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第2章「私は、遭遇者です」

私はSの従兄弟のTです。今は地元にある神社の神主をしています。
凄く有名な神社と言う訳ではありませんが、地元の方々には、大事にして貰っている神社です。
今でも家族には、あんなに悪戯っ子で、わんぱくだったお前が将来は、
あの神社の神主なるなんて思わなかったと言われますが、私の父方の祖母と、
従兄弟のSには、そっち方面の仕事に就きそうな気がしていたと言われます。
従兄弟のSとは、Sが現在でも私を慕ってくれているのもあり、昔のように仲良くしています。
お互いの家族同士で食事や旅行などもするほどに。

「あなたったら、またS君にお手伝いお願いしたの?」
「うん?そうだな、どうしても、男手が欲しかったからな。頼んでみたら、
引き受けてくれたからさ。」
「いつも思うけど、2人は本当に実の兄弟のように仲良しよね。」

妻は私を見て、そう笑いながら話しかけて来た。
実は、私が居る神社は、妻の実家でもあり、私は婿養子です。
妻の神社を継ぐのもあって、私が神主になりました。
妻の存在もあったからこそ、今の私があると言ってもいいかもしれません。
私と妻は、地元の同じ高校生の先輩と後輩と言うのが最初の仲で、ある年の夏に、
私が妻の神社でバイトをしたのをきっかけに仲良くなり、付き合う事になりました。
妻と結婚をすると決意した時に一番喜び、協力してくれたのは、
父方の祖母で、
こんな素敵な縁はないと、妻の前でも言ってくれました。
祖母は自分も過去に巫女をしたこともあったので、余計に喜んでくれたのかもしれませんね。
あれから、多少、家族間で話し合うことはありましたが、
妻の家族が私を最終的には喜んで受け入れてくれたので、安心出来ました。
自分の妻の自慢をするのも、なんですが・・・妻は地元では、
可愛い子として有名だったんですよね。
と、私の話はここまでにして、妻が私にこう言ってきたのは、
年に数度、Sに神社の雑務的な仕事を手伝ったりして貰う事があり、
今回もそれでSを呼んでいたので、妻がそれに気づいて、私に言ってきたわけです。
もちろん、私もタダでこき使ったりなどしないですよ?
食事を奢ることもあれば、謝礼を払うこともありますし、場合によっては、
祈祷をお願いされれば、喜んでしたりもしますし、その時々で、
Sにはお礼もちゃんとしています。
つい最近は、Sの娘のEちゃんの高校の合格祈願の祈祷をしてあげたりもしました。
Sは、あの小学生の夏休みに起きた、秘密基地にしていた洞窟に
大量に神仏関係の物が捨てられていた、あの事件が忘れられないようで、
そこから私と同じように、神仏関係には敬意があるようです。
お酒に酔っぱらった時には、あの当時の話をし、私に感謝するくらいに。
その話は互いの妻や子供も知っています。子供達は、その話が小さい時は面白かったのか、
私やSに怖い話をして欲しい時は、せがんで聞いてきたりもしました。
Sの子達は、私が神主なのもあり、暇な時は今でも怪談をせがんだりしてきますね。
私も知り合いから、怖い話を仕入れるのは、造作もないので、
注意喚起も含めて、神仏を馬鹿にするようなことはしていけないと話してあげますが。

「それにしたって、S君は律儀よね。あなたも、面倒見がいいのは、わかるけどさ。
あの子供の時の事件以来に、更に仲が良くなったんだもんね。」
「だな。今は実の弟よりも、Sの方が仲がいいくらいだからな。」
「みたいね。けど、S君には私も神社の事をしてくれるんだから、
感謝しなくちゃなんだけどさ。」
「あはは。そうなら、今夜の夕食にビール用意してやってくれよ。
最近、奥さんがうるさくて、ビール飲ませて貰えないんだと。」
「うふふ。わかったわ。ご馳走も用意しておいてあげるから、
頑張って貰って♪」
「よし!わかった!じゃあ、俺も頑張るか!」

私は、妻の嬉しい言葉に気合を入れ、Sと神社の外でいつもの様に再会し、
今日、手伝って欲しい事を、私の車の中で話す。

「そーいえば、T。あの噂、知ってる?」
「ん?噂って?」
「あの、昔、秘密基地にしてた洞窟あるじゃんか?
あそこが、都市化計画とかで、洞窟や周辺を更地にしてから、
マンションとか色々な建物を作るとかって話が出てるの。」
「あーそう言えば、そんな話出てるらしいな。」

私はSから、その話を聞いて、少し嫌な気分になった。
あの事件を知っている人なら、あの洞窟周辺はいわくつきなのは
知っているはずなのだが・・・
あの辺の地主が若い世代に変わったこともあり、そんな話が出ていると言う
噂は私の耳にも入って来ていた。
古くから居る、周りの住人達はその都市化計画には反対だった。
あんな洞窟での事件が、起きたのも、あの場所が過去から忌み地と
されていた場所だったからじゃないかと、前神主で、妻の父、
私の義理の父からも、そう話を聞いたことがあった。
その義理の父も、去年に病気で他界してしまったが。

「時が経って、あの周辺の都市化計画に反対する住人が、
一気に減ったから、またそんな話が出て来たんだろうな。
しょうがない話でもあるが・・・俺は今でも賛成はしないけどな。
霊感がちゃんとない俺でも、あの土地での事業は成功しないだろうと
確信出来そうな程なのに。」
「T、言ってたもんな。あそこら辺の土地は、良くないって。」
「そうだ。俺の義理の父が言ってたからな。あそこの土地に住むのだけは絶対にやめろってな。」
「ひぃ・・・先代の神主さんまで言うんだから、聞くべきだな。
俺も、もしあそこに新しいマンションとか出来ても、家族や親族含めて、
絶対に住まわせないようにするわ。」
「ああ、そうした方がいいぞ。」

私とSは、そんな会話を車の中でしながら、神社に辿り着き、
一緒に神社の雑務をして貰った。
不幸を招く土地と言うのは、存在する。何も地方だけでなく、
普通に街中でもある。
土地の広さは関係ない。
貴方の側にもありませんか?いわくつきの物件とか?
今、話題の事故物件とか言う奴ですよね。
けど、別に殺人とか自殺とか起きる場所だけでなく、商売が上手くいかない場所も、
いわくつきな土地と言うことです。
そういう土地にお世話になる時は、どうぞお気を付け下さいね。
最近、良い事がなく、不幸がやたらと続くって言う事があったら、
それは運がないと言うだけの話ではないかもしれませんよ?
何かを感じることが出来る人の中には、体調を一気に崩すこともあるんだと聞きます。
だからこそ、土地を移動する際には、慎重にね?
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