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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「1冊目・・・ちょっと思ったことがあるんですが、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」

あれから自分は1冊目と色々な事態に備えて相談していた。
真面目になった1冊目は、普段と違い的確に自分に指示をくれていて、
その姿は実に頼りがいのある存在そのものだ。
だけど、1冊目は全ての本喰人の長にはなろうとはしない。
1冊目がその気になれば、多少の反発があろうとも、1冊目を本喰人達のリーダーとして、
全員をまとめることも不可能ではないはずなのだ。
今は2冊目の様に反発する存在が居たとしても、
最悪の場合は2冊目を本の姿にして監視したって誰も文句も言わないだろう。
誰だって2冊目に殺されることを望む者はいないはずだ。
あの8冊目を除いてだが。

「正直な話、1冊目は2冊目の計画をどこまで知ってるんですか?」
「あいつの計画をか?」
「はい。1冊目は実は全容を知ってるんじゃないんですか?」
「・・・・・・・」

自分の言葉に1冊目は黙る。そして自分は悟ることが出来た。
1冊目は2冊目の計画の全てを知っていると。

「お前も・・・ここまで成長したんだな。」
「自分も伊達に長生きはしてないですよ。1冊目。」
「そうだな。お前だって、そろそろ正確に知るべき時かもしれないな。
2冊目の計画を・・・」

1冊目は両手を組み、何かに決意した顔になって自分に話を始める。

「2冊目が幻の0冊目を呼び出そうとしているのは知ってるな?」
「ええ。知ってます。だけど、その0冊目を呼び出したとして、
次に何をするつもりなんですか?」
「2冊目の真の目的は、0冊目の力を使って、ソロモニア一族の初代を蘇らせることだ。」
「え?初代を?」

意外すぎる答えに自分は拍子抜けしてしまった。
あの2冊目が過去に暴虐非道な限りを繰り返していたのは、
ソロモニア一族の初代を蘇らせる為だったと言うのか?
にわかには信じられないが・・・なんか腑に落ちない答えだ。

「2冊目は何でそんなにまでして初代を蘇らせようとするんですか?」
「それは2冊目にとっては、初代こそが自身の生き甲斐であり、
初代が蘇れば、ソロモニア一族の再興だって余裕になると考えているからだ。」
「そんなにまで初代に思い入れが?あの2冊目が?」
「信じられないかもしれないがな。」
「そりゃ・・・信じられないですよ。だって今までの2冊目の行動を見ていたら・・・」

ソロモニア一族の再興を願っているようには何故か見えなかった。
1冊目から聞いた話では、2冊目にとって不要だと思えば、
ソロモニア一族の子孫だって容赦なく殺してきたはずだ。
それは初代さえ無事に蘇れば、子孫などいなくてもいいからなのか?
にしては、余りにも残酷ではないだろうか?
初代は自分が蘇るために多くの子孫や生み出してきた本喰人を、
2冊目達に殺害されて、どんな気持ちになるだろう。
そこまでされて蘇って嬉しいなんて気持ちには、
あの初代だってならないはずだ。
初代の為とは言え、やっぱり2冊目の我が儘な願いだと思う。

「2冊目は自分だけで初代を蘇らせるつもりなんですか?」
「そのつもりらしいな。」
「だから他の本喰人を殺してきたんですか?」
「過去に一部の仲間だと認めたもの以外はな。」
「なら最後にはその仲間だと認めたものも殺す予定だったと?」
「それは俺にもわからない。
過去に4冊達がどういう条件で同盟を結んだのかは知らないからな。」

1冊目は無表情な顔でそう答えた。
1冊目からしても、複雑な気持ちになる話なんだろうなと自分は感じた。

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