四堂が仕掛けた罠で、もしもあのゲームと同じような細工を考えたのならと、
私は懐中電灯を再び点けて、懐中電灯をよく観察した。

「やっぱり！これはただの懐中電灯じゃなかったんだ！」

私は懐中電灯についていた、あるスイッチを押して、
懐中電灯の灯りを強めにした。
そして、その灯りを木本の向けて浴びせた。

「ぎゃあああああ！や゛めろ゛！！この女！！！」

木本は私が浴びせた懐中電灯の強い光を嫌がり、更に再び攻撃を開始して来た。
その光景はまるであのゲームそのものだった。
あのゲームの小説家は、敵の攻撃を避けながらも、敵に懐中電灯の灯りを当てることで、
闇の力に守られている敵のバリアを壊す事が出来る。
そして始めてこちらの攻撃が効くようになるのだ。
その敵との攻防があのゲームの面白さであった。

「いくらあのゲームが好きだからって、本当にこうして罠にまで組み込むとか・・・
四堂は・・・」

私は四堂に呆れながらも、必死に木本の攻撃を避けながら、距離を取り、
懐中電灯の光を当て続けた。
時間にして５分ぐらいだっただろうか？
私にはもっと長い時間に感じられたが、懐中電灯の光は木本の闇の力のバリアを壊し、
木本は影から解放されて、普通の人の姿に戻った。

「ぐわぁあああああ！？！」

木本は闇の力の影から解放されると同時に、断末魔のような声を
上げて、その場に倒れ込んだ。

「き、木本？！！大丈夫か？！！」

八百代は心配の余り、まだ木本が普通に戻ったかもわからないのに、側に駆け寄ってしまった。
私はその行動にヒヤッとしたが、木本は八百代が側に寄っても、何も反応しなかった。
どうやら、気絶してしまったみたいで、何もしてこなそうだ。
私は安堵して、懐中電灯の光はそのままに木本に近づいてみる。

「木本は・・・気絶したみたいです。」
「そうみたいですね。でも良かったです。禍々しい気配は消えたみたいですし、
木本さんからも悪いモノは感じなくなりました。」
「本当ですか！では、木本は怨霊ではなくなったと？」
「それは木本さんが起きてくれないと、正確にはわかりませんが、
でも今までのようにいきなりあんな風に戦うことは避けられるようになったんじゃないかと・・・」

私の話を聞いて、八百代はホッと溜息をついた。
八百代としては、最初よりはいい状況になったのなら、それでも安心したのだろう。
親友があんな影人間みたいな姿になり、獣のような行動しかせず、
更には激しい怒りを剥き出しにして、自分達に攻撃して来たりしたのだ。
それが今は、元の姿になって気絶して大人しくなっているのだから、
一先ずは安心したい気持ちも私にもわかる。

「それにしたって、四堂ったら・・・私の試練の為とは言え、
こんな罠を仕掛けて試すなんて・・・やりすぎな気がします。」
「ん？どうしたんですか？」
「あ、気にしないで下さい。こちらの話ですから。」
「？」

八百代は私のつい出てしまった小言に気付いてしまったが、私は笑顔で誤魔化した。
キョトンした顔になった八百代であったが、すぐに気絶している親友を思い出し、介抱する。
私も八百代と一緒になって、木本が目覚めるのを待つことにした。