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第6章「敵とあいつと大混戦」

「と、いう感じだ。わかったかい?」
「はい、大丈夫そうです。」
「グランも大丈夫かい?」
「はい。僕も大丈夫です。」

私達はネレースから、謁見の義のやり方を聞いて、何度が質問して、しっかりと確認した。
普段なら、物を覚えるのは得意なんだけど、今回は流石に緊張するわ。
国を代表しての使いですもの。
下手な失敗は絶対に許されるものではないわ。いくら、歳が若いとは言えね。

「難しい動作があるわけでもないし、ルエートが謁見の義で、
言う言葉さえ間違わなければ、問題ないよ。」

ネレースは私を落ち着かせるように、穏やかに言ってくれた。
私もグランも、無駄に動揺しないように、気持ちを鎮める。
私の水の精霊さんも応援するように、私の周りを飛び回り、
グランの土の精霊もグランを見守るように、穏やかな雰囲気で空中を漂っていた。
私達のそれぞれの精霊は、この場で一番落ち着いているわ。
見習わなきゃね。その精神力を。

「では、始めるよ。この時間は、水の神殿の関係者以外は、水の祭壇に近づけないからね。
だから、慌てることはない。ゆっくり、確実にこなすんだ。」
「はい。」
「わかりました。」

私とグランは、ネレースの最後の言葉を聞いて、気を引き締めて、水神への謁見の義を開始した。
水の祭壇がある部屋には、厳かな曲が流れ出し、謁見の義が始まったことを他の者にも伝える。

「ん?どうしたの?」

私は小声で、自分の水の精霊さんをチラっと見る、水の精霊さんは嬉しそうに、
ある方向に向かい、飛び跳ねるような仕草をする。
水の祭壇がある部屋には、2階の部屋を行き来する通路のようなものがあり、
その途中で、リヴァイアサンが他の誰かと一緒に私達の謁見の義を見下ろしていた。
期待と厳しい眼差しが二つ、私とグランの頭上から注がれている。
リヴァイアサンは、あそこで見学するように言われたのね。
確かにあの場所は、この謁見の義を見学するにはいい場所かもしれないわ。
けど、物凄く緊張するんですけど?そんな場所に居てさ。
リヴァイアサンの私とグランを見る目は、いつになく厳しさもあった。
私はうっかりミスをしないようにして、自分の集中するべきことに意識を戻した。
私の水の精霊さんは、リヴァイアサンの水の精霊に、遠くから挨拶したかったみたいね。
リヴァイアサンの水の精霊達は、リヴァイアサンとは逆に
可愛い笑顔で私達を見守ってくれていた。

「大勢の人間に見られているよりも、緊張するわ・・・」

私は誰にも聞こえないように、極力小さい声で呟いた。
この歳で水の神殿の使いをするだけでも、凄いと言われているのに、
それを更に幻獣リヴァイアサンに見られながら行事を行っていくとか、
本来であったら前代未聞の事なんじゃないの?
私は将来食べるのに困ったら、自分のこの体験を本とかにしちゃおうかしら?
って、この謁見の義の途中にそんなことを考えちゃ駄目ね!
集中!集中!!

「では、今年の水の神殿の使いのルエートと同行者よ。
我が水の神の前で、礼儀を尽くせ。」

謁見の義の最初に、水の祭壇に向かって、1人で難しい言葉を並べて居たネレースは、
自分が言うべき言葉を言い終わると、今度は私達に水の祭壇に上って来て、
水神に挨拶の言葉を告げるに言う。
つまり、私達が国を代表して、水の神殿で少しだけ活動させて貰いますね!と承諾を得るのだ。
もちろん、水神の返事をくれるわけではないのだけど、これは大事な形式なのよね。

「はい。」
「はい。」

私とグランは短く返事をして、水の祭壇に緊張しながらも上った。
そして、ネレースが私達が上ったのを確認すると、自分の居た場所を譲る。
私達はその場所に移動し、深々と頭を下げて、ネレースに
教えて貰った言葉を言おうとした矢先だった。
ブォオオオと、いきなり水の祭壇の周りの水が、穏やかに流れていたのが、
急に水柱をあげた。

「な、なんだ?!」
「何が起きた?!」
「どうして、謁見の義の最中にこんなことが?!」

私達を遠巻きに見ていた、水の神殿の関係者達が、慌ただしくなり、激しく動揺する。
これって・・・まさか、この大事な謁見の義でさえ、私達の敵は
邪魔しようとしているわけ?!!

「ちぃ。トラヴァルめ。まさか、この儀式から邪魔するつもりなのか!
ルエート、グラン!こっちに!」
「はい!」
「ルエ!大丈夫?!」

ネレースは私とグランを自分の側に呼び寄せ、魔法の防御結界を張る。
ネレースの言葉や態度から見ても、やっぱり敵が邪魔して来たみたいね。

「どうしましょう?!このままでは、謁見の義が出来ないのでは?!」

グランは私を守ってくれながらも、儀式の心配もする。
ネレースはグランの言葉を聞き、顔を歪める。

「誰かが自分の水の精霊を暴れさせて、この儀式を邪魔している。
その者を炙り出したいとこだが、今の俺のこの状況では無理だ。
クソ・・・ミレイラ、ミティシア・・・」

ネレースは頼みの2人の名前を出し、とにかく私とグランを
守る事に集中してくれているようだった。
もう!一体誰なのよ!この大事な儀式を邪魔する大馬鹿者は!
いや、黒幕はわかってはいるけど!
とにかく、現在のこのトラブルを起こしてる犯人を見つけなくちゃいけないわ!
私は、グランと相談し、自分達で何か出来ないかと考えた。
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