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第5章「水の神殿の底の」

「こ、こいつ!あの、大鬼女魔導士のルルシアの娘じゃないか?!」
「道理で!母親と同じで、子供でありながら、どうしようもない、女だと思ったぜ!」
「こんな調子なら、このガキは遅かれ早かれ、処分されることだろう。
今回はそれが早まっただけだ。」
「だな。あの方も言ってたから。前々から、邪魔な存在だと。」
「おい!その話は気軽にここでするな!」

悪い神官達は、私を地面に無理矢理に座らせ、私を取り囲み、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。
どっちが、一番騒いでるのよ、全く。うるさいのはそっちじゃない。
それに、何が大鬼女魔導士よ!人のお母様を何だと思ってるのかしら!
この会話はお母様に絶対にチクってやるんだから!
悪い神官達は、私を見下しながらも、処分とか物騒な言葉を言う割には、
いざとなると、誰も私を殺そうとはしなかった。
結局、悪い事で繋がってる人間って、そんな感じよね。
自分の手は汚したくないってところかしら?
その方が、私も危険が減るから都合がいいのはいいんだけどさ。

「とにかく、このガキはどうする?」
「気絶させて、神殿にある隠し地下牢に、こいつの仲間と、キリアを押し込めるか?」
「キリアめ。本当にこいつらの食事に、あの睡眠薬を混ぜたのか?
あいつ、土壇場になって、こいつらに同情して・・・」
「ありえるな。だったら、こいつらを殺して、それを全部キリアの所為にしよう。
最初から、キリアに罪を着せるのは決めてたからな。」
「ああ、そうしよう。」

悪い神官達が、そんな会話を続けていると、リヴァイアサンの水の精霊は、
凄く怒った顔になり、怒りの余りに涙目にさえなっている。
相当、許せないみたいね・・・こいつらの悪辣非道な言動が。

「ルエート様・・・もう私は我慢の限界です。こんな人間達に使われる同族が哀れでなりません。
命を奪う気はありませんが、魔法を使う資格を奪うことはしてもいいでしょうか?」
「うん、いいと思う。私を殺そうとするような人達ですもの。
私も同情なんてしないわ。好きにして。」
「ん?何を言ってるんだ?この小娘は?」

私は小声で、リヴァイアサンの水の精霊と会話をし、その会話に気付いた、
悪い神官達の1人が、私の言葉に怪訝そうな顔をした。
彼らには、リヴァイアサンの水の精霊の姿が見えないから、
私が独り言でも言ってるように見えるのでしょうね。

「怖さの余りに、気が狂ったんじゃないか?」
「ははは。そうかもな。10代の小娘が、我々みたいな、
高位の神官に囲まれてはな?」
「はぁーバッカみたい。」
「?!」
「何だと?!」

私は、うんざりした顔で、悪い神官達を見上げ、睨み返してやった。
怖さで気が狂いそうになるのは、貴方達よ。今からね。
あのリヴァイアサンの水の精霊を、あんなにも怒らせたんだから。

「貴方達は、水の神殿の神官でいる資格なんて無いわ。」
「何?!何を生意気な!!」
「じゃあ、聞くけど、貴方達は自分の水の精霊が見える?
言っておくけど、キリアは見えてるわよ?」
「はぁ?!そんなわけないだろう!あの未熟者の男が!」
「なら、小娘の貴様にも見えてるとでも言うのか!精霊が!」
「ええ、私も見えるわよ。自分の水の精霊ならね。」
「う、嘘をつけ!この生意気なガキが!!」

悪い神官達の1人が、私の言葉に激昂し、私の頬を叩こうとした瞬間、
動きが止まった。
誰かが、背後からその神官の腕を掴み、力づくで止めたのだ。

「嘆かわしいな。我が国の水の神官は、か弱い子供に、しかも女の子に手を上げるのか?
自分の実力の無さを指摘されたくらいで。やはり、父上と相談し、
水の神殿の在り方を考え直さなければ、ならないようだな?」

私は、その人物を見て、一瞬、心臓が止まりそうになった。
う、嘘でしょ?!何で、こんな人物が、今、ここにいるのよ?!!
私は、腰を抜かし、その場から、すぐには立てそうにない。
その人物は、そんな私を見て、爽やかに微笑む。
その後、一気に、他の武装した男達が小屋に雪崩れ込んで来て、
悪い神官達を、すぐに取り押さえた。
命の危機は去ったけど、何よ、この事態・・・私はただ呆れるしかなく、
リヴァイアサンの水の精霊も、困惑した顔をしていた。
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