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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「もう怒鳴らないって約束する?」
「する。絶対にしない。」
「ジェシーのことも馬鹿にしない?」
「しない。さっきのことは悪かったと思ってる。」
「・・・・・」
「・・・・・」

俺達は気まずい雰囲気の中で、日々使うテーブルに向かい合って座った。
ジェシーはなんとか泣き止んで部屋から出て来てくれた。
そして、どうして日本にいる本喰人かもしれない存在と
情報のやりとりをすることになったのか話が聞ける状態になり、
俺もホッとした。

「私が好きな配信者の1人がね。珍しい話を求めてたの。本に関する不思議な話はないかって。」
「へぇ・・・そんなやつがいたのか。」
「うん。それでね、本が人の姿になったりとか、
そんな感じの話を知ってる人はいるかって聞いてきたから、
私はつい本喰人のさらっと教えちゃったの。」
「お前な・・・」
「ごめんなさい。それは私が悪かったと思ってる。
ハーフからも、アテネお姉ちゃんからも気軽に話しちゃ駄目だって、
言われてたのはわかってたのに・・・」
「その通りだ。お前を守る為にもな。」
「で、でもね。もしかしたら、ハーフ達の仲間になってくれるかもって思ったの・・・
だって、その配信者さんは本当にいい人なんだよ?明るくて、優しそうで・・・」
「それでイケメンとか?」
「ゔぅ・・・」
「図星かよ・・・」

俺は腕組をしながらジェシーの話を聞き、最後に冗談のつもりで言ったのに、
ジェシーは短い呻き声をあげて、黙りやがった。
まさか好みの配信者だから、教えたって言うのが本音じゃないだろうな・・・
不安でしょうがないんだが・・・

「ま、そいつがイケメンとかそういうのは後にしてだ。
そいつは今日本にいる感じなのか?」
「うん。前は色々な海外から配信してたけど、今は日本で活動してるみたい。
今度、横浜観光とかの配信するみたいなこと言ってた気がする。」
「よりにもよって横浜とはね。」

俺はMr藤本が心配になってきた。このまま人質に取られることがなければいいのだが。
俺が深刻そうな顔をしたので、ジェシーも不安そうな顔をする。

「おじさんに・・・被害とか・・・ないよね?」
「それはわからんな。もし敵の本喰人なら、Mr藤本をどうにかするかもしれん。」
「そ、そんな・・・私の所為で・・・・」

ジェシーはまた泣きそうな顔になり、俯いてしまった。
俺はいけないと思い、ジェシーを慰めた。
また話が聞けなくなっては困る。

「心配するな。まだ敵と確定したわけじゃない。それにいざとなったら、
親父も本気出してくれるさ。」
「ジョーおじさんも?」
「当たり前だろ。Mr藤本とは親父も大事な知り合いだしな。」
「うん。そっか。そうだよね。」

ジェシーは少しだけ笑顔に戻り、俺に薄っすらと笑った。
俺も優しく微笑んで、安心させた。

「なぁ・・・ジェシー。お願いがあるんだが・・・」
「何?」
「嫌だとは思うが、その配信者としたやりとりとか、
その記録が残ってるなら見せて欲しいんだが・・・駄目か?」
「え?全部?」
「出来るなら、全部だな。」
「は、恥ずかしいよ・・・そんな・・・」
「わかってる。お前が恥ずかしがるのは。でも、お前の今後の安全と、
Mr藤本の安全もかかってるんだ。
俺が嫌なら、アテネに頼んでもいい。駄目か?」
「なら、ハーフが見てもいいよ。」
「マジか?俺でいいか?」
「うん。私も悪いのは悪かったから。これでおあいこ。」

ジェシーは小さい頃のように素直になって、俺に見てもいいと承諾してくれた。
俺はつい嬉しくなって、昔のようにジェシーの頭を撫でてしまった。
ジェシーは最初こそ、怒ったような顔はしたものの、最後は照れながら俺に頭を撫でられていた。
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