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第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

「母上?大丈夫ですか?顔色が良くないようですが?」
「え?あ、ええ。大丈夫よ。ちょっと気疲れしちゃったのかしら?
今年一番の真剣な買い物しちゃったからね♪」
「なら、移動はまだかかりますから。車内でゆっくりお休みください。
寝るなら、後でオレが起こしますから。」
「うふふ。いつも有難う♪ノウェム♪」

私はノウェムの言葉で、過去から現実に意識が戻った。
今日と言う大事な日に、あんな過去の嫌な思い出を思い出すなんて、私ったら駄目ね。
私は屋敷に戻る車内から、外の景色を見て、気持ちを落ち着かせる。
あれから、私はあのトラウマもありアメリカには行っていない。
いや、行きたくとも行けないのだ。身体が拒絶してしまい、今の夫からも誘われても行けずにいる。
六がドイツに足を踏み込まないのと同じで、私の場合はアメリカがそうだった。

「けど、あの六がいつかはセアとドイツに行くつもりなのよね・・・」
「ん?どうされたのですか?母上?」
「ううん。何でもないの。ただいつかセアは六とドイツに行くんだなぁーって、
ちょっと思っただけよ。」
「六マスターとセアがドイツに行くのが、何か不安ですか?」
「うーん・・・不安と言うのか、心配ではあるわね。ドイツに行って、
悪い事にならなければいいんだけど。」
「ドイツには2冊目がいるでしょうからね。注意して行って貰うしかないですね。」
「そうね。」
「もし心配なら、その際にはファウヌスも同行させましょうか?あいつなら、
ドイツにも何度も行ってますし、いざと言う時にはセア達の力になるでしょう。」
「うん。そうね。けど、それは六にも相談してからよ?余計な心配すると、
六は逆に機嫌を損ねてしまうからね。」
「はい。わかってます。こちらで、出しゃばったことはしません。」

ノウェムは完璧な答えで私に返答する。自分で言うのもアレだけど、
本当にこんなに良い子に育ってくれて、私は車内とは言え、
すぐにでもノウェムを抱きしめたくなった。
素敵な子に育ってくれて有難う♥♥♥って。
しかし、ノウェムは何を察したのか、私から距離を取る。

「母上。顔に出てますよ?母上がオレの成長を喜んでくれるのは、
オレも正直、嬉しいのは嬉しいですが・・・
その姿なんですよ?時と場所を考えて下さい。」
「ちぇ・・・ノウェムったら、そういうとこは可愛くないんだから。」
「オレは可愛くなくていいんです。オレは母上の守る眷属の長なんですから。」
「嫌だわ。六が来たら、ますます堅苦しい子になっちゃって・・・
数日でそんなに影響を受けちゃうものなのかしら?」
「いい加減にしないと怒りますよ?母上。」
「わかったわ!もう止める!代わりに、別のことでノウェムには後で感謝するわね♪」
「はぁ・・・無理にされなくてもいいんですが・・・」

ノウェムは呆れた顔で私も見るも、後には苦笑いする。
ノウェムだって、私の大事な子ですもの。私から褒められて、嫌な気分になるわけないわ。
屋敷に帰ったら、今回はノウェムが欲しがっていたあの本をプレゼントしてあげましょう♪
前々からあげる予定ではあったしね♪
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