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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「ねぇ!十二!!しっかりしてよ!!十二!!!」
「え?あ・・・俺・・・?」
「もう!どうしちゃったの?急に箒を落としたと思ったら、
顔が真っ青になって、黙ったままで、トワの声にも返事しなくなっちゃうし!」
「ご、ごめんな。なんか急に記憶が蘇ってきて・・・」
「そう・・・だったの?でも大丈夫?まだ顔が真っ青だよ?」

俺はトワの怒声で現実に戻ってくることが出来た。
トワは心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでくるが、俺の方は特に気分が悪いとかは無かった。

「もう掃除はやめて、十二は自分の部屋で休んでなよ?」
「いや俺は大丈夫だ。」
「大丈夫って言われても、十二はまだ顔色が悪いよ?
無理しない方がいいよ。だって今日も午後からトリア先生と
お話するんでしょ?それが出来なくなったら十二も困るでしょ?」
「まぁ・・・顔色が悪かったら、トリア先生も心配して、
話し合いがなくなるかもな。」
「そうなったら、十二がトリア先生のとこに来た意味が無くなっちゃうじゃん!
だから私が掃除しておくから、十二は大人しく休んでて!」
「悪いな・・・トワ。いつもありがとうな。」
「い、いいから!そんなお礼なんて・・・」

素直に感謝する俺に、トワは照れながらも怒った顔をする。
なんで怒るんだ?素直に感謝したのに。

「トワの言葉に甘えて、少し横になってくる。」
「うん、そうして。その方がトワも安心するから。
それに掃除も後少しで、終わりそうだから大丈夫だよ。」
「わかった。トワも無理はするなよ?トリア先生は厳しい人じゃないからな。」
「知ってるよ!あ!でも、もし怒られたら、十二がサボったからだって言うから!」
「おいおい。勘弁してくれよ。トワがそんな風に言ったら、俺があの苦いハーブ類の紙を、
お仕置きでトリア先生から食べさせられるだろうが!」
「ふふ、はいはい!嘘だから♪さっさと寝てきて!」

トワは最後に俺をからかってから見送った。
具合が悪そうと心配した癖に、本当に気分が悪くなりそうな
冗談を言うのはやめて欲しいもんだ。
俺はそう愚痴りそうになるのを抑えて、自分の借りてる部屋に戻った。

「?!!!」

俺は部屋に入って違和感を覚えた。敵か?と一瞬身構えたが、
誰かの気配はしない。
この違和感はなんだ?と部屋の中を確認すると、あり得ないことが起きていた。

「どうして・・・これがここに・・・」

それはあの記憶の中で思い出していた世界紀行の12巻だった。
その本が何故だか俺の寝ているベッドの上にあったのだ。

「馬鹿な・・・ついさっきまで、遊戯室の本棚の中に綺麗に並んであったよな?
それが何でここにあるんだ?」

敵の罠か?俺はそう考えた。
だが、その12巻からは悪いものを感じることない。
むしろ俺はその12巻をどうしても読まなくてはいけないと言う、
使命感に近いものを感じさせられていた。
どうして俺は今物凄く、この12巻が読みたいと思うのだ?
やっぱりこれは誰かの罠なのか?
俺は罠かもしれないと警戒しているのに、その12巻を手に取り、
躊躇なく開いてみてしまった。
開いたページの先には古びた1通の手紙が挟まっていた。

「て、手紙?」

俺はその手紙を手に取り、確認して心臓が止まりそうになった。
その手紙は過去の36冊目が俺に宛てて書いた手紙だったのだ。

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