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第5章「水の神殿の底の」

アルヴェルド王子一行のおかげもあり、私とグランは、ミーマーの小神殿で、
夜も遅くなりはしたが、安心して一泊することが出来た。
王子が気を利かせてくれて、私達の部屋、それぞれに自分の部下を、
見張りに置いてくれたのだ。
それから、悪い神官達は、全員、隠し地下牢に閉じ込めたみたい。
馬鹿よね。私達を閉じ込める予定が、自分達が、入れられるなんてね。
しかも、第一王子の部下の騎士達相手では、悪い神官達も、
分が悪いと認めたらしく、抵抗する者は、ほとんどいなかったと言う。
私とグランは、緊張から解放され、安心して爆睡してしまい、
少し遅めに起床してしまったが、アルヴェルド王子は、
気を悪くした様子もなく、笑顔で、私達を出迎えてくれた。
無理に起こす事はないと、部下達に言ってくれてもいたみたい。

「おはよう!ルエートにグラン。昨日はご苦労だったな。よく眠れたかい?」
「おはようございます。アルヴェルド様。王子のおかげで、安心して、
今の今まで、寝てしまっていました。朝の挨拶が遅れてまして、
大変に申し訳ございません。」
「僕達なんかの為に、アルヴェルド様の護衛の騎士達であるのに、
見張りをして頂いたおかげで、こうして安眠することが出来ました。
王子の優しく温かい気遣いに、心から感謝致します。」
「ははは。いいんだーいいんだ!ルエートもグランも、昨日は
あんなに頑張ったのだからな!これくらいは、されて当然だ。」

アルヴェルド王子は、うんうんと、嬉しそうに私達に頷いて見せた。
これには、私もグランも、安心して笑顔になる。
アルヴェルド王子って、第一王子なんだけど、気さくな性格なのよね。
変に威張ったりしないと言うか。威圧的にはならないと言うか。
次期国王様だから、厳しく教育を受けられてるとは思うんだけど。
ここがお城じゃないって言うのもあるのかしら?
それとも、私達が集めた証拠が、かなり嬉しかったとか?
後、礼儀とかに厳しいのは、むしろ第二王子のアルヴァト様かな。
だからって、怖い性格とかではなくて、ちゃんと礼儀さえ守れば穏やかな方だけど。
それから、第三王子のアルガスト様は末っ子だけあって、
少し我が儘な性格だと噂では聞いている。
私とはあんまり接点がないから、実際の性格は、よくわからないけど。

「ルエート達が休んでいる間にな。悪い神官達は、全員、城の方に連行した。証拠と共にな。
早朝に、城から増援を呼んで、事が事なだけに、王もかなり協力的なようだ。
ルエート達は、水の神殿の使いが終わったら、今回の事は、
王からも感謝されるだろう。
父も、久しぶりに母やルルシアから、見直されて、喜ぶことだろう。
父に代わり、感謝するぞ。」
「いいえ、私達は、ただ悪い神官達の目を覚まさせたかっただけです。ね?グラン?」
「ルエートの言う通りでございます。アルヴェルド様。
僕達は、水の神殿が、少しでも正常に戻ればと思っただけです。」
「はは。そうか、ではそう言う事にしておこう。お互いにな?」

アルヴェルド王子は、少しだけ笑って、それ以上は深くは語らなかった。
気さくであっても、こうした会話の時は、やっぱり切れ者ね。
余計なことは、言い合わないことにしようってことね。

「アルヴェルド様。会話の途中に申し訳ございません。」
「どうした?」
「別の水の小神殿からの、応援の者が来まして。アルヴェルド様に
面会を求めております。」
「わかった。そのまま、ここに呼べ。ここで会う。」
「はい。では、すぐに。」

私達の会話の途中で、王子の部下の1人が、そう報告した。
別の水の小神殿から、応援を頼んだのね。それもそうか。
だって、この小神殿の神官は、残りが3分の1くらいの人数に
なってしまったものね。
急に、それだけ神官が減ったら、困るに決まってるわ。
と言うか、悪い神官達が、そんなにいたのにも、驚きよ。
大なり小なりで、罪も違うとは言え。上官に当たる、神官達は
ほぼ全滅に近いものね。

「ルエート達も一緒に立ち会ってくれないか?
私だけで、この小神殿を、一時的にでも治める資格がある者か、
どうか見極められないからな。
ルエート達の意見も聞かせて欲しいんだ。」

王子は、私達にも力を貸して欲しいと言うので、私もグランも、喜んで従った。
王子と面会を望み、王子の元に来た神官は、私達も知っている、
まさかのあの人物だった。
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