このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「ただいまーってジェシーはまだ帰ってないか・・・」

俺はひとまず先に家に帰ってきていた。
モリヤ教授から報酬として受け取った手書きの論文を親父に渡す用事もあったのだが、
それもよりも先にナタリーから買い取った本をジェシーに渡した方がいいかな?と考えたのだ。
お礼に渡す品物だから、汚れるのも困ると思ってのことだ。
しかしジェシーはまだ大学から帰ってきていない。

「うーん・・・どうするかな。先に親父のとこに行くか・・・」

俺はナタリーから買い取った本をリビングのテーブルに置き、
親父の所に向かおうとした瞬間だった。
外から聞きなれた車のエンジン音がし、その後でワイワイと楽しそうに会話する
ジェシーの声と数名の声が響いてきた。

「もう!ジョーおじさんってば!いつもそれなんだから!
私はまだ彼氏なんかいらないもん♪アハハ♪」
「そうなのか?勿体ないなぁージェシーちゃんならモテモテだろ?
ジェシーちゃんの周りにはろくな野郎がいないな!!
だけど、もし付き合うことになったら俺に教えるんだぞ?
ちゃんとジェシーちゃんに相応しいかどうか俺が見てやるからな!」
「はいはい♪ジョーおじさんいつも心配してくれてありがとう♪」

そう言いながら、ジェシーは玄関のドアを開けて、俺と目があった。

「あれ?ハーフ先に帰ってたの?」
「ああ。仕事が早く終わったからな・・・もしかして親父に送って貰ったのか?」
「うん♪丁度私が大学終わったら、ジョーおじさんがこっちに用事があって、
私と久しぶりに話がしたかったんだって♪それからハーフにも話があるってさ。」
「お、俺にもか?」
「うん。アテネお姉ちゃんも言ってたよ?」
「ぐぅ・・・マジか・・・」

俺は背筋に冷たいモノを感じながら、ジェシーの言葉を聞いた。
ジェシーが家に上がると、親父とアテネも一緒に家に上がった。

「例の物は回収したんだろうな?」
「はい。無事に回収してあります。」
「後で俺様が帰る時でいいから、アテネにそれを渡せ。いいな?」
「了解しました。」

親父はジェシーには聞こえないように俺の側に寄ると低い声でそう指示してきた。
さっきまでジェシーと楽しそうに話していた人物と同じとは思えない程の雰囲気を
俺だけに感じさせる。

「どうして急にこっちに来たんですか?」

俺はジェシーが俺達の会話に気づかないように注意しながら、親父に質問してみた。
すると親父はジェシーに向かって笑顔になりながらも、俺には低い声のままで答えた。

「例の日本に居る本喰人とネット上とは言え、接触したと聞いたからな。
アテネの報告はもろもろ聞いたが、一応俺様もジェシーちゃんの周りで異変がないか、
直に確認しに来たんだよ。
とりあえず大学の方もこの自宅も異変はなさそうだな。」
「そうですか。なら良かったです。」

親父の話を聞いて俺は安堵した。
上巻クラスの本喰人である親父が確認した上でそう言うのなら間違いはないだろう。
やはり2冊目が動き出したことで、親父も慎重になったに違いない。
俺が回収した食事が楽しみなのもあるのはあるだろうが。
50/80ページ
スキ