第3章「混濁するモノたち」

「貴方は誰ですか?どうして、そんなに憎むのですか?」

四四は、「禁断の本」に向かい、静かに声を掛けた。
「禁断の本」は、少し沈黙した後に、また喋り出す。

「妾は、平安時代に書かれた、ある貴族の恋愛の話を納めた、
この本をこよなく愛する者よ。
長い時間をある場所で大事にされておった、この本とずっと一緒に居た・・・」
「そうだったのですね。」

四四は、「禁断の本」に宿った、女の霊とゆっくりと対話している。
相手を変に刺激しないように。

「だが、ある日、妾は突然、こんな場所に追いやられたのじゃ。
あれだけの長い時を共にしたのに・・・何故じゃ・・・憎い・・・憎い・・・」

「禁断の本」に宿った女の霊は、自分の身の上を簡単に語った後で、
また禍々しい雰囲気を出し、恨めしそうに四四を見た。
四四は、自分は敵ではないと分からせる為に、堂々とし、その女の霊と対話する。

「私なら、貴女がどうして、こんな事態になったのか、わかるかもしれません。
でも、それにはまず貴女が、私を信じてくれるかどうかです。」
「妾がそちを信じろと?」
「はい。そうして貰えれば、全力で私も貴女に協力します。」
「もし、拒んだら、どうする?」

女の霊は四四の言葉を試すように、質問する。
四四は静かに溜息をついて、返事をした。

「その場合は、非常に残念ですが、私の力で静かに眠って頂くだけです。
貴女にとっては、何も原因も解決しないままになってしまうでしょうけど、
でも、私ほどに貴女に協力出来る存在も今後現れないと思いますよ?」

四四は、無表情で女の霊を諭した。四四は、嘘は言ってない。
俺も、四四の言う通りだと思う。ただの人間では、四四のような能力はないのだから、
この女の霊に起きた事を、正確には解決など出来ないだろう。

「そちは、変わった人間の様じゃ・・・いや、人間にしては、
大分、変わった者のようじゃ。」

女の霊は、禍々しい雰囲気を鎮めて、四四を不思議そうに見ていた。
四四は、薄っすらと微笑み、女の霊に答える。

「私達は、本喰人と言う、少し人間とは違った存在なんです。
でも、人の気持ちを理解すると言う事では、人間と全く同じです。
だから、どうか信じて下さいませんか?絶対に悪いようにしませんから。」
「うむ・・・よかろう。妾はそちの言葉を信じてみよう。
で?妾は、どうすれば良いのじゃ?」
「まずは、もう一度、詳しく、どこにおられたのか、教えて
頂けませんか?覚えている限りでいいので。」

四四は、やっと本格的な仕事に入ることになり、少し安心したような顔をしていた。
トワも、女の霊が落ち着きを取り戻したことに安堵している。
俺も、静かに四四の仕事ぶりを見せて貰う事にした。
この経験は今後にも役に立ちことは間違いないだろうからな。
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