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第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「ふぅー今日も楽勝ー楽勝ー♪ん?どうしたんだ?ビック?」
「あ・・・ハーフか・・・ちょっとな・・・」
「?」

俺が事務所に帰って来てすぐに、俺はビックが不機嫌な事に気付く。
今さっき撮影したばかりの写真のデーターを受け取っても、
ビックは難しい顔をしたままだ。
ただでさえ、普段から愛想が良くない中年のおっさんだと言うのに、
これでは尚更に近寄り難いではないか。
それに放置しっぱなしにしても、俺にもとばっちりが来そうだしなぁ・・・
しょうがない。話を聞いてみるか。

「どうしたんだよ?ビック?何をそんなに悩んでいるんだ?」
「ん・・・実はな・・・」

ビックは俺に話掛けられるのを、実は待ってましたと言わんばかりに、
前屈みにしていた姿勢を元に戻しながら話始めた。

「お前が今日撮影して来た調査の件あるだろう?」
「あ?今さっきして来た仕事か?浮気調査の?」
「そうだ。その依頼人の男だけどな・・・」
「まさか、今頃になって中止にしたいとか・・・?」
「察しがいいな、ハーフ。その通りだ。」
「おいおい!冗談じゃないぞ!ベストショットな写真を
何枚もゲットして来たばっかりだぞ?!
そんで?依頼料はどうなるんだよ?!」
「渋ってやがるよ。中止にしたんだから、そんな写真いらないってな。
写真とか貰わなければ、料金は発生しないだろうって、
ガキみたいな言い訳してやがるぜ。
あれはどうあっても払う気ないみたいな態度だな。」
「クソ野郎!何がいらないだ!
こっちは仕事を、すでに無事に終わらせたってんだ!
ナタリーだって、そんな話聞いたら激怒すんぞ!」
「だよな・・・だから俺も頭が痛いんだ。」

ビックは辛そうな顔で頭を抱え込む。
俺は毎度思う。クソみたいな仕事も多いが、
クソみたいな依頼人もまた多いと言う事を。

「そもそも自分が好んでそんな女と結婚した癖に、
やっぱり浮気には耐えれないとか言い出して、
そんでこっちに依頼して来たかと思えば、
今度はその結果を見る勇気がないから中止したいとか・・・
どんだけ優柔不断なんだよ・・・情けねぇ・・・
だから浮気妻に馬鹿にされるんじゃねぇの?」
「まぁ、それには俺も同感だ。だが、向こうはあくまでもお客様だ。
その客から不合理な状況で依頼料をせしめることは出来ないだろう。
最近はやたらと、その辺うるさいからな。
ネットの評判なんかも怖いし、俺もお手上げだ。」
「だからこそ、馬鹿にされてるんじゃないか?
俺達が出来ないと思ってんだろ?その優柔不断野郎はよ。」

俺はイライラした気持ちが段々と出て来て、顔も歪んでくる。
早く帰って、ジェシーの作った小説が味わえると思ったのに、
こんなことで予定が狂うなんて許せたもんじゃない。
この手の輩はいくら客だとは言え、こっちが下手に出ても良い事はないはずだ。
仕方がない・・・面倒な手ではあるが、あの手で行くか・・・
俺は自分がしてきた仕事が無駄にならないようにな。
俺はビックに言って、早々に依頼人の男に会う事にした。
ビックは心配そうに俺の顔を見て、大丈夫か?だの、
警察沙汰にはするなよ?だの言ってきたが俺はスルーした。
本喰人である俺を舐めて貰っちゃ困るな。
ただの人間から依頼料を頂戴するくらい余裕だっつの。

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