親父の滞在時間は短いものだった。３０分も居なかっただろう。
ただ親父からも今後は気軽に本喰人の話題を出してはいけないと、
ジェシーは注意されていた。
流石にジェシーも親父からまで注意されて、自分のやらかした事の重大性を感じたようだ。
真面目に申し訳なさそうな顔で何度も親父に頭を下げていた程だからな。
俺よりも親父から言われた方が身に染みるだろう。

「ジェシーちゃんに何かあったら、ジェシーちゃんの両親に会わせる顔がないからな。
俺は大事な約束は必ず守る男なんだ。
だからその約束をこれからも守る為にも頼むよ？ジェシーちゃん。」
「わかりました。私もジョーおじさんにはお世話になってる身です。
今後はその話をする時はハーフかアテネお姉ちゃんに相談してからにします。」
「うん、そうしてくれ。ハーフが頼りにならないなら、直接俺でいいからな？♪」
「ふふ、はい。」

親父が最後にいつもの陽気な親父に戻り、冗談を言うのでジェシーも普段に戻り笑顔になる。
ここまで親父がした以上、今後ジェシーが同じようなことを繰り返したら、
次こそ俺の方が責任と取らされて消されるかもしれない。
これからは今以上に気を引き締めなければいけないな。
俺よりもジェシーの方が親父からしたら存在価値が高いのだから。

「ああ、そうだ。ハーフを借りたいんだけど、ジェシーちゃんいいかな？」
「はい。私は特に今はハーフと用事ないですから大丈夫ですよ。」
「OK。じゃアテネはまだジェシーちゃんと一緒に居てやってくれ、
俺はハーフと車の中で話してくる。男同士の話だ。」
「はい、わかりました。」
「よし、ハーフ行くぞ。」
「はい・・・」

俺は親父に引き連れられ、親父の愛車のメルセデスなんちゃらとか言う、
物凄く高級な車の中で話すことになった。
ただでさえ気まずい感じがするのに、さらに車内と言う密閉空間で親父と話さなきゃいけないなんて、
俺は寒気が止まらない感じがした。

「さてと今からお前に重要な任務を与える。失敗したらお前は俺様の部下としてはクビだ。」
「そこまで言う程、重要な任務なんですか？」
「重要に決まってんだろ？俺様の周りを嗅ぎまわる、敵の本喰人かその眷属と戦ってきて貰うんだからな？」
「？！」

俺は親父の爆弾発言に目を丸くした。
敵の本喰人かその眷属だと？とうとう誰かが動き出したのか？
しかし俺はアテネから何もそれらしい話を聞いていなかったので、
ただただ驚くしかなかった。

「本当に敵なんですか？」
「はっきり言えば、まだわからん。だが、だからといって何もしないで見過ごすのも出来ないからな。
でだ、お前にそのうざい奴を捕まえて、俺様の目の前に連れてきて欲しいわけだ。」
「なるほど。だからこそ戦う事になるだろうって訳ですか・・・」
「だな。穏便に話す気はないようだからな、相手がな。」
「みたいですね。話だけなら、親父の周りを無駄にうろつく必要がないですからね。」
「そういう訳だ。出来るな？」
「自信はありませんが、やるしかないでしょう。」

俺は覚悟を決めて親父の任務を受けることになった。
相手が親父の監視程度で済んでるうちにこちらからも手を打つ必要があるのは最もなことだ。
何もしないでいれば、いずれはジェシーさえ危険に巻き込まれるだろう。
その危険性もあるかもしれないから、親父はジェシーの身の回りも自分で確認したのか。
こんな話は確かにジェシーの前では出来るわけないよな。