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第5章「水の神殿の底の」

「あーそうだ!僕、ここの町の海鮮料理が有名だから!
ぜひ食べたいと思っていたんだよね!ルエもそうだろう?!」

グランは、いきなりいつものテンションとは違う、変に明るくて、ぎこちない笑顔で、
私に向かって言ってくる。
ちょっと、突然、どうしたのよ?私は一瞬だけ、グランの行動を不審に思ったけども、
グランは自分に合わせて!みたいな顔をするので、
私も、グランの調子にわざと合わせてあげた。

「あ!そうだったね!私も美味しい海鮮料理食べたーい♥」

私はちょっと精神年齢を下げた、無邪気な子供のように、わざと騒いでみせた。
これでいいの?グラン?
私は確認するように、グランに目配せすると、グランは頷く。
これは、グランの何か考えなわけね・・・

「キリアさん!悪いんですが、先にどっかの海鮮料理が有名なお店に行ってもいいですか?
もう僕達はお腹ペコペコで♪」
「え?あ、いいですよ。」
「では、早速行こうか!ルエ!後、キリアさんも一緒にどうですか?」
「え?ぼ、僕もですか?」
「はい!今日は、宿泊でお世話になるわけですし♪
一緒に、遅めですけど、昼食なんか出来れば♪奢りますよ!」
「そ、そんな!そこまでして頂かなくても、お付き合いしますので!」
「じゃー行きましょうよ♪グラン、キリアさん♪」

私達は年相応の無邪気な感じで、ワイワイとわざと騒いで、
ある高級そうな海鮮料理の店に行き、グランが気を利かせて、
密会が出来そうな個室に案内して貰った。
なるほど。グランは、人目を避けて、キリアさんと私達だけで、
会話がしたかったわけね。
グランは、テーブルに座り、周りを気にした後で、私とキリアさんに小声で話し始める。

「すいません、キリアさん。いきなり、連れ込むような事をして。」
「い、いえいえ!気になさらないで下さい!」
「実は、僕達はネレース様から、色々と伺ってます。今の水の神殿の内情とか。」
「あ・・・・・」

グランは真剣な顔をして、キリアさんに直球でその話題を振る。
キリアさんも、弱々しく笑っていた顔が、一気に暗くなった。

「はっきり言いますが、ネレース様からは、この町の小神殿には、
泊まらない方が良いと聞きました。
僕は正直言って、今からでも、すぐにでも断りたいところです。
けど、ルエは断らなかった。なんでだか、わかって貰えますか?」
「そ、それは・・・」
「ルエは、キリアさんだったから、断らなかったんです。
昨日、お世話になった、キリル神官の弟さんである、貴方だから。」
「す、すいませんでした!!許して下さい!!!」

グランが、キリアさんにそう話すと、キリアさんは顔を真っ青にして、
グランと私に急に謝罪をし始めた。
そして、今の自分の現状を話してくれた。私やグランの読み通り、
上の悪い神官達に、
私達を連れて来て、小神殿に泊まらせ、今日の夕食に眠り薬を
入れるように指示されていたみたい。
大の大人が卑怯な事をするわね。キリアさんみたいな神官見習いの弱い立場の人を利用して、
最後は罪を着せて切り捨てようとしたに違いない。
もう!本当に許せないわ!こうなったら、前みたいに、
わざと罠にかかった振りをして、ギャフンと言わせてやれないかしら?
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