃん。それって励ましてくれてるの?」

俺は祖父ちゃんの言葉に対する反応に困った。
祖父ちゃんはニヤニヤしたままで嬉しそうだった。
祖父ちゃんなりに俺を励ましてくれたつもりなら、俺は喜ぶべきなのかもしれないが・・・
なんせ俺の祖父ちゃんは普通じゃないからなぁ。
素直に喜ぶに喜べないんだよな。

「さて、今日はこれで話は終わりだ。陽一君と仲良くしていくのは大いに構わないが、
あんまりわしや祖母さんの仕事の話だけは、気軽にするでないぞ。わかったか?一?」
「はい。気を付けます。」
「うむ。そうしろ。相手に話すだけでも呪いが飛ぶこともあるのだからな。」

祖父ちゃんは最後の最後にサラッと怖い事を俺に言って、
俺を解放してくれた。
いや過去にもそう言われてはいたんだけど、俺があんまり気にしなかったんだよな。
昨日のあんな出来事を体験しなければ、
今日だってろくに怒られずに済んでラッキーとでも軽く考えただろう。

「ん?清香・・・何見てるんだ?」
「あ、お兄ちゃん。何見てるって、ニュース見てるんだよ。」
「珍しいな。お前がこんな時間にニュースって・・・」

俺は祖父ちゃんから解放されて、途中リビングに寄った、いつもなら夕食が終われば、
清香はすぐに自分の部屋に戻るのに、今日は珍しくリビングにいて、
しかも普段なら、ろくに見ないニュースを見ている。

「〇〇商事前から〇〇キャスターが向かってます。
〇〇さーん!そっちの様子はどうですか?」
「はーい!〇〇です!現場は未だ混乱してる様子です。
〇〇商事から不審火が出て、すでに2時間は経ち、
消火の目途もついてはいるそうなんですが、被害者は多く、
未だにビル内に数名が取り残されているとのことです。」

とテレビからニュースの内容が聞こえてくる。

「〇〇商事って前に女子社員の一人が自殺して、ちょっと話題になったんだよね。
現代の大人のいじめ問題みたいなので、
有名になってワイドショーとかで何度か取り上げられてんだよね。」
「へぇーそうなのか。知らなかったわ。」
「しかも今回のこの火災の原因も色々と怪しいらしいよ?」
「怪しいってどんな感じだ?」
「ネットの噂だとね、その自殺してしまった女子社員が、
いじめてたやつらを祟ったのが原因で起こしたかもしれない火事なんだって。」
「マジか?そんな噂が?」
「そう。だから私も普段ニュースみないんだけど、この事件が気になって今見てる。
友達も数人見てるっぽい。そのネットの噂の所為で。」
「ああ、だからお前も見てたのか・・・」

俺も清香の話を聞いて、何故か気になり、
清香に微妙に嫌がられながらも一緒にそのニュースを見ていた。
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