このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「ところで1冊目は、何でこの場所に自分を招いたんですか?」

自分は次に聞いておきたいことを1冊目に聞いてみた。
1冊目は薄っすらと笑うと自分の表情を見てくる。
やっぱりただゆっくり会話したいから、ここに連れてきたわけでもないようだ。

「今日のお前は勘が良いようだな。」
「どういう意味ですか?」
「深い意味はない。俺がそう思っただけさ。」
「1冊目・・・はぐらかさないでちゃんと答えて下さい。」
「そう怒るな。お前をこの部屋に連れてきたのは、
今後の為にお前にこの部屋を譲ってやる為さ。」
「え?1冊目が自分にこの部屋をですか?」
「そうとも。今後はお前の好きに使っていい。」
「いきなりそんな事を言われましても・・・」

自分は1冊目の突然の言葉に戸惑った。
長い間1冊目の元に居て、様々な経験をしてきたつもりだが、
こうして部屋を与えて貰ったのは初めてのことだった。

「やっぱり突然ある日に返せとか言われても無理ですよ?」
「あはは。そんな意地悪なことをしないよ。好きに使え。
いざと言う時は、お前の彼女をここで匿うのにも役に立つはずだ。」
「自分の彼女の事まで考えてくれていたんですか?」
「当たり前だろう?2冊目が過去に12冊目を可愛がっているように、
俺からしたら、俺なりにお前を大事にしてきたつもりだよ。」
「急にそんな事を言う1冊目に、違和感しか感じませんが・・・」

あんなにいつもは自由奔放で、他人の事など気遣う様子もなかった1冊目が、
今日に限っては信じられないくらいに優しい。
自分は一瞬この目の前にいる1冊目は偽者なのではないかと、疑いたくなりそうだった。
2冊目が本格的に動き出したことが、普段の1冊目を冷静でいさせなくしているのだろうか?
自分が訝しんだ顔で1冊目を見ていると、
1冊目はそれに気づき苦笑いをする。

「出来る限りの保険はかけておきたいってところさ。
だから変に俺を疑うな。な?」
「ま・・・そう言うのなら、有難くこの部屋は使わせて貰いますけど。」
「状況が状況なら、トリアをここに匿って貰うこともあるかもしれないからな。」
「そんな深刻な状況にまでならないようにしたいとこですけどね。」
「それは俺だってお前と同じ思いだ。」

いつもの飄々とした態度と違い、最後にそう言った1冊目の顔は久しぶりに真面目な顔だった。
逆にそんな真面目な1冊目の顔に自分は大きな不安を感じた。
これから先、一体何が起きるのか。
2冊目はどんなことを仕掛けてくるのか。
自分も出来る限りのことは、1冊目と相談してやっておかなければならないだろう。

73/80ページ
スキ