俺は約１時間後にトリア先生の家に帰ってきた。
自分でも、もう少し早く帰るつもりだったのだが、
思いの他、あの場所で色々と考え事をしてしまっていた。
俺がトリア先生達の居るであろう部屋に戻ると、数人の声が飛び交っていた。
そこには居たのは・・・

「ちょっとベリー！！それじゃ駄目だって！この子に、その物件取られちゃうじゃん！」
「んな事言われても、初めてやったゲームだからよくわからん！」
「ふふふ。これはやっぱりトワちゃんの方が上手みたいね。」
「トリア先生！僕だってすぐに物件買い占めて、上位に行きますよ！」
「あら？ダイス君も俄然やる気みたいね♪」
「ダイスは大人気なさすぎるぞ。この子はまだ誕生して日が
浅い子なのに、俺達が本気で勝負するなんて・・・」
「ベリー君、それはトワちゃんに失礼だわ。いくらボードゲームだからって、
トワちゃんは本気で戦ってるわよ？」
「そうだぞ！ベリー！逆にそんな言葉は負け惜しみにしかならないよ！」
「うぬ・・・ゲーム１つでそこまで言われると思わなかった・・・」

部屋に入った俺は、この展開が理解出来ずに、腑抜けた顔でトワ達を見ていたことだろう。
トワは楽しそうな顔で、自分の駒になる人形を持った時に、俺が帰ってきたのがわかり、
笑顔で出迎えてくれた。

「あ！十二だ！おかえりなさい♪」
「あ、ああ・・・ただいま・・・」

トワの出迎えを受けた瞬間に、久しぶりの再会になる
１５冊目と１６冊目が一気に俺に顔を向けてくる。
お互いにこんな場面での再会になって、さっきまでの楽し気な雰囲気から、
瞬時に気まずい雰囲気へ変わってしまった。
俺も想像していなかった展開になって、言葉を失ったままだった。
これは・・・俺はこの場で、なんて言えばいいんだ・・・

「はいはい♪」

と明るい声で、この場の悪くなりそうな空気を、トリア先生が軽く手を叩きながら壊す。
その行動は、俺にはとても懐かしいものだった。
誰かと誰かが喧嘩したりした時に、トリア先生が間に入り、よく仲裁とかしてくれたっけか？
俺はここで暮らしていた時の過去を思い出し、和やかな気持ちになってしまった。
１５冊目達もトリア先生に世話になっている手前か、俺に敵意を露わにはしなかった。

「十二と、ベリー君にダイス君はお互いに言いたい事が沢山あるでしょうけれど、
今はトワちゃんと真剣勝負中だからね？
それが終わるまでは、我慢して下さいな？」
「うん！そうですね！だから十二は、ちょっとだけ待ってって！」
「お、おう・・・」

俺はトリア先生とトワにそう言われてしまい、短く同意する返事しか出来なかった。
１５冊目と１６冊目も、困惑した顔はしているが、またトワとのゲームに顔を向け、
ワイワイと賑やかに騒ぎ出した。
俺は少し皆から離れた場所で、トワ達のゲームが終わるまで見守る事になってしまったが、
急に１５冊目達と殺気立つ展開にならずに済んで安心した。
にしても、トワはあんなゲームまで、持って来ていたのか？
あれって人生ゲームとか言うやつだっけか・・・
トワが３歳児くらいの小さい姿の頃に、俺とよく遊んだよな。
最近では俺も負けるくらいに、トワはあのゲームに強くなってしまった。
トワの成長が違った意味で見れる分、本当は喜ぶべきなんだが、
自分が勝負に負けるって言うのはやっぱりいい気分じゃないよな。