第9章「交錯しあう気持ちと確認」

「トリア先生、聞きたい事があるのですが・・・」
「何かしら?」
「記憶が曖昧で、説明がちょっと難しいのですが・・・」

俺は過去の俺を思い出した際に見た、トワに似たような女に出会ったことを話した。
トリア先生は俺の話を聞いて、一瞬だけ驚いたような顔をしたが、
すぐに平常に戻って話を聞いてくれた。

「そう。彼女の事を薄っすらとは思い出した感じかしら・・・」
「彼女の事?では、トリア先生も彼女の事は知ってるんですね?」
「もちろん知っているわ。その彼女こそが、初代の遺言書を預かっていた女性なの。」
「え?そうだったんですか?!」

あの彼女が初代の遺言書を預かっていたのか・・・
俺は意外な事を知って、拍子抜けしたような声を出してしまった。

「では、その彼女はトリア先生達側ってことですよね?」
「区切りをつけるなら、そう言えるわね。」
「じゃあ、2冊目はさぞ彼女を憎んだでしょうね?」
「まぁ・・・十二はその辺りの記憶を思い出せたの?」
「いいえ。正確にではないです。
つい最近、2冊目が俺に精神を飛ばしてきて、会話した時に、
そんな感じがしたんです。憎悪を抱いているような・・・」
「憎悪を・・・確かに彼は彼女にそんな感情を持ってもおかしくないかもしれないわね。
特に十二、貴方を取られたようなものだから・・・」
「へ?俺を取られた?」

またも意外な言葉を聞いて、俺は何とも間抜けな顔になったことだろう。
取られたとはどういうことだ?

「トリア先生・・・それはどういう意味ですか?」
「言葉のままよ?過去の貴方は、彼女の説得のおかげで、
2冊目の仲間になることをやめたのよ。
親友であることはやめたわけではないようだけれども。」
「彼女の説得で?俺はどんな説得をされたんですか?」
「さぁ?そればかりは当事者同士じゃないとわからないわ。
最初は渋々で嫌々な顔をしていたけれど、途中からは意気投合してた雰囲気があったわね。」
「その彼女は一体何者なんです?人間なんですか?」
「彼女は初代の隠し子の子、だから孫になるのかしら?」
「初代の隠し孫?ってことですか?」
「そうなるわね。」

トリア先生はそう俺に頷く。
初代の隠し孫か・・・だったら、初代の遺言書を所有していてもおかしくはない。
けれど、俺の心の中は何故だかしっくりとこない。
何かが足りない気がしてならないのだ。
それが何か?と聞かれても困るのだが、俺は確実に大事なことを
逃している気分にされられた。

「その彼女の名前は?」
「イレーネちゃんよ。」
「当時の歳は?」
「21歳前後だったかしら?」
「外見は?」
「外見?そうねぇ・・・あ!思えば、外見はトワちゃんに近いかもしれないわね。
髪の毛の色とか細かい違いはあるけれど、雰囲気は似てるわ。」
「トワに似た・・・イレーネと言う人間の娘か・・・」

俺はトリア先生から、その彼女の情報を色々と聞いてみた。
そうすれば、あの時よりも思い出せるかもしれないと思ったのだが、
結局はその場では思い出すことが出来なかった。
これは長期戦になりそうだなぁ・・・
過去のことを色々と思い出そうとするのは・・・
トリア先生はそんな困り顔の俺に、優しい笑顔で、焦る必要はないわと諭してくれた。
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