プロローグ
バキ!!っと、人が殴られる、痛そうな音が響き、僕は思わず、目を瞑ってしまった。
お決まりのパターンの1つではあるけども、どうして、
僕の仕事の相方は、普通に仕事を断れないのだろうか・・・
「な、何をする!!いきなり、ひ、人の顔を殴るなんて?!」
「お前こそ、俺を舐めてるのか?お前が俺にやらせようとしてることは、
犯罪行為だろうが。それを堂々と、俺に仕事の依頼として頼んでくるとか。
馬鹿にするのも大概にしろよ?え?」
僕の仕事の相方である、ネイルは、依頼を持って来た、中年の男性を
椅子ごと殴り飛ばして、鋭く睨み威圧する。
どうやら、ネイルはこの仕事を受ける気はサラサラないみたい。
まぁ、ネイルの話を聞いてる限りでは、ギルドから見ても、
犯罪行為になりそうな仕事なら、引き受けるわけがないよね。
それに関してはネイルが正しいとは思うけど、だからって、
殴る事はないんじゃないかなぁ・・・
僕は、穏便に済ませて欲しいんだけどなぁ。じゃないと、
ネイルの評判が下がったら、仕事減っちゃうと思うのに。
「こ、こんな乱暴的な奴に、私の依頼が務まるわけがない!
し、失礼させて貰う!!!」
ネイルに顔を殴られた、中年の男性は、プンプンと怒りながら、
布にくるまれた何かを大事そうに抱え、飛び出す様に逃げ出した。
ネイルは、更に不機嫌そうにして、その中年の男性の背後から、
怒鳴った。
「そんな依頼は、こちらから願い下げだ!さっさと俺の目の前から失せて、
二度と顔を現すな!じゃないと、ギルドに犯罪者として、突き出してやるからな!!」
ネイルは、そう怒鳴って、立ち上がり、家のドアを勢い良く閉めた。
バタン!と乱暴に閉められる音に、僕はいつもドキっとさせられる。
こういうのは、正直、こちらもいい気分はしない。
「ラリイ!コーヒー持ってこい!ああーイライラする!」
「はいはい・・・全く、せっかくのお仕事が無くなったって言うのに・・・」
「なんだ?なんか文句でも?」
「な、何でもないです・・・」
僕はネイルに睨まれながらも、大人しくネイルの好きなブラックコーヒーを用意した。
それをネイルの目の前のテーブルに置き、僕は自分の好きなカフェオレを置いて、
それを飲みながら、ネイルに話を聞く。
「何で、途中からあんなに怒り出したの?犯罪行為とか、言ってたけど、
そんなに悪いお仕事だったの?」
僕は、少しオドオドしながら、ネイルに今回の依頼の話を聞いてみた。
ネイルは、最初は黙ったまま、コーヒーを啜っていたが、途中から、
僕の顔を見て、わざと深い溜息をつく。
説明するのが面倒臭いのだろうなぁーと僕はすぐに思ったけど、
でも聞くしかない。
じゃないと、どうせ、いつか僕を馬鹿にするネタにされかねないし。
「あのおっさんの今回の仕事の依頼はな、ある国への禁断書の
配送の手伝いだったんだよ。」
「え?禁断書?まさか・・・だって、禁断書って、普段じゃ絶対に
手に入れられないものなんでしょ?
本当に、あの人が持っていたの禁断書だったの?」
「さぁな。俺はその書の名前を聞いた時点で、馬鹿馬鹿しくなって、
今回のこの仕事は面倒だと判断して辞めたけどな。」
「えー?!大して確認しないで、あんな殴って追い返したの?!」
僕はネイルの言葉を聞いて、驚いた顔をした。けど、ネイルは、
そんな僕を呆れた顔をして見ている。
「当たり前だろうが?いいか、ラリイ。よく考えろよ?
どのみち、この仕事を引き受けても、俺達には損しかないんだ。
あの禁断書が偽物であれば、あの禁断書を引き取った側は、俺達から偽物を
掴まされたと怒るだろうし、本物なら本物で、それを運ぶの手伝った俺達も
罪に問われかねない。何より、禁断書を保管していた場所からも、
厳しい対応をされるだろうしな。
ギルドからだって、厳しい罰則があると思うぞ?
それでも、お前は、さっきの仕事を引き受けるべきだと思うか?」
「そこまで聞いたら、流石に僕だって、そんな仕事は、断るべきだと思うよ・・・」
「だろ?それに、そんな仕事を持ってくる奴に、礼儀なんて無用だ。
これで親切に断ってみろ?もしかしたら、自分の場合なら、
引き受けてくれるかもなんて、図々しい奴が、また現れるかもしれないだろうが。
だから、あれくらいで丁度いいんだよ。」
「そ、そういうものなんだね・・・」
「わかったか?お人好しの馬鹿のラリイ。」
「むぅ・・・」
僕はネイルに最後に馬鹿にされて、ムッとしたけど、我慢して黙った。
確かに、ネイルの意見は、何も間違っていない。
犯罪に繋がる仕事を持ってくる人達に隙を見せれば、ここぞとばかりに、
ネイルの力を借りようとしてくる人達が出て来てもおかしくはないもんね。
ネイルは、こんなに普段は態度が悪いけど、ギルド内では、
実力がある、ちょっとした有名な存在には違いないから。
「俺は、今日はもう書斎に籠るわ。こんなんじゃ、今日は
まともな仕事を持ってくる奴もいないだろ。」
「うん・・・いなそうだね・・・」
「ラリイは暇なら、ギルドに行って、新しい仕事でも探してこい。じゃあな。」
ネイルは椅子から立ち上がると、僕にそう言って、自分の書斎に行ってしまった。
全く、命令だけして、さっさと自分は好きな読書するなんて、
ずるいと思うんだけどな。
でも、僕はそんなネイルに逆らう事は出来ない。
僕は、そんな性格が悪いネイルに頭が上がらないのだ。
「ここで、ネイルの仕事の相方なんてしてるけど、そんなのは名前ばかりで、
実際は家政夫みたいなことしながら、ネイルの家に住み込みさせて
貰ってる立場だもんね。
と言うか、酷く言えば、ネイルの奴隷みたいなもんだし・・・
はぁ・・・どうして、僕はネイルなんかと、一緒に仕事してるんだろう?」
僕はネイルがいなくなったのを、ちゃんと確認してから、独り言を呟いた。
じゃないと、もし聞かれた日には、僕はネイルから、
このネイルの家を、平然と追い出されるかもしれない。
今の僕には、ネイルの家を追い出されたら、行く当てがないし、
お金も、まだ貯金出来てない状態なので、きつい。
ネイルに、いつでも追い出されていい準備はしておかないなんだよね。
「でも、僕はまだギルドの仕事も1人では出来る立場にないし、
ちゃんと1人でやっていけるようになるまでは、ネイルにどんなに馬鹿にされても、
ネイルの仕事ぶりを見せて貰って、勉強させて貰うしかないよね・・・」
僕は、毎度自分に言い聞かせてる言葉を自分で言って、前向きになろうと思った。
「今回は、あんな仕事だったから、駄目だったけど、
今からギルドに行って、新しい仕事を探そう!
まだ、お昼ちょっと過ぎたくらいだから、ギルドもまだ開いてるだろうし!」
僕は、ネイルの家から、すぐ近くにある町、ナーシェに向かうことにした。
歩いても行けるくらいの町なので、そんなに遠くはないんだ。
そこには、僕達のような冒険者とかに、仕事を斡旋してくれるギルド組合があって、
そこで仕事を紹介して貰ったり、ネイルみたいに、ちょっとした有名人になると、
ギルドから紹介されたと言って、お客さんから来ることもある。
本当は、今回も、そのお客さんが、まともであってくれたのなら、
僕がこうして仕事探しなんてしなくても、済んだのになぁ・・・
でも、お客さんがまともであったとしても、あの気難しい性格のネイルが、
早々に仕事を引き受けるとも限らない。
まずネイルは、いつも何かしら文句をつけては、大金が
貰えそうな仕事でも、平気で断る。
気分を害した場合には、ああやって、依頼主を殴るし・・・
穏便に断る方が少ない。
だけど、仕事を引き受ければ、絶対に仕事は成功させる。
ネイルは僕と同じ歳のまだ20歳なんだけども、
その仕事ぶりは、ギルドの一部の人達からは、かなり評価されている。
若くて、有能で、相当に強いと。
ただ、さっきも言ったけど、性格に難があるんだよねぇ。
ネイルは人の好き嫌いが激しいのだ。気が合う人には親切ではあるけども、
気に入らない人には、とことん容赦がない。
基本は無視が多いけども。
僕の場合は・・・どうなのかな?一応は、一緒に暮らさせて貰ってはいるから、
嫌われてはいないのかな?
うーん、いや好き嫌い以前に、ただ便利に使えるから、居候させてるだけかもね。
お決まりのパターンの1つではあるけども、どうして、
僕の仕事の相方は、普通に仕事を断れないのだろうか・・・
「な、何をする!!いきなり、ひ、人の顔を殴るなんて?!」
「お前こそ、俺を舐めてるのか?お前が俺にやらせようとしてることは、
犯罪行為だろうが。それを堂々と、俺に仕事の依頼として頼んでくるとか。
馬鹿にするのも大概にしろよ?え?」
僕の仕事の相方である、ネイルは、依頼を持って来た、中年の男性を
椅子ごと殴り飛ばして、鋭く睨み威圧する。
どうやら、ネイルはこの仕事を受ける気はサラサラないみたい。
まぁ、ネイルの話を聞いてる限りでは、ギルドから見ても、
犯罪行為になりそうな仕事なら、引き受けるわけがないよね。
それに関してはネイルが正しいとは思うけど、だからって、
殴る事はないんじゃないかなぁ・・・
僕は、穏便に済ませて欲しいんだけどなぁ。じゃないと、
ネイルの評判が下がったら、仕事減っちゃうと思うのに。
「こ、こんな乱暴的な奴に、私の依頼が務まるわけがない!
し、失礼させて貰う!!!」
ネイルに顔を殴られた、中年の男性は、プンプンと怒りながら、
布にくるまれた何かを大事そうに抱え、飛び出す様に逃げ出した。
ネイルは、更に不機嫌そうにして、その中年の男性の背後から、
怒鳴った。
「そんな依頼は、こちらから願い下げだ!さっさと俺の目の前から失せて、
二度と顔を現すな!じゃないと、ギルドに犯罪者として、突き出してやるからな!!」
ネイルは、そう怒鳴って、立ち上がり、家のドアを勢い良く閉めた。
バタン!と乱暴に閉められる音に、僕はいつもドキっとさせられる。
こういうのは、正直、こちらもいい気分はしない。
「ラリイ!コーヒー持ってこい!ああーイライラする!」
「はいはい・・・全く、せっかくのお仕事が無くなったって言うのに・・・」
「なんだ?なんか文句でも?」
「な、何でもないです・・・」
僕はネイルに睨まれながらも、大人しくネイルの好きなブラックコーヒーを用意した。
それをネイルの目の前のテーブルに置き、僕は自分の好きなカフェオレを置いて、
それを飲みながら、ネイルに話を聞く。
「何で、途中からあんなに怒り出したの?犯罪行為とか、言ってたけど、
そんなに悪いお仕事だったの?」
僕は、少しオドオドしながら、ネイルに今回の依頼の話を聞いてみた。
ネイルは、最初は黙ったまま、コーヒーを啜っていたが、途中から、
僕の顔を見て、わざと深い溜息をつく。
説明するのが面倒臭いのだろうなぁーと僕はすぐに思ったけど、
でも聞くしかない。
じゃないと、どうせ、いつか僕を馬鹿にするネタにされかねないし。
「あのおっさんの今回の仕事の依頼はな、ある国への禁断書の
配送の手伝いだったんだよ。」
「え?禁断書?まさか・・・だって、禁断書って、普段じゃ絶対に
手に入れられないものなんでしょ?
本当に、あの人が持っていたの禁断書だったの?」
「さぁな。俺はその書の名前を聞いた時点で、馬鹿馬鹿しくなって、
今回のこの仕事は面倒だと判断して辞めたけどな。」
「えー?!大して確認しないで、あんな殴って追い返したの?!」
僕はネイルの言葉を聞いて、驚いた顔をした。けど、ネイルは、
そんな僕を呆れた顔をして見ている。
「当たり前だろうが?いいか、ラリイ。よく考えろよ?
どのみち、この仕事を引き受けても、俺達には損しかないんだ。
あの禁断書が偽物であれば、あの禁断書を引き取った側は、俺達から偽物を
掴まされたと怒るだろうし、本物なら本物で、それを運ぶの手伝った俺達も
罪に問われかねない。何より、禁断書を保管していた場所からも、
厳しい対応をされるだろうしな。
ギルドからだって、厳しい罰則があると思うぞ?
それでも、お前は、さっきの仕事を引き受けるべきだと思うか?」
「そこまで聞いたら、流石に僕だって、そんな仕事は、断るべきだと思うよ・・・」
「だろ?それに、そんな仕事を持ってくる奴に、礼儀なんて無用だ。
これで親切に断ってみろ?もしかしたら、自分の場合なら、
引き受けてくれるかもなんて、図々しい奴が、また現れるかもしれないだろうが。
だから、あれくらいで丁度いいんだよ。」
「そ、そういうものなんだね・・・」
「わかったか?お人好しの馬鹿のラリイ。」
「むぅ・・・」
僕はネイルに最後に馬鹿にされて、ムッとしたけど、我慢して黙った。
確かに、ネイルの意見は、何も間違っていない。
犯罪に繋がる仕事を持ってくる人達に隙を見せれば、ここぞとばかりに、
ネイルの力を借りようとしてくる人達が出て来てもおかしくはないもんね。
ネイルは、こんなに普段は態度が悪いけど、ギルド内では、
実力がある、ちょっとした有名な存在には違いないから。
「俺は、今日はもう書斎に籠るわ。こんなんじゃ、今日は
まともな仕事を持ってくる奴もいないだろ。」
「うん・・・いなそうだね・・・」
「ラリイは暇なら、ギルドに行って、新しい仕事でも探してこい。じゃあな。」
ネイルは椅子から立ち上がると、僕にそう言って、自分の書斎に行ってしまった。
全く、命令だけして、さっさと自分は好きな読書するなんて、
ずるいと思うんだけどな。
でも、僕はそんなネイルに逆らう事は出来ない。
僕は、そんな性格が悪いネイルに頭が上がらないのだ。
「ここで、ネイルの仕事の相方なんてしてるけど、そんなのは名前ばかりで、
実際は家政夫みたいなことしながら、ネイルの家に住み込みさせて
貰ってる立場だもんね。
と言うか、酷く言えば、ネイルの奴隷みたいなもんだし・・・
はぁ・・・どうして、僕はネイルなんかと、一緒に仕事してるんだろう?」
僕はネイルがいなくなったのを、ちゃんと確認してから、独り言を呟いた。
じゃないと、もし聞かれた日には、僕はネイルから、
このネイルの家を、平然と追い出されるかもしれない。
今の僕には、ネイルの家を追い出されたら、行く当てがないし、
お金も、まだ貯金出来てない状態なので、きつい。
ネイルに、いつでも追い出されていい準備はしておかないなんだよね。
「でも、僕はまだギルドの仕事も1人では出来る立場にないし、
ちゃんと1人でやっていけるようになるまでは、ネイルにどんなに馬鹿にされても、
ネイルの仕事ぶりを見せて貰って、勉強させて貰うしかないよね・・・」
僕は、毎度自分に言い聞かせてる言葉を自分で言って、前向きになろうと思った。
「今回は、あんな仕事だったから、駄目だったけど、
今からギルドに行って、新しい仕事を探そう!
まだ、お昼ちょっと過ぎたくらいだから、ギルドもまだ開いてるだろうし!」
僕は、ネイルの家から、すぐ近くにある町、ナーシェに向かうことにした。
歩いても行けるくらいの町なので、そんなに遠くはないんだ。
そこには、僕達のような冒険者とかに、仕事を斡旋してくれるギルド組合があって、
そこで仕事を紹介して貰ったり、ネイルみたいに、ちょっとした有名人になると、
ギルドから紹介されたと言って、お客さんから来ることもある。
本当は、今回も、そのお客さんが、まともであってくれたのなら、
僕がこうして仕事探しなんてしなくても、済んだのになぁ・・・
でも、お客さんがまともであったとしても、あの気難しい性格のネイルが、
早々に仕事を引き受けるとも限らない。
まずネイルは、いつも何かしら文句をつけては、大金が
貰えそうな仕事でも、平気で断る。
気分を害した場合には、ああやって、依頼主を殴るし・・・
穏便に断る方が少ない。
だけど、仕事を引き受ければ、絶対に仕事は成功させる。
ネイルは僕と同じ歳のまだ20歳なんだけども、
その仕事ぶりは、ギルドの一部の人達からは、かなり評価されている。
若くて、有能で、相当に強いと。
ただ、さっきも言ったけど、性格に難があるんだよねぇ。
ネイルは人の好き嫌いが激しいのだ。気が合う人には親切ではあるけども、
気に入らない人には、とことん容赦がない。
基本は無視が多いけども。
僕の場合は・・・どうなのかな?一応は、一緒に暮らさせて貰ってはいるから、
嫌われてはいないのかな?
うーん、いや好き嫌い以前に、ただ便利に使えるから、居候させてるだけかもね。
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