第9章「交錯しあう気持ちと確認」
「と言う訳で、ジェームス様にも諸々のご事情があるとは思うのですが、
こちらとしましても、ことは穏便に済ませたいと考えております。
契約の際にサインして頂いた時も、内容はしっかりと確認して頂きましたよね?」
「う、うん。確認はしたけどさ・・・」
俺は女の姿に化けて、例の問題の依頼主こと優柔不断野郎に会っていた。
最初はインターホン越しに会う気はありません!など言っていたのに、
何度もチャイムを押す俺の姿を確認するなり、急に態度を変えて、
家に上げやがった。
ま、どうやら俺の作戦の1歩が成功したと見える。
俺の読みでは、美人で気の強そうな女に弱そうだもんな、こいつ。
「一括でのお支払いが辛いのでしたら分割なども可能ですし、
こちらも出来るだけお客様であるジェームス様のご期待に添える形で、
お力になれればと考えております。
それに調査は順調に進んでおりますし、どうして今日はまた中止したいと思われたのでしょうか?」
「そ、それは・・・」
優柔不断野郎ことジェームスと名乗るこの男は、もじもじと顔を赤くしながら、
俺の顔を何度も見てくる。
と言うか、こんな状況で照れてる場合なのか、この男は・・・
俺は心の中で呆れ返っていたが、金の為にそれを堪えて、
優しい笑顔でジェームスを見返してやった。
「私で良ければ相談に乗りますので、気軽に話して下さい。
そうすることで、ジェームス様のもっと望んだ形で、
こちらもお応えすることが出来るかもしれません。」
「そうですか!なら、僕の話を聞いて貰えますか?!」
とジェームスは急にキラキラした目で、俺に嬉しそうに返事してきた。
20代後半の外見も優男って感じで、性格も優しそうには見える男だった。
ただ悪く言えば、優柔不断で弱々しくも見える。
母性本能が強い女なら、放って置けないタイプの男と言ったとこか?
「今の彼女が僕に愛がもうないのは分かってるんです。
毎回喧嘩になった時に彼女が言うのは、貴方は男らしくない!
ナヨナヨしてて気持ち悪い!って言いますから・・・」
「あら・・・それはまた酷いですね。」
「ははは・・・でも、酷いことを言ってくるとわかってる妻でも、
やっぱり一度は愛し合った人だから・・・」
「浮気してる現場の写真を見るのは、勇気が出ないと?」
「それじゃ、駄目だって言うのもわかってはいるんですけどね。
けど・・・どうしても怖くて・・・」
ジェームスは悲し気な顔で、俺に向かって同情を誘うように見てくる。
心底、面倒な客だ。今のこの俺に慰めて欲しいわけか?
俺は気持ちを切り替え、仕事モード全開でジェームスと会話を続けた。
「この手のご依頼をされる方はほとんどが、ジェームス様と同じような心境になられます。
最初は怒りから浮気の調査を頼まれたりしますが、いざ結果を知る時は、
恐怖を感じる方も多いです。」
「そうなんですか?」
「はい。パートナーの事を信じたい気持ちは、誰も同じです。
でもこちらとしては、ジェームス様を苦しめたくてしていることではありません。」
「ですね。僕が調査の依頼をしたんですから。」
「私達も調査の結果を渡して、それで終わりと言う訳ではございません。
結果次第でまだサポートが必要であれば、今後も相談にも乗りますし、
弁護士の紹介や、他にも出来る事があるなら、お手伝いが可能でございます。」
「ほ、本当ですか?!」
「はい。本当でございます♪なので、どうか今後も私達を信じては頂けないでしょうか?」
俺は優しく微笑みながら、向か合ってテーブルに座っているジェームスの手を軽く握り、
私は貴方の味方ですよ!アピールをしまくった。
1時間後、ジェームスは今回の依頼料をしっかりと払って、
今後も相談などに乗って欲しいと俺に頼んで来た。
何のことはない。
ただ不安だから、俺の働いている事務所に駄々を捏ねただけだったのだ。
こちらとしましても、ことは穏便に済ませたいと考えております。
契約の際にサインして頂いた時も、内容はしっかりと確認して頂きましたよね?」
「う、うん。確認はしたけどさ・・・」
俺は女の姿に化けて、例の問題の依頼主こと優柔不断野郎に会っていた。
最初はインターホン越しに会う気はありません!など言っていたのに、
何度もチャイムを押す俺の姿を確認するなり、急に態度を変えて、
家に上げやがった。
ま、どうやら俺の作戦の1歩が成功したと見える。
俺の読みでは、美人で気の強そうな女に弱そうだもんな、こいつ。
「一括でのお支払いが辛いのでしたら分割なども可能ですし、
こちらも出来るだけお客様であるジェームス様のご期待に添える形で、
お力になれればと考えております。
それに調査は順調に進んでおりますし、どうして今日はまた中止したいと思われたのでしょうか?」
「そ、それは・・・」
優柔不断野郎ことジェームスと名乗るこの男は、もじもじと顔を赤くしながら、
俺の顔を何度も見てくる。
と言うか、こんな状況で照れてる場合なのか、この男は・・・
俺は心の中で呆れ返っていたが、金の為にそれを堪えて、
優しい笑顔でジェームスを見返してやった。
「私で良ければ相談に乗りますので、気軽に話して下さい。
そうすることで、ジェームス様のもっと望んだ形で、
こちらもお応えすることが出来るかもしれません。」
「そうですか!なら、僕の話を聞いて貰えますか?!」
とジェームスは急にキラキラした目で、俺に嬉しそうに返事してきた。
20代後半の外見も優男って感じで、性格も優しそうには見える男だった。
ただ悪く言えば、優柔不断で弱々しくも見える。
母性本能が強い女なら、放って置けないタイプの男と言ったとこか?
「今の彼女が僕に愛がもうないのは分かってるんです。
毎回喧嘩になった時に彼女が言うのは、貴方は男らしくない!
ナヨナヨしてて気持ち悪い!って言いますから・・・」
「あら・・・それはまた酷いですね。」
「ははは・・・でも、酷いことを言ってくるとわかってる妻でも、
やっぱり一度は愛し合った人だから・・・」
「浮気してる現場の写真を見るのは、勇気が出ないと?」
「それじゃ、駄目だって言うのもわかってはいるんですけどね。
けど・・・どうしても怖くて・・・」
ジェームスは悲し気な顔で、俺に向かって同情を誘うように見てくる。
心底、面倒な客だ。今のこの俺に慰めて欲しいわけか?
俺は気持ちを切り替え、仕事モード全開でジェームスと会話を続けた。
「この手のご依頼をされる方はほとんどが、ジェームス様と同じような心境になられます。
最初は怒りから浮気の調査を頼まれたりしますが、いざ結果を知る時は、
恐怖を感じる方も多いです。」
「そうなんですか?」
「はい。パートナーの事を信じたい気持ちは、誰も同じです。
でもこちらとしては、ジェームス様を苦しめたくてしていることではありません。」
「ですね。僕が調査の依頼をしたんですから。」
「私達も調査の結果を渡して、それで終わりと言う訳ではございません。
結果次第でまだサポートが必要であれば、今後も相談にも乗りますし、
弁護士の紹介や、他にも出来る事があるなら、お手伝いが可能でございます。」
「ほ、本当ですか?!」
「はい。本当でございます♪なので、どうか今後も私達を信じては頂けないでしょうか?」
俺は優しく微笑みながら、向か合ってテーブルに座っているジェームスの手を軽く握り、
私は貴方の味方ですよ!アピールをしまくった。
1時間後、ジェームスは今回の依頼料をしっかりと払って、
今後も相談などに乗って欲しいと俺に頼んで来た。
何のことはない。
ただ不安だから、俺の働いている事務所に駄々を捏ねただけだったのだ。