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プロローグ

俺は2階から3階に辿り着き、慎重にドアを開いた。
この元雑居ビルはそんなに大きなビルでなく、階ごとには2,3の部屋しか存在しない。
なのでエレベーターはなく、移動は階段だ。
3階は2部屋しないので、その内の1つの貴重な本が多めの部屋を、
先に確かめることにした。
静かにドアを開ける。が、そこに人とか何かの気配を感じることはない。

「ここではないか・・・じゃ、次の部屋か?」

俺は、もう1つの部屋も確認をしたが、やっぱり何もない。
人間なら、流石に隠れてやり過ごせるような物などはないので、すぐにわかる。
かと言って、同種なら同種で、本に化けて俺の目を誤魔化そうとしても無駄だ。
俺は、自分の餌として管理している本は全部ちゃんと覚えている。
見たことがない本などあれば、1発で見抜けるのだ。

「おかしいなぁ・・・物音がした気がしたが・・・」

そう言った時に、また物音がした。今度こそ、3階からだとわかる。
しかも、さっき確認したばかりの、最初の部屋からだ。

「おいおい、冗談だろ・・・?今さっき確認したのに・・・」

俺は少し動揺した。人間や同種の気配はしなかったはずなのに。
もし、それを見過ごしていたと言うのなら、どっちにしろ、
最悪な相手かもしれない。
人間なら、それなりの魔術師系かもしれないし、同種なら、
自分よりも上の上巻クラスの奴かだ。

「勘弁してくれよな。俺はまだ、この日本で喰べたい本は沢山あるんだ。
今日で大騒ぎして、ここを離れなきゃならない事態だけには、
ならないでくれよ・・・」

俺はそう言いながら、最悪な事態だけは、どうにかならないでくれと願いながら、
再度、最初に入った部屋を確認する。
すると、そこには、小さい子供が居て、俺を見るなりに嬉しそうに駆け寄って来た。

「パパ!!」

人間の幼女の見た目で、フランス人形のように可愛らしい、
その子供は俺にしがみついて甘える。
まさか、あの女の買い取った本から、こんな副産物も得ようとは、
俺は考えていなかった。

「俺はお前のパパじゃない。お前・・・特殊小冊子だな?」

俺は、その子供にそう言ったが、言われた子供は、何の事か理解していないようで、
不思議そうに顔を横に曲げて、俺を見ていた。
純真無垢と言っていいだろう。この子供は、まさに今、生まれたのだ。この場所で。

「はぁ・・・こんな時に勘弁してくれよ。同種との戦いじゃないだけいいけど・・・
子守りもする気ねぇーぞ・・・」

俺は困った顔をしたままで、その子供を見るが、子供は嬉しそうにしたままで、
俺から離れない。いや、今は生まれたばかりだから、邪険に扱えば、
敵と見なすかもしれない。俺はその事態だけは避けたかった。

「しょうがねぇな・・・出逢ってしまったからには、俺にも責任があるしな・・・」

俺は、腹を括って、その子供と向き合うことにした。
生まれたばかりの眷属の世話をするのも、俺達の役目ではある。
俺は、足にしがみついて甘える子供に、話しかけ、2階の住居に戻ることにした。

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