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第2章「私は、遭遇者です」

私は、遭遇者です。
どんな事の遭遇者かと言いますと、それを先に言ってしまうと、
この怪談のネタ晴らしと言いますか、そんな感じになってしまうので、今は控えます。
この話は、私がまだ小学生3年生くらい時でした。
父の実家に、夏休みを利用して、姉と弟である私と母で、里帰りした時の話です。
父は、その年の夏休みは、仕事の都合上で、遅れてくることになりました。
いつもなら、車で行く、父の田舎に、初めての電車で行ったので、
子供ながらに、凄く嬉しかったのを覚えています。

「こら!S!ちゃんと、大人しく、自分の席に座りなさい!」
「まったく・・・Sは子供ね。新幹線に乗ったくらいで、馬鹿みたい。」
「お姉ちゃんは、うるさいな!」

私は自分より、4歳年上の姉と少し口喧嘩しながら、母にも怒られながらも、
楽しく新幹線に乗り、はしゃいでました。
ほら?男の子って、そういう乗り物とか大好きじゃないですか?
私も、そんな世の男の子と大差ない子でした。
ただ、姉は4歳年上で、中学生になっていたのもあり、
私のこうした子供じみたところに、嫌気が差してくる年頃だったのもあり、
父の田舎についてから、私と遊んでくれることはありません。
私は父の田舎にいる、父の妹のM叔母さんといいますが、
その叔母さんの子で、1歳年上のTお兄ちゃんと、1歳年下のA君と遊ぶことなりました。
毎年、何かと親族の集まりがある時は、よく会うのもあり、その年の夏も、
この2人と仲良く遊べるのは、私にとって、最も楽しみな事でした。
いつもの様に、最初は家でテレビゲームやら、カードゲームやら、
まぁ今時の遊びはするのですが、
途中から、M叔母さんに、外でも遊びなさい!と怒られ、私達は、
外に遊びに行くと言うパターンです。
父の田舎は、そこまで山奥の中と言う訳でもないのですが、父の実家の周りには、
畑などが多くあり、ちょっとした森や、小高い山などもありで、
子供としては、遊び場には困らないような場所でした。
それに、父の実家には、私用の自転車も置いて貰ってあったので、
その自転車に乗り、従兄弟と少し遠出も出来たので、夜遅くまで、
父の実家から、遠く離れた森まで、遊びに行ったこともあります。

「なーS!今年は、いい所に連れて行ってやるよ!」
「え?!いい所って?」
「お兄ちゃん、まさかS君に秘密基地教えてあげるの?」

Tお兄ちゃんの言葉に、反応する私と、A君に、Tお兄ちゃんは不敵に笑う。

「ああ!今年は、あの秘密基地を拠点にして遊ぼうぜ♪
実は、こっそり、色々と持ち込んであるからさ!
いいタイミングがあったら、あそこに泊まりたいとも思ってるんだ。」
「へぇー!どんな所だろう?すげぇー楽しみ♪」
「本当に凄いとこだよ!」

Tお兄ちゃんの言葉を聞き、私は凄くワクワクした。
A君も、得意げな顔で、私に自慢してくるほどだった。
その例の秘密基地は、父の実家から自転車で30分もかからずに、
行ける場所にある、小高い山の中にあった。

「すげぇー!洞窟だ!」
「洞窟と言うか、おばあちゃんが言うには、防空壕じゃないか?とか言ってたけどな。
でもまー使われた感じはないし、何もない感じだったから、
今はただの洞窟か・・・」

Tお兄ちゃんは、当時の私にはよくわからなかった話をしながらも、
私をその秘密基地に案内してくれた。
秘密基地の奥には、懐中電灯や古びた小さいラジオ、トランプや、
ちょっとしたお菓子が入った缶などがあり、私はそれを見て、
ますます興奮したのを覚えている。
小学3年生くらいの男子には、こうした冒険と言うか、探索に憧れやすいじゃないですか?
私もそんな男子の1人でしたから、従兄弟達と、その秘密基地で楽しく遊ぶことにしました。
その年の父の里帰りは、思ったより、長い期間居れることになったのです。
父がどうしても、仕事の都合で、まだ実家には帰れないと言う事もあり、
母は、父方の両親とも兄弟とも、仲が良かったので、
もうしばらくは父の実家にいることにしたのです。
私は子供ですから、従兄弟達と、まだ、あの秘密基地で遊べるんだと言う事に、
素直に喜んでおりました。
が、姉は、少し不満そうな顔をしていましたね。
いつもなら、1週間前後の滞在が、もう1週間くらい増えて、
私と従兄弟達は、その秘密基地を拠点にして、虫取りをしたり、
花火をしたりと、色々と満喫して、遊んでいました。
しかし、父が明日には、実家に帰って来れると言う日に、
その秘密基地に異変が起きたのです。

「うわぁ・・・なんだよ・・・これ?」
「お札?お守りに・・・これはお稲荷さんって言う、キツネか?」
「お兄ちゃん?ここって、いつもの秘密基地だよね?」

私達は、いつもの遊び場にしていた、秘密基地の奥に、
信じられない量の、神仏関係の物が、無造作に捨てられているのを見た。
私は、子供ながらにゾッとしたのを覚えている。

「酷いことするなぁ・・・こういうのって、古くなったり、使わなくなったら、
ちゃんと神社とかお寺に、持っていくって、おばちゃんに聞いたけどな。」
「お兄ちゃん・・・これ、どうするの?」

少し、イライラしたTお兄ちゃんは、弟のA君に聞かれて、
悩んだ顔をしたが、私とA君に向かって、秘密基地から、
今すぐに出ようと言った。

「残念だけど、今後はここで遊ばない方がいいな。誰がやったか、知らないけど。
こんな場所になってしまった以上は、ここはもう遊べる場所じゃないよ。」

Tお兄ちゃんは、いつもよりも、大人らしい対応で、私とA君に言った。
後に知ったことだが、Tお兄ちゃんとA君の父方のおばあちゃんは、
神社で巫女さんをしたこともあった方らしくて、それで、Tお兄ちゃんに、
お札やお守りで、悪ふざけは絶対にするなと、厳しく怒ったことがあったらしい。

「さ、帰ろうよ。何も、ここじゃなくても、遊び場は他にもあるさ!」
「うん・・・残念だけど、しょうがないよね。」

私は、渋々、Tお兄ちゃんに言われ、不満そうではあったが、A君と帰った。
姉に、この話をしたら、めちゃくちゃ気味悪がられて、何でだか、私が怒られた記憶がある。
それから、翌年の夏休みになり、父の実家にまた里帰りした際に、
あの洞窟は封鎖されたと、Tお兄ちゃんに聞かされた。
Tお兄ちゃんの顔は神妙なのもあり、その話は、少し怖い話に感じました。

「Sと、遊んでた、あの秘密基地あったじゃんか?」
「うん。あったねぇ。最後は、ちょっと不気味だったけど。」
「あそこ、封鎖されたぜ?」
「そうなんだ。でも、何で?」
「実はな・・・あそこの洞窟で遊んだ、他の奴がいてさ、そいつら、
かなりヤバい事になったんだよ。」
「え?ヤバいってどんな?」

私は子供ながらに、興味津々にTお兄ちゃんから話を聞く。

「俺らより年上の中学生くらい奴らが、5人くらいで、あの洞窟にあった、
お札とかお守りとかあっただろう?」
「うん。あったね。」
「それを、折り紙みたいにして、折ったり、破いたり、引き裂いてりして、
最後には、洞窟内で燃やして遊んだんだと。」
「ひぃー罰当たりなことするねぇ・・・」
「だよな。だから、本当に罰があったんだよ。」
「え?もしかして・・・?」

私は唾を飲み込み、Tお兄ちゃんの言葉を待った。

「2人は交通事故に遭って重症、1人は親の会社が倒産して、どっかに引っ越して、
もう2人は、原因不明の病気で、かなり重いらしいぜ。
あれは、間違いなく、神仏の祟りだよ。」
「そ、そんなことがあったんだ・・・」

私は、Tお兄ちゃんからの話を聞いて、背筋が冷たくなった。
5人とも、綺麗にと言っていいほどに災いが起きてるのだから、
その当時の私は、Tお兄ちゃんが好きだったのもあり、
素直に信じてしまいました。
それから、他にも、色々な事が起きたようで、洞窟を調べた近所の大人達が、
しかるべき場所に相談し、封鎖したらしい。
原因不明の病気で苦しんでいる子は、未だに何かに怯え、
許して下さい、許して下さい!!と、何度も寝言で言うのだとか。

「S。お前も、絶対に、お札とかお守りとかだけでは、悪い遊びはするなよ?
これは、俺はおばあちゃんに言われたことだけど、力の強い「何」かは、
必ず存在していて、それを無駄に怒らせる行動は、するべきじゃないって言ってたからな。」
「う・・・うん。僕は、絶対にそんなことしないよ!」
「よし!じゃあ、今日は、新しく出た、このゲームやろうぜ!」

Tお兄ちゃんは、そう言うと、いつも明るい感じに戻り、
その年に発売したばかりのゲームソフトを私に見せて笑った。

「以上が、私の遭遇した事です。私は、当時のTお兄ちゃん、
今でも仲が良いTさんのおかげで、大事にはなりませんでしたが、
もし、悪い考えをする従兄弟達だったら、どんな目に遭っていたかわかりません。
更に数年後に分かったことですが、どこかの悪い業者が、どういうわけか、
お札やお守りなどを、あそこの洞窟に不法投棄したようです。
これも、はっきりとしたことではありませんが、その悪い業者は、
社長が理不尽な死を遂げ、社員もほとんどが自殺や行方不明になったんだとか。
きっと、その業者も神仏の祟りがあったんでしょうね。
ところで、皆さんは、自分が買った、お札やお守りとか、ちゃんと大事にされてますか?
何もわからないからって、生ごみと一緒に捨てたりしてませんよね?
気を付けて下さいね。Tさんは今でも言いますから・・・
力の強い「何」かは、必ず存在するってね。」
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