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第1章「津雲百の陰謀」

翌朝、俺は祖父ちゃんと会うのが気まずくて、朝飯も食べずに家を出た。
途中のコンビニで菓子パンと抹茶オレを買って、ろくに味わうこともせずに流し込み、学校に向かった。

「よ!一!ん?どうしたんだ?なんか今日は元気ないな?」
「あ?ああ、陽一か。ちょっと寝不足でな。」
「え?マジかよ?そんな寝不足になるほど、勉強頑張ってきたのか?」
「あ、いや。そういうわけじゃないんだ。」
「お?もしかして、お前のまた日常に関係があるのか?」

陽一は俺の心配をしたかと思うと、すぐに俺の家の事を聞きたがる。
俺は昨日の夜に体験したことを陽一に話そうかなとも思ったのだが、
これからテストも開始されるので、時間的に無理だと思い、
陽一には今日のテストが全部終わったら、話をすると約束した。
俺はテストに集中して、昨日の事はあんまり思い出さないようにしていた。
祖父ちゃんから、何かを聞かない限りは、深く考えない方がいいと思ったのだ。
それにしたって、あんな経験は今回が初めてだなぁ・・・
金縛りとか、幽体離脱くらいは、何度かあるけど。

「んでーんでー♪昨日、何があったんだよー!一♪」

今日のテストが全部終わり、同級生達が帰り支度をしている教室で、
陽一は嬉しそうな顔で俺の机に駆け寄り、声を掛けてくる。
そんなにも楽しみにしてたのか?俺の昨日した体験の話が。

「うーん、ここじゃ話すの気まずいなぁ・・・」
「じゃ、俺の家に来るか?」
「え?いいのか?でも・・・」
「気にするなって!お袋は姉貴と里帰りしてて、数日いなし、
親父も出張中だから、今は家に俺以外いないんだよ。」
「そうだったのか?」
「おう!だから、気楽だろ?俺の両親がいなきゃ、お前もさ。」
「まぁ・・・な。」

俺は陽一にここまで言われて、ある意味で安心した。
正直言って、陽一の両親は俺の事を良く思っていない。
過去に祖母ちゃんが助けた手前、邪険に扱うことはなくても、
俺が過去に陽一の家に遊びに行って、あんまり快く思ってないのは、俺も感じていた。
陽一の家族からすれば、九十九神家の人間として見ると、
俺の存在も何か不気味に感じるのかもしれないな。
得体の知れない存在だからこそ、危機感を感じるというのか。
俺的には、自分は普通の人間と思っているけど、
相手には分かって貰えないのはしょうがない。
ただ、陽一はそんなの事は一切に気にせずに、俺の親友でいてくれているので、
内心は有難いと俺も思っている部分はある。
本人には絶対に言えないけどな、調子に乗るから。

「じゃーお前の家に行くか。途中で、どっかお菓子とかジュース買っていくか?」
「よし!そうしようぜ!あ、飲み物ならコーヒーとか紅茶でいいなら、うちにあんぞ?」
「そっか。じゃあ菓子だけ買うか。」

俺は陽一と一緒に、陽一の家に行くことにした。
陽一の家なら、他の誰にも聞かれることはないな。
昨日のあの体験を、カフェとかファミレスで言うのも嫌だったから、
陽一のこの提案は俺には丁度良かった。
だからって、俺の家で陽一に聞かせるのも気が引けるしな。
場合によっては、祖父ちゃんに怒られそうだし。
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