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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

15冊目達の活躍により、リィベルの母親の病気は完治せずとも、
かなり良くなったらしい。
それから16冊目が多少のお金を稼いだりして、リィベルは身売りをしなくてもよくなった。
それからは15冊目達は、リィベル達と平穏に慎ましく暮らしていたと言う。

「一緒に暮らしていたんだよな?どんなに隠しても、いつかはバレたんじゃないのか?
お前達が本喰人で、普通の人間じゃないって・・・」
「はい。リィベル達家族にはすぐにバレました。
けど、リィベル達はそれでも俺達を受け入れてくれました。」
「町の人間に疑われそうになった時は、うまく誤魔化して庇ったりもしてくれたよね。」
「へぇ。そのリィベルって彼女も、その家族も本当にいい人間達だったんだな。」

俺はそんな人間がいたと言う事に正直驚いた。
15冊目達も運よくそういう人間達に出会えたことに感謝していた。

「彼女が拾ってくれたおかげで、俺達は安全な暮らしを手に入れ、
自分達のことも最低限調べられることも出来たんです。」
「で、後は省くけど、今のリィベルのことも僕達が保護して助けてるってわけ。」
「なるほどな。詳しく教えてくれてありがとうな。」
「いいえ。12冊目には貸しがありますからね。」
「へ?貸しか?」
「そうだよ。僕達が2冊目側に行かないようにしてくれたでしょ?」
「あ、あれはだな。そのお互い様と言うか・・・」

俺は最初にこいつらと出会った時を思い出して、しどろもどろになってしまった。
貸しと言われても、俺としては複雑だ。
お互いに上巻クラスに仕組まれて戦わされた、被害者同士みたいなものなのだから。
しかし15冊目は真面目な顔で言う。

「いえ、事情が事情とは言え、12冊目には貸しがあります。
あの時12冊目は俺達を見捨てたって良かったんですから。」
「だよね。僕達は敵対させられてたんだから、
12冊目に共喰いされたって文句言えない立場だったわけだし。」
「おいおい。そんなに深刻にならなくてもいいじゃないか?
俺達はむしろ被害者同士だろ?そんな水臭いのは勘弁してくれ。
俺はお前達に貸しだなんて、全然思ってないぞ?」

俺がそう言うと、驚いた15冊目と16冊目は顔を見合わせ、
そして笑い出した。

「トワちゃんの言った通りだったね。ベリー。」
「そうだな、ダイス。トワちゃんも言ってたもんな。
貸しが出来たと言っても、12冊目は聞かないだろうって。」
「え?トワの奴がそんなことを?」
「うん。昨日遊んだ時に色々ね。」
「あいつ・・・人がいないとこで何を・・・」

俺はトワが余計なことをあれこれと、こいつらに吹き込んでいないか、急に不安にさせられた。
いざと言う時の為にまだ俺が許可するまでは、事細かにこいつらにこちらの事情は、
話して欲しくなかったんだがな。

「トワちゃんの話を聞いて、僕も日本に行きたくなったよ。」
「はぁ?日本にか?」
「はい。トワちゃんは日本での12冊目との暮らしを楽しそうに話してましたよ。」
「日本での暮らしをか?」
「はい。日本にある古本街とか、遊園地とかですかね。
俺もその話を聞いて、今度リィベルも連れて、観光してみたいと思いました。」
「その際にはトワちゃんにお世話になるかもしれないんで、
12冊目よろしくお願いしとくね!」
「あ、ああ。」

どうやら俺が心配せずとも、トワは話して大丈夫そうな範囲で、
昨日こいつらと会話してたみたいだな。
流石にトワも二四達のことまでは詳しく話してないようだ。
俺は少しだけ安堵しながらも、昼食が出来るまで15冊目達と、
引き続き雑談しながら待った。

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