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第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

オレとイーリスがキュアート様の我が儘に困っていると、もう1冊がこの部屋に入って来た。
それはヴァンダムだった。ヴァンダムも少女の姿になったキュアート様に気付き、
目を丸くして驚いていたが、すぐに破顔になり、キュアート様をべた褒めし始めた。

「母上!めちゃくちゃ可愛いっす!!最高すぎます♪」
「やーだぁー♥ヴァンダムだけよ♥この私をこんなにも褒めてくれるの♥♥♥
ノウェムや、イーリスなんて怒ってばっかりなんだから!♥」

とキュアート様と一緒になって煩く騒ぎ立てた。
オレやイーリスからすれば、心配して怒っているのに、キュアート様はあんな言い様だ。
もちろん冗談で言っているのはわかっていても、オレやイーリスは傷つく。
現にイーリスは少し悲しい顔さえしてしまっている。
やれやれ、困った母上だ。無邪気過ぎるのも玉にキズだな。

「ヴァンダム、いい加減にしろ。今は大事な話し合いの途中だったんだ。
お前が母上を褒めちぎるのは後にしてくれ。
それに母上。いくら冗談でも、オレはいいですが、イーリスだけには謝ってやって下さい。
本気で心配するからこそ、厳しいことも言わなければならないのに、
さっきの言い方はあんまりです。」
「ノム兄貴・・・」
「ノウェム・・・ごめんなさい。さっきのは私が悪いわ・・・
ごめんね、イーリス。貴女はいつも私を守ってくれているのに・・・
私は悪い母親だわ。こっちに来て?イーリス?抱きしめてあげる。」
「母上・・・うぅうう・・・」

イーリスは母上に呼ばれ、少女の姿にはなってしまっているが、母上の胸に甘え泣いてしまう。
ふぅ・・・長男も楽じゃないな・・・こういう時は。
数分後、皆は冷静に戻り、さっきの話し合いを再開させた。

「ノム兄貴も、イーリスも真面目過ぎるんじゃないか?」
「どういうことだ、ヴァンダム?」
「そうよ。真面目に警備するべきでしょ?」

ヴァンダムの第一声に、オレもイーリスもまた軽く怒る。
キュアート様を守るのに、真面目に守らないとは、どういうことなのだ?
オレにはさっぱりわからん。

「いや、だからよぉ。キュアート様が大事なのは、こっちだって同じだ。
この屋敷にいる人間達だって、全員日々心配しているくらいだ。
一緒に警備してる奴らだって、キュアート様は何か病気になられたのではないか?って、
噂が飛び交って、こっちも落ち着かせるのが大変なんだぞ!」
「何?そうだったのか、ヴァンダム?」
「そうだぜ。あんなに外出してたキュアート様が1週間もどこにも行かないなら、
そりゃー騒ぎになりかけたっておかしくないだろう?ノム兄貴。」
「うーん・・・」

オレはヴァンダムの話を聞いて、そんな事態になっていたのかと初めて知った。
屋敷内の事なら、ヴァンダムやアリアドネ、それに三つ子の方が何より詳しい。
なんせキュアート様と一緒に暮らしているわけだからな。
後、ヴァンダムの言う通りでもあった。
オスカー様と夫婦になられてから、キュアート様も外出が多くなったのは間違いない。
それだけ平和に暮らせていたからと言うのもあるんだが・・・
さて、ヴァンダムの話も合わせて考えると、面倒なことになりそうだなぁ。
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