「はぁーしんどかった。」

俺は依頼料を受け取り、すぐに事務所にいるビックにそれを渡して、
さっさと自宅に帰って来た。
ビックが驚いて、どうやって回収したんだ？！とか、
しつこく聞いてきたが、俺は今度答えると言い張って、さっさと帰って来たのだった。
今日はいちいちビックに説明する気分じゃなかったしな。
この手は前にもしたことあるんだし、ビックも冷静に考えれば、
俺から丁寧に答えられなくても、わかる気がした。

「あれ？今度こそ仕事終わったの？」
「ん？ジェシーか。そうだ。今度こそ今日は仕事は終わりだ。」

俺は自室で元の男の姿に戻ると、リビングに来た。
そこでジェシーがパソコンから目を離して、俺の姿を確認する。

「ハーフが望んでた、あの小説が今出来たけど、どーする？もう読む？」
「お！読む読む♪さっさと印刷しろ！！」
「はいはいーちょっと待ってってぇー」

ジェシーは返事しながら、プリンターに特殊な紙をセットして、
俺が待望してた小説を印刷し始めた。
やっと久しぶりの自分の好みの食事にありつけるな♪
これが今の俺の何よりも楽しみだ。
こんなご褒美がなければ、ジェシーの護衛など誰が望んでやるものか。

「今回はサスペンス要素を強めの作品にしてみたけど、後でちゃんと話の感想も聞かせてよ？」
「わかってる。そこはちゃんと答えるさ。今後の俺の食事の質にも関わってくるからな！」
「毎度ハーフにそう言われるけど、なんか複雑な気分になるわぁー」

ジェシーは苦笑いしながら、俺に印刷し終えた小説を渡して来た。
俺は読みながら、１枚１枚のページを楽しんで食した。
１時間ほどで俺は食事を楽しみ、話の感想をジェシーに伝える。

「今回も最高だったな。今回の話は俺が体験した、あの仕事の話をモデルにしたのか？」
「うん。今回の話に丁度いい感じだったから、取り入れさせて貰ったわ。」
「なるほどな。だから俺にはいい感じに新鮮な味になったわけだ。
しかしだ、この主人公は毎回ファーストフード大好きすぎだろ。
今回は特にハンバーガー食べ過ぎだ。
俺まで胸やけしそうな気分になったぞ！」
「何よ！ハーフはあのハンバーガー大好きじゃなかったの？」
「実際は食べた事はないけどな！お前が作った話で知ってるだけだ。
お前の味覚の情報を通じてだけどな！」
「しょうがないでしょ！そんな設定にしたのも、元はハーフの提案じゃない！」
「む・・・そうだが・・・」

俺はジェシーにそう指摘されて、何も言えなくなってしまった。
俺好みの話にして貰った時にそんな設定を願ったっけか・・・
すっかりと自分でも忘れてしまった。

「にしても、この話も大分シリーズとしては続いてるな。」
「ハーフの助言のおかげもあってね。
今度、アニメ化も検討するって言われたよ。」
「マジか？ジェシーはOKしたのか？」
「ううん。私はまだ学生だし、この話がちゃんと完結してからにして欲しいとは、
編集の人には言ったけどね。
それに自分の趣味もまだまだ楽しみたいしさ！」

ジェシーはニッと笑って俺に言う。
実は彼女は小説家として、デビューはしていた。
まだはデビューしただけで無名に近いが、いつかは父親の様に立派な小説家になるだろう。
ソロモニアの一族の末裔だからな。こいつは。