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プロローグ

「あー疲れたー。」

私は自宅に帰り、リビングでくつろぐ。そこに、幼馴染のグランが、
いいタイミングで、私の大好きな紅茶とお菓子を持ってきてくれる。

「また、説得に失敗したの?ルエ?」

優しい笑顔で、私に聞いてくる。このやり取りも何度目になることやら。

「そう。あの海蛇幻獣ときたら、1か月近くも通ってるのに、
全然態度が変わらないんだもん。嫌になっちゃうわ。」
「あはは。そりゃ無理ないよ。幻獣は、本来は人間と仲良くなるなんて、
有り得ないって、ずっと言われ続けてきたんだもん。それが、
ルエはルビーに出会えちゃったからね。」

私に紅茶などを置き、グランは今度は袋から、ルビーが大好きな魔法結石を
取り出して、ルビーにあげている。

「わーい♪グランありがとうー♪」

ルビーはグランの肩に乗り、嬉しそうに魔法結石を食べている。
グランはルビーが実は幻獣だと知っている数少ない理解者だ。
そして、私が今、リヴァイアサンを説得中なのも知っている。

「ルビー。いつもご苦労様。ルエの世話は大変だっただろう?」

グランは、ルビーを優しく撫でながら、そんな事を言っている。
全く、グランは同い年の癖に、私を子供扱いするのは、昔から変わっていない。
お節介と言うか、世話好きと言うか。こんな感じになったのは、
私の家族も悪いんだけど。

「あ、そういえば、ルエに魔法学院から連絡があったよ?」
「え?また?」
「学長のセレン様がルエに学長室に来いってさ。ルエ、まさか、
最近、全然学院には行ってないの?」
「うぅぅ・・・実は行ってない・・・」
「だからか・・・学長は、ちょっとお怒りみたいらしいよ?」
「いやーん!グランも一緒に来て!!」

私は、グランの話を聞いて、悲鳴を上げた。
私の家族は、有名な魔導士を数多く生み出した、名と実力のある
一族だ。
大国ロヴァールにある、世界で1つしかない魔法学院。
その現学長をしているのは、他でもない私の父である。
そして母は、ロヴァール国の王の魔法関係の問題があった時などの相談役。
こんな両親だから、私は小さい頃から、実の両親と家族らしい生活はしていない。
グランの両親が、私の育ての親だ。だからこそ、グランとは兄妹のみたいに育った。
グランの両親も、グランと同じように優しい人達で、私は大事に育ててもらった。
だから、私は悪い子にはならなかったはず。自分で言うのも変なんだけど。

「えーどうしようかなぁ・・・僕も一緒に行くと、僕まで一緒に怒られるからなぁ・・・」

グランは、意地悪そうな顔で、私を見る。全く、しょうがないわね。

「わかったわよ!一緒に行ってくれるんなら、グランが苦手な、
魔法鉱石学と魔法数式学の宿題を手伝ってあげるから!」
「えへへ。やったー!じゃあ、一緒に行くよ。」
「もう。そういうとこは昔から、ちゃっかりしてるんだから。」

私は、呆れた顔をしてグランを見た。グランと私は、魔法学院の生徒でもある。
歳も同い年だから、同じクラスなんだけど、私は魔法テストで、
卒業に必要なテストは全部合格しているので、はっきり言えば、
卒業まで学院に行く必要がなかったりもしていた。
けれど、父は、厳しい人だから、最低限の授業は出るように
言ってきたけど、私は今は、リヴァイアサンの説得の方が
興味があったので、最近、すっかり顔を出すのを忘れていた。

「じゃー急いで行こうよ、ルエ。じゃないと、もっと怒られちゃうよ?」
「そうね。学長もどこかの海蛇幻獣と同じで堅物だからね。」
「ふふ、ルエったら。そんなこと、絶対にリヴァイアサンに言っちゃ駄目だからね!」

ルビーは楽しそうに私の肩に乗り、可愛く忠告する。
ちなみに他の人には、ルビーは私が呼び出した使い魔のうさぎと言う事にしている。
長い耳に、体格はうさぎのような感じだからだ。
額にあるカーバンクルの証の赤い石は、普段は毛で隠している。
私達はドタバタ、騒がしく、魔法学院に急いだ。

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