第4章「蠢く敵の影」

「二四。貴方には不愉快な話であるのは承知で話を続けますね。
その本は、前々から、貴方が今後成長していく上でも、
いつかは喰べられる事を想定されていた本です。」
「ふん。そんな馬鹿な。この本は、18から取り返すまでは、
2の所にあったんだぞ?」
「そうみたいですね。でも、そうであってもです。2冊目に奪われた状態であっても、
ある時期になったら、貴方の元に戻ってくるように仕掛けがされてました。」
「お前・・・さっきから、もう、いい加減にしろよ!!!」

二四はとうとうキレて、四四の胸倉を掴んだ。
けど、四四はキレた二四を怖がることもなく、しっかりと向き合っていた。
四四だって、自分の信念があって、二四に話をしているのだ。

「つい、昨日会ったばかりのお前なんかに、何がわかる!!
これは、唯一の私にとっては、13冊目との大事な形見なんだぞ!
それを、喰べろなんて、どの口が言ってるんだ!馬鹿にするな!」
「私は二四を馬鹿になんてしてません。それに、私自身の意見で、
その本を喰べろなんて言ってませんよ?その本に残った、
13冊目の気持ちが、貴方にそう強く訴えているんです。」
「くっ・・・こいつ・・・いい加減にしろと、さっきから言ってるだろうが!!!」

完全に激昂してしまった二四は、四四が女の本であることも、
すっかり忘れて、本気で殴ろうとしていた。
俺は、いけないと思い、咄嗟に体を動かし、四四を庇おうとした時に、
二四が持ってきた、13冊目の愛蔵本が、勝手に動いて、
光輝いたと思ったら四四を庇い、二四だけを弾き飛ばした。
吹き飛ばされた、二四は唖然とした顔で、13冊目の大事な形見の本を見ていた。
何が起きたのか、さっぱり理解出来ていない顔だった。

「女の子に手を上げようとするなんて、いつから、そんな最低な本に育っちゃったの?二四?」
「そ、そんな・・・一三(ひとみ)?本当に一三なの?」

二四は、突然、13冊目の形見の本から、13冊目の声が聞こえて、
過去の自分に戻り、少し幼い口調になってしまっていた。
俺も、この光景には、驚きが隠せなかった。トワもびっくりしている。

「44冊目・・・本当にごめんなさい。貴女は私に力を貸してくれて、
二四が怒り出すのをわかっていながらも、お話してくれたのに、
当の二四は、そんな貴女の気持ちも理解出来ないどころか、殴ろうとするなんて・・・
私は情けなくて、しょうがないわ。二四は、まだこんなにも子供だなんて、
これでは、今後の敵に対処するどころか、すぐに殺されてしまうわ。」

13冊目は、声だけであるが、二四のさっきの行動を悲しみ、憐れんでさえいた。

「ご、ごめんなさい。一三・・・僕は・・・僕は・・・」
「ううん、二四、私の話を聞いて?」
「え?あ、うん・・・」

さっきまで、あんなにキレていた本とは思えないほどに、まるで5歳児くらいに
でもなったかのような、二四は、13冊目の声に素直に従う。

「44冊目が話したくれた話は全て本当よ。私が彼女に言って、
二四に伝えて貰うように頼んだの。」
「でも・・・じゃあ、その本を喰べろって言うのも?」
「そうよ。」
「なんで?!僕は、喰べたくなんてないよ!13冊目の大事な形見の本なのに!!」

二四は悲痛な声で、13冊目の大事な形見の本に向かい叫んだ。
その光景は、とても痛々しいものだった。
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