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第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

「はっはっは。それはタイミングが悪かった。
いやー俺も、まさかこの時期にギックリ腰をやるとは思わなくてな。
しかも、他に危ない病気の可能性もあるかもしれないって言うんで、
それで検査もするって事になったから、思いがけずに、長めの入院になってしまってな・・・
君達には悪いことをしてしまったね。
わざわざ、こんなとこまで訪ねさせることになってしまって。」
「いえ。僕達も藤本さんが大変な時に、話を聞きに来ることになってしまって、
すいませんでした。」
「いやいや、俺はどうせ病院にいるだけだし、暇してたから。
何にも謝ることはないぞ?
腰の痛みもほとんどないし、今は健康そのものって感じだし。
俺を診てくれた医者が知り合いなもんだから、余計に心配してくれた所為で入院になってしまうし、
だから、俺も急に暇になった身だから問題ないさ。
それに珍しいお客さんだからな。君達は。」

藤本と言う男性は、明るい笑顔で私達の話に応じてくれた。
最初の印象は初老と言う感じで、厳格で気難しそうなイメージがあったが、
話しをしてみると意外にも陽気な人物だった。
古美術のお店をしているくらいだから、商売柄なのかしれない。

「えっとー君達が聞きたいのは、本喰人なる存在の話だっけ?」
「はい。それとその存在を生み出したかもしれない人達の話ですね。」
「やっぱりそうか・・・」

藤本は私達の聞きたがっている話の内容を確認すると、
病院のベッドに座った状態で苦笑いをして気まずそうにした。
どうしたものかと悩んでいるようにさえ見える。

「あいつめ。まさか、私が昔にしてやった話を他人様に
面白可笑しく言いふらしてるんじゃないだろうな・・・
全く困った娘だ。」
「え?それはどういうことですか?」

藤本の言葉に、四四は目を丸くしている。もちろん、私やゴートンも同じだ。
一体、どういうことなのだろうか?

「いや・・・実に申し訳ない。もし君達が俺にその話を聞きに訪ねて来たのなら、
俺の遠い親戚にあたる女の子から聞いたんじゃないかと思う。
久しぶりにメールが来て、その話を聞きに誰か来るかもしれないから、
その時はよろしく!なんて書いてあったから、
最初は何の事だ?と気にしないでいたんだが・・・」
「へぇーじゃあ、藤本さんには僕達のことが、すでに伝わっていた状態だったんですね?」
「いや、まー正確にはどんな人物とかまでは言ってなかったがね。
もしかしたら来るかも?くらいなニュアンスだったし。」

藤本はそう言いながら、自身の携帯を取り出し、そのメールをすんなりと見せてくれた。
そして気まずそうな顔をしたままで会話を続けた。

「まず最初に断っておきたいんだが、この話はどこまで信憑性があるかは俺もわからないし、
寧ろほとんどが創作だと思ってる。
だから、その・・・話してあげてもいいんだが、本気になり過ぎないで欲しいってとこかな?」

藤本は私達を見て、何か様子を探るような顔をしていた。
それに対して、ゴートンが私や四四を見て、どういうことだろう?
みたいな顔をするが、そればっかりは私や四四でもわからない。
とにかく藤本の話を聞かないことには何も判断出来そうにないので、
私達は話を聞かせて欲しいと真剣な顔をして返事をした。
もちろん藤本には迷惑を掛けたりなどもしないと約束までして。
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