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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

俺はジェシーのレポートをムスッとした顔で手伝っていた。
当のジェシーは俺とは反対で、ニコニコした笑顔で、ここぞとばかりに俺に、
ここもお願い!とか、図々しい程にまで手伝わせてくる。
自分の宿題なのに、俺にここまでやらせて意味があるのか?
しかし、俺も手伝った褒美に自分の好みの食事を作って貰えるとなると、
ついこのジェシーに従ってしまう。
憎らしいが、ジェシーは父親の才能を素晴らしく受け継いでいる。
本喰人の俺だから言えるのだが、ジェシーは天才とも言えるくらい文才に恵まれた少女だ。
俺側の他の本喰人達もそれは認めている。
数百年ぶりにソロモニア一族の力が色濃く出た少女と言ってもいいんだろうな。
ジェシーの父親も同じくらいに能力が開花していた人物ではあったが。
本喰人の争いに巻き込まれ、亡くなってしまった。
この事は未だにジェシーには言えず、事故で亡くなったことになってはいる。
ジェシーがもっと大人になったら話すべき時が来るだろうな。

「あーやっぱりハーフ先生がいると、ハイパー助かるぅ♪」
「へいへい良かったな。ハイパー便利なやつが側に居てな。」
「もうー怒らないでよ!タダ働きじゃないって言ったじゃん!」
「あーあーそうだったな。そんで?どんな話を俺の為に書いてくれるんだ?」

俺は上機嫌なジェシーのレポートに誤字や脱字がないかを調べながら、
他にも文章でおかしいとこがないかを探しつつ、ジェシーと会話を続けた。
俺も適当に手伝えばいいのだが、ジェシーが大学を卒業出来ないのは、
正直なところでは非常に困ることなので、真面目に手伝わざる負えなかった。
ジェシーがもし大学を卒業出来なかったら、俺にジェシーを託した各方面に、
俺が睨まれるのは間違いない。
ちゃんとジェシーを監督していなかったと言われてな。
そんな嫌な状況は俺もごめんだ。

「ハーフの為の話だから、ハーフの希望する設定は何でも受け入れるよ?
どんな主人公がいい?ジャンルとかさ、全部言ってみて?」
「うーーーん、今いきなり言われてもなぁ・・・」
「急がなくていいなら、明日にでも紙に書いて渡してくれてもいいよ?」
「そうか?ならそうするわ。勿体無いしな!
イレーネ先生が俺だけの為に書いてくれるんだから、
ちゃんと材料とか吟味してから作って欲しいな。」
「ふふ、変なの。まるで本物の食事を作るみたいだね。」
「本物の食事だぞ?俺達、本喰人からすればな。読みもするが、最後は喰うんだから。」

俺はジェシーのことをあえてペンネームで呼んだ。
それは俺がジェシーの作品を心から期待してる時にすることだった。
ジェシーの方もそれがわかっているのか、気を引き締めて、
俺に任せておきなさい!と言う感じの顔をする。
こんな時だけ、ジェシーを頼もしく感じるよな。この俺も。
人間の歳で言えば、やっと20歳になるくらいだから、
まだまだガキなのもいいところなのにな。

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