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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「こいつが俺様の周りを嗅ぎ回っていた奴だ。」

親父はそう言うと数枚の写真を俺に渡してきた。
そこには1人の男らしい人物の姿が色々な角度で写ってはいたが、
顔が正確にわかるものはなかった。
まるで狙ったかのように顔だけが隠れている。
服装だけは今時の若者が着そうな現代人風ではあった。
もしかすると外見は俺と近い年代の姿かもしれない。

「こいつが俺のターゲットってわけですか・・・」
「そうなるな。試しに俺様の人間の部下に写真を撮らせては見たが、
そこまでが限界だった。」
「なんか釈然としませんね。まるでこちらを挑発するかのように、
こんな風にわざと自分の姿を撮らせた気がしますが・・・」
「ほう?よくわかったじゃないかハーフ。」

親父に渡された写真の感想を俺が言うと、親父は嬉しそうにニヤリと笑う。

「こいつはなぁー俺様を挑発してやがんだよ。
こいつ相手に人間なんぞいくら使って無駄だとでも言わんばかりだろ?」
「親父に喧嘩売るなんて・・・こいつは賢くありませんね。
しかもアメリカは親父の庭なのに、それをわかって、こんな行動しているのなら。」
「お?随分と嬉しい事言うじゃねぇーか。ハーフのクセに。」
「俺は自分の思ったことを素直に言っただけです。」
「ふーん?ま、いい。だからこそ、お前の出番なわけだ。」
「親父の裏組織の人間達では役に立たないのなら、俺が行くしかないですね。
相手も男っぽいですし。」
「だろ?こんな仕事は俺様の愛しの娘達にはさせたくないしな。」
「でしょうね。」

俺は親父の言い分を聞いて、最後はそこなんだろうなと思った。
親父の最大の心配は、その愛しい娘達が敵の男の毒牙にかかることなんだろうな。
まーあいつらが敵の男に惚れたりなんかしないとは思うし、
いらぬ心配な気も俺はするが、親父はそう思わないんだろう。
心配になりそうなことは極力避けるのが親父だし。

「俺様からの話はこんなとこだ。じゃあアテネを呼んできてくれ。帰るわ。」
「わかりました。」
「手段は選ばないから、早く、そいつを捕まえてこい。」
「確認しておきたいんですが、最悪の場合、戦いが激化して生きたまま、
そいつを親父の前に連れてくるのが無理な場合はどうしたらいいんですか?」
「なら本の姿のままでもいいから、俺様の前に持ってこい。
会話出来る状態で会いたいとこが、2冊目の所為で今の状況がよくないからな。仕方がない。」
「承知しました。」
「お前の普段の仕事の方はアテネがうまい具合に調整してくれるだろう。
報告もしっかりするようにな。俺様が心配せずともアテネがしっかりやるだろうがな。」

親父はそう言うと不敵に笑いつつも、俺を解放してくれた。
しかし困った事態になったもんだ。
一体誰が動き出したんだ?
2冊目側が早く仲間になるように親父を煽っているのか?
それとも1,3冊目側が親父がどう出るか様子を監察しに?
でなければ、ジェシーが接触してしまった日本にいる本喰人の関わりか?
俺は色々と考えてみたが答えは出そうになかった。
まずは例の写真の男にどうにか会うしかないだろうな。
俺は悩みながらも、家に戻り、親父の言われた通りに、
アテネにモリヤ教授から回収した物を渡し、親父とアテネは帰っていった。
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