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第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」

「十二からしたら、トワちゃんの行動は、過去のあの件を思い出して、尚更許せないと思うわ。
そこは私も貴方に同情する。私もついトワちゃんの行動を怒るとこだったもの。」
「ですよね?トワはとても危険で、軽率な行動をしたんだ。
俺はトワがそんな事をする本に育っていたなんて思いたくなかったんです。」
「十二には複雑で辛い気持ちよね。トワちゃんは自分のした行動が、
こんなにも十二を苦しめているなんて、考えてもいないでしょうけどね。」
「トワは全く考えてないですね。15冊目達からは、トワのあの行動は、
聞かなかったことにして欲しいと言われたんですが・・・
それでも俺はトワを目の前にしたら、どうしても怒りの気持ちが抑えきれなかったんです。」
「十二・・・」

トリア先生は目を閉じて、俺の言葉を静かに受け止めてくれる。
こうして話を聞いて貰えるだけで、子供の頃の俺もどれだけトリア先生に救われただろうか。
トリア先生は相談などに乗った相手に何よりも上手に対応するのが、
お世辞抜きに得意な本喰人だった。
あの18の奴だって、小さい頃なら何よりもトリア先生の言う事を聞いていたくらいだ。
2の奴に唆されるまではな。

「何かを育てるってことは、とっても大変なことよ。どんなに様々な経験をしたって、
問題があったりするし、育てる側も、育つ側にも意思があるのだから、
自分の思い通りになることなんて、絶対にないわ。
もしも、自分の思い通りのままに出来ると言うのなら、私はそれは育てているのでなく、
支配しているだけだと言うわ。」
「トリア先生・・・」

トリア先生は目を開けて、強い口調で俺を窘める。
そして次に俺にこう言う。

「十二はトワちゃんをどうしていきたいの?」
「どうしていきたいか・・・ですか?」
「そうよ。トワちゃんを今後も育てていくと言うのなら、貴方の意思に反することも、
これからもしていくでしょうし、酷い場合には互いの意見が食い違って、
激しく対立することだってあるかもしれない。
けど、それが嫌だと言うのなら、これを機に育てるではなく、
支配する方向に変えればいい。そうするしかないと思わない?」
「そ、それは・・・」

俺は極論過ぎると言いそうになったが黙った。
トリア先生がわざとこんな風に言うのだ。
俺がどう考えるかもわかって言っているに違いない。
それに確かにトリア先生の言う事も、あながち間違ってるとは言えないだろう。
俺がトワを思い通りに育てたいと言うのなら、
それは最終的には眷属として「支配」するしかないのだ。
その線引きが難しいと言う事も、トリア先生は伝えたいのかもしれないと思った。
こんな事を俺が考えなくてはならない程に、トワは成長してるわけだな。
この先、トワの面倒を見てやっているだなんて、偉そうに言える立場にないかもしれないな。
俺がトワを支配したいと願ってないのなら、今回のトワの行動を怒るのでなく、
きちんと受け止めるべきなのだろう。
トワの意思を尊重してやるのならな。
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