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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「もしもーし?ちょっと私の話聞いてる?十?」
「え?あ、ああ・・・聞いてるよ、サキ。」
「本当かなぁ?いつもよりぼけーっとしてたみたいだけど?」

自分はサキにそう言われながら、最後はサキに大丈夫?と心配されていた。
あの後、1冊目との話し合いが終わり、自分はサキと東京駅で待ち合わせし、
合流してから、夕食を済ませて今日泊るホテルに居た。

「先に東京に来て、色々してたみたいだけど、何かあったの?」
「うん?いや特に何もないよ。ちょっと疲れただけだよ。」
「そう?ならいいんだけど。最近の十は、何か不安になるのよね。」
「不安に?自分が?」
「うん。何がとは言えないんだけどさ。
もしかして本喰人同士で何かあったりしてるの?」
「い、いや・・・別に・・・」
「ふーん・・・」

サキはじーっと自分の顔を見てきて、明らかに疑っている態度をしてくる。
こうなると変に言い訳しても、勘の良いサキはますます疑うだけだろう。
自分はそんなサキに観念して、話しても大丈夫そうなところだけ話した。

「そうだったんだ。だから祖父の所有してた物を見てみたかったのね。」
「うん。もしかしたらサキの祖父の持っていた記録類が、
今後の自分達にとって、凄い助けになるかもしれないからね。」
「もしそうなるなら、きっとおじいちゃんも喜ぶと思うわ。
小さい頃からおじいちゃんは私に言ってたから・・・
困った本喰人に出会うことがあったら、助けてやって欲しいってさ。」

サキは会話しながら、自分の側に寄ってくると身体を自分にくっつけてきた。
サキに甘えられて、ドキッとする反面、同時に安心した気持ちになる。
サキに出会うまで、自分は事情が事情だったので、孤独に近い日々を送っていた。
恋人が作れる日が来るなんて、正直考えてもいなかった。
それがたとえ人間だったとしてもだ。

「自分はサキに救って貰ったってわけだね。」

自分はサキの手を取って優しく握った。
サキは顔を少し赤くして、自分を見つめてきて、小声で「ばか」
と言って照れた。

「私だって十には助けて貰ってるよ?
十が居たから、大阪に自分のお店持つのも出来たしさ。」
「あれはサキの努力があったからこそだよ。自分は少し手伝いしたくらいさ。」
「そんなことないよ。十が陰からずっと支えてくれたからだよ。
早く十に出会えてれば良かったなぁ・・・
そしたら、十をおじいちゃんに紹介出来たのに。
きっとおじいちゃんも十を見たら大喜びしたと思うよ?」
「はは。でもいくらサキの祖父とは言っても、
自分の正体は明かせたかどうかはわからないけどね。」
「うふふ。十はわかってないなぁー?」
「え?」
「おじいちゃんなら、十が本喰人だって、わざわざ言わなくても、
すぐにわかったと思うよ。」

サキは悪戯っ子みたいな笑顔で自分にそう断言した。
祖父なら自分の正体をすぐに見破っただろうと。
サキの祖父も、勘が良い人だったらしい。




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