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第3章「混濁するモノたち」

「で、では!お願いしますね!!!」

寺の住職は、俺達に例の「禁断の本」がある部屋に案内すると、脱兎の如く消えた。
かなり、色々と怖い思いをしたのが窺える。
けど、そんな状態でも、四四が来るまで、よく捨てないでいたものだ。
俺は少し心配になり、四四の様子を見ていたが、四四に至っては、
若干嬉しそうな顔をしているように見え、俺は、四四の方が
怖い存在に感じてしまった。

「では、私は準備しますね。十二も、一応は出来ることはしておいて下さい。」
「わかった。四四には、劣るけど、俺もやれることはしよう。」

俺は、自分とトワに清めの塩をふりかけ、四四から紙と筆を借り、
悪霊除けの札を作り、自分とトワで持った。

「トワ。何が有っても、動揺して、絶対に取り乱したりするなよ?
それから、四四の側から絶対に離れたら駄目だ。いいな?」
「うん・・・でも、そんなに凄い事が起きるの?」

トワも、顔を青ざめさせて、俺に聞いてきた。トワからすれば、
初めての「禁断の本」の対応の仕方を見るわけだから、
不安に思って、恐怖を感じてもおかしくはない。
今回は、ちょっと特殊な例でもあるんだが。

「どういう事になるかは、四四が対応してみないとわからない。
だけど、俺達は大人しく四四を見守っていればいい。
なに四四なら、大丈夫さ。太古の陰陽道にも通じてる本だからな。」

俺は、トワにそう言い聞かせた。四四は、陰陽道に関わる本の
多数の知識を能力として持っている。
だから、祓い師みたいなことが出来ると言っていい。
霊とか信じない人間からすれば、何を馬鹿な事を言ってるんだと
思うかもしれないが、
それでも、助かってる人が実在するのも本当だ。
俺は、そういう、霊が存在するかしないかの議論をするつもりはないが。
けど、俺達の存在だって、人間からすれば、摩訶不思議な存在ではあるとは思うけどな。

「じゃあ、そろそろ、「禁断の本」の様子を見てみますけど、
十二、トワちゃん、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「はい!だ、大丈夫です!」

俺とトワは、四四に仕事開始の合図を聞かれ、大丈夫だと、それぞれに答えた。
四四は、1枚の札を人差し指と中指で挟み、顔の前に持ってくると、
何やらお経のような言葉を発する。
数分後、「禁断の本」が、勝手にガタガタと動き出した。
それから、急に何かを喋り出す。

「憎い・・・憎い・・・何故・・・どうして・・・?」

「禁断の本」の声は低い女のような声だった。
どうやら、何かを相当に憎んでいるみたいだな。
俺は「禁断の本」が出す、強い怨念を感じ、身体がピリピリとさえしてくる気がした。
その光景を見た、トワは恐怖から息を飲んだ。
普通の人間であれば、腰を抜かしていたかもしれない。
霊を全く信じていない人間でも、この雰囲気なら、
少しは信じるのではないかと、俺は思ったくらいだった。
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