第6章「敵とあいつと大混戦」

「ルエ、いざと言う時は、敵の水属性攻撃を無効化して、自分の身は守れるよね?」
「ええ、大丈夫!出来るわ!」
「なら僕は囮になって敵を、おびき寄せるよ・・・」
「でも・・・グラン、大丈夫なの?そんなことして・・・」

私達はネレースに守って貰いながらも、お互いに耳元でひそひそと話し合いをした。
グランが、囮になると言うけど、敵は身を潜めて、
自分の水の精霊を暴れさせているのよ?
グランが囮になってくれても、私が敵を上手い具合に見つけれるかどうかは、不安だわ・・・
だけど、不安そうな顔をしている私とは逆に、グランはいつもの様にえへへと穏やかに笑う。
私を安心させる為かのように。

「ルエは僕の事は全く気にしなくていいよ。こんな時の為に、
実はリヴァ様から心強い物をお借りしてあるんだ。」
「え?何それ?」
「まぁまぁ・・・それは見てからのお楽しみさ。じゃあ、ルエ。
僕がネレース様の魔法の防御結界から出たら、犯人捜し頼むよ?
大丈夫。今のルエの水の精霊なら、必ず見つけられるさ!」
「わ、わかったわ・・・」

普段とは違う、男らしいグランに私は一瞬だけ、ドキっとさせられてしまった。
やっぱり、こういう事態の時はグランも男らしく頼もしくなるのかしら?

「ネレース様!すいません!結界から出ます!」
「?!」

グランはそう言うと、ネレースの魔法の防御結界から抜けて、
祭壇の真ん中に立ち、わざと目立つように両腕を上げた。
ネレースは私を守る為に魔法の防御結界を張る為の呪文を唱えているので、
グランに変に声を掛けることも出来ない。
すると、身を隠している敵が、多方面からグランを攻撃しようと、
水属性の攻撃魔法をグラン目掛けて仕掛けてきた。
そんな危険な状態でもあるのに、グランは怖がることもなく、
ニヤっと笑って、ある言葉を言う。

『我は幻獣リヴァイアサンの庇護を受けし者なり!
我に仇なすは、彼のリヴァイアサンの水の精霊をも敵にすると知れ!』

これは後に私は知る事になるのだけれど、グランはリヴァイアサンに、
幻獣語でこの言葉を教わったみたい。
その時の私にはグランが何を言ったのかは理解出来ていなかったけど、
その言葉にリヴァイアサンの多くの水の精霊がすぐ反応し、
グランを敵の攻撃から見事に守った。
精霊が見ることが出来ない人達からしたら、さぞ凄い光景だったことだろう。
まるで水神がグランを守ったかのように見えたかもしれない。
何故なら、グランが見事に無事だったから、各場所から感嘆のような声が聞こえたから。

「ネレース様!すいません!私も結界から出ますね!!」
「?!!!」

私の言葉にネレースは更に驚いた顔をし、どうにかして私を結界から出さないように、
動こうとするが無駄だった。
そりゃ、これだけの魔法の防御結界を唱えているネレースが
何もしてない私の動きを止めるなど、普通に考えて出来るわけがない。
私もグランもネレースに申し訳ないと思いながらも、
どうしてもこの大事な儀式を邪魔した敵が許せなかった。

「私の水の精霊よ。私達の大事な儀式を邪魔した者を見つけ出して!お願い!!」

私は心の中で強く、自分の水の精霊に願った。
数分して、ある場所で男の悲鳴が聞こえた。

「や、やめろ!!!これはどうなっているんだ?!!」
「あ!あいつが犯人のようだわ、グラン。」
「そのようだね。ルエ。」

私とグランは、儀式の近くにいた、ある男をジロリと睨んだ。
その男は全身がずぶ濡れになり、足元は逃げ出せないように凍りついていた。
ずぶ濡れにしたのは私の水の精霊で、足元を凍らせたのは、リヴァイアサンの水の精霊達みたいね。
それにしても、犯人の男は自分の周りに多くの水の精霊が飛び交っているのに、
何も気づいている様子がない。
私だったら、驚いて腰を抜かしてしまいそうな光景だった。

「あんなに多くの水の精霊に睨まれたら、あそこまでうるさく騒げないわよね。」
「まぁーね。僕もあの男みたいに喚けないや。」

私とグランはお互いの顔を合わせて、苦笑いしてしまった。
とりあえずは、犯人は無事に捕まえることが出来たみたいね。
遠くから私達を見守っていた、リヴァイアサンも嬉しそうに目を細めていた。
まるで最初からこうなるのを予期していたみたいな雰囲気ね、あれは。
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