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第1章「下巻の奴等」

俺と同種である本喰人の下巻クラスの連中は、正式には
30冊存在している「はず」である。
何故、「はず」と言うと、大体は上巻クラスに喰べられているのが多いからだ。
後は、大体が臆病者が多くて、本の姿でやり過ごしている者も多い。
どこかの外国の厳重な管理がされている図書館に隠れている奴などもいる。
だから、下巻クラスの奴から戦うとなると、そいつは余程の力を
手に入れた存在になる。
中巻、上巻クラスとも互角に戦えるだけの力をだ。
俺も下巻クラスの中で注意している存在が2冊だけいた。
24冊目と50冊目だ。
この2冊だけは、注意した方がいいと、仲間からも聞いている。
だから、気をつけていたはずだったのだが・・・

「ちょっと!気軽に私に話しかけて来ないで!!!」
「いいじゃん!君、めっちゃ可愛いんだもん♥
僕の彼女になってよ?」
「嫌よ!あんたみたいなチャラい本!私は大嫌い!!!」
「そんな、見た目で決めないでよー!ね?1回デートしない?」
「もう―やだ―助けてぇー!十二!!」

トワは、そう悲痛な声をあげながら、俺の背後に隠れた。
時間が時間なだけに、昼間の賑わう中で、あまり店頭で騒いで欲しくないのだが。
実際、こういうのも最近では珍しくない。
トワが店番をするようになって数か月になるが、トワは人間の男達にもモテるので、
こういう誘いは結構あるのだ。
人間の男相手なら、今のトワなら上手く対応出来る。
だが、今回ばかりは、相手が悪い。下巻クラスのあの噂がある、
50冊目が、トワに目を付けてしまったのだ。
俺は警戒しながらも、苦笑いをしつつも、50冊目と対峙した。

「俺の従妹にナンパとかやめて貰えませんかねぇ?50冊目?」

俺はそう言いながら、50冊目の男を見据えた。
外見はヨーロッパ圏に居そうな美少年に近い感じだ。
トワは、綺麗な金髪で明るい黄緑色の瞳だが、50冊目の男は、
少しオレンジの入った感じの金髪に、紫色の瞳をしていた。
一部の層には、大人気になりそうな感じはする外見だ。

「お前は12冊目か・・・その子はお前の何?」
「何と言われてな・・・」

俺は50冊目にそう言われ、困った。正直、今のこの会話だって、
他の人間に聞かれるのは、不味いのだ。
俺が困っているのを察して、トワは、俺に耳打ちする。

「場所が場所だし・・・2階に案内する?」
「うーん・・・」

俺はトワの提案に困ったが、周りの人間の視線も気になる。
俺が悩んいる間に、トワはさっさと50冊目に提案してしまう。

「貴方が大人しくするって言うなら、2階で、十二と一緒に
話を聞いてあげてもいいけど、どーする?」
「なら、大人しくするよ♪君と話が出来るならね♪」
「お、おい!」
「しょうがないでしょ!ここで騒ぎになったら、一番、困るのは、十二でしょ?」
「そうだが・・・」

俺は敵かもしれない、50冊目に家に上がられるのは、嫌であったが、
ここまで来たら、トワの提案に従うしかなかった。
トワ目当ての人間の男達も、こちらの話に興味深々だったからだ。
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