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プロローグ

「ええい!いい加減にせぬか!人間の小娘が!!!」
「何よ!ちょっとくらい話を聞いてくれてもいいでしょ!」
「何故、余が愚かしい人間の、ましてや小娘の貴様の話など聞かねばならぬ!」
「何ですって?!図体がデカい癖に、心はなんて狭いのかしら!
これが、あの幻獣の中でも、高名なあのリヴァイアサンなの?!
疑いたくなるわね!」
「うぬぬ、余が貴様に手出し出来ぬとわかっての暴言か!
実に忌々しい人間の娘よ!」

私は、最近日課になっている、リヴァイアサンと、いつもの様に、
口論していた。
私の国、ロヴァールにある、大滝セシーヌの裏側には洞窟があるのだが、
そこにリヴァイアサンが棲んでいるのを知ったのは、数か月前のことだった。

「もう!リヴァイアサンも!ルエートも!喧嘩はやめてよ!!!」

私の肩に乗っている、私の大親友の幻獣カーバンクルのルビーが、
可愛い声で、私達の口喧嘩を止めようとする。
ルビーはこんなに可愛くて、物分かりがいい子なのに、何で、
有名な幻獣であるリヴァイアサンは、こんなにも頭が固いのか。
私は、リヴァイアサンと出会って、1か月近くになるが、
まだ、ちゃんと会話すら出来ていない。

「ふん。カーバンクルよ。何故、そなたは、そんな人間の味方などする?
余には全く理解が出来んな。騙されているなら、早く目を覚ますが良い。
そなたの身の安全の確保なら、余がしよう。」
「リヴァイアサン。いつも心配してくれて、ありがとう!
でもね、ルエートは、決して悪い子じゃないよ!ボクが幻獣で
あっても、大事にしてくれるし、ボクにとって親友なんだ!
だから、リヴァイアサン。ボクに免じて、お話聞いてあげて?」
「うむむ・・・しかしなぁ・・・」

ルビーは私の肩から、ぴょんと降りると、可愛い声と仕草で、
リヴァイアサンを説得してくれる。
しかし、そうであっても、リヴァイアサンは難しい顔をして、
説得には応じようとはしない。
ルビーがいなければ、正直、姿さえ現さないほどだから、
私とリヴァイアサンの関係は、マイナスもマイナスな状態での、
スタートだった。

「カーバンクルであるそなたの話なら、いくらでも喜んで聞こう。
だが、人間は駄目だ。話す価値などない。しかも、こんな生意気な存在だ。
ろくな事など話すまいよ。」
「むぅ・・・言いたい放題言ってくれちゃって・・・」

私は、リヴァイアサンのあんまりな言い様に、イライラする。
ちゃんと話もしないで、この決めつけようだ。
有名な幻獣ほど、人間が嫌いで、プライドが高いとは、
聞いてはいるけど、ここまでとは、私も思っていなかった。
私はきっと運が良かったのだ。最初に出会ったのが、
このルビーだったから。

「あのね!リヴァイアサン。彼女は、このロヴァール国の将来、
有望な大魔導士の子なんだよ!
でね!早く、人間同士の戦争を終わらせて、ボク達、幻獣と
仲良く暮らしたいって言ってくれてるの!
だから、リヴァイアサンの知識と力を貸して欲しいんだ!!」

ルビーは、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、リヴァイアサンに必死に訴える。
けれど、リヴァイアサンは皮肉な声で毎回、笑うだけだ。

「カーバンクル。そなたのその話はいつも聞いている。
もし、それが叶うのなら、実に素晴らしいことだ。我らの仲間も
大いに喜ぼうぞ?しかし、そんな事は、夢物語にすぎん。
人間の根本は醜悪な欲望。カーバンクル。お前は騙されているのだ。
余を捕えたい人間どもにな。」

リヴァイアサンは、カーバンクルを可哀想な子供を見る親のような顔で見ていた。
とにかく、リヴァイアサンの中では、私がルビーを騙しているとしか考えていない。
親友同士であるなど、絶対にないと決めつけている。

「もう、いい!ルビー帰ろう!」
「で、でも、ルエートいいの?」
「今日はもういいよ。ルビーにいつも悲しい思いをさせてまで、
私はこんな頑固な幻獣と話したくないし。」

私はルビーを優しく抱きしめて、リヴァイアサンを睨んだ。
リヴァイアサンも、私を冷たく見下している。

「それは奇遇だな。愚かなる人間よ。余もそう思うぞ。さっさと、
カーバンクルを開放し、余に関わって来ぬことを願うばかりぞ。」

リヴァイアサンは冷たい声で私にいつものセリフを吐いた。
こんなんで、人間と幻獣がいつか歩み寄れる日が来るのかしら。
私は深い溜息しか出てこない。
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