第8章「1つには出来ない解答(こたえ)」
「木本さんが盗んだ本は、その魔導書の写本の1冊だけですか?」
「はい。あいつが盗んだと思われるのは、その1冊だけです。」
「でも、貴方も本を盗まれたと疑われるくらいだったのなら、他にも盗まれた本が
あったんじゃないですか?」
「それなのですが・・・」
私の質問に、八百代は困惑した顔をする。木本と言う男が、その1冊しか本を盗んでいないのなら、
何故、八百代までが本を窃盗したと疑われたのだろうか?
他にも数冊無くなったから、共犯だと疑われたのではないのか?
「無くなったのは、日本の茶道の所作などが書かれた本で、
5冊で1セットになっているものでした。
有名な茶道家が書いた本で、希少価値が高い本だったのですが、
買い取り手が決まったから、私にそれを、地下の書庫から営業部署の机に、
移動させておいて欲しいと、受付の女の子に言われて、その通りにしたのですが・・・
次の日には、会社のどこを探してもなかったのです。」
「え?そんなことがあったのですか?誰かが売り手に渡したとかでなく?」
「はい。誰も触っていないとのことでした。私は言ったんです。
昨日、受付の女の子に指示されたので、言われた通りに本を移動したと。
そしたら、だったら何故、その本が会社のどこにもないんだ!と、
営業の奴らに理不尽にどやされて。
私だって、何で本が無くなったのか全然わからないのに・・・」
「それで、最後は八百代さんが盗んだと言う事に?」
「そんなところです。私はやってないと何度も言ったのですが聞いて貰えずで・・・
最後にその本を触ったのは、お前なんだから、犯人はお前だろうと・・・その一点張りで・・・
木本の件もあったから、尚のことでした。」
「酷すぎますね・・・その営業部署の方々は・・・」
私は八百代の話を聞いて、同情した。ただ受付の指示に従っただけなのに、
あっさりと犯人扱いとは、その会社の運営に問題があったのではないか?
あの四堂がこんな事態を見過ごすわけがないと思うのに、一体どうしてしまったと言うのか。
「ただ、私が長年警備を勤めていたと言うのもあり、警察には言わないと、
その代わりに本の代金さえ弁償すれば、そこは穏便に済ますと言われました。
私は最後まで無実を主張したかったのですが、その当時は病の母がいまして、
私が彼らに反発して、警察に捕まってしまうと、母の看病出来る人間が、
その時は学生だった妹だけになってしまうので・・・
父は戦争で亡くなっていたので、働けるのは私しかいなかったから、
それで最後は私がやったと認めるしかありませんでした・・・」
「それは・・・悔しかったですね。状況が状況であるなら、
会社の言い分など認めず、戦えたのに・・・」
「仕方がありません。母や妹を悲しませて、苦しい生活をさせるわけにはいかなったですから。」
「けど、本当に誰も貴方の味方になってくれなかったのですか?
肆方院って人さえも?」
「肆方院様は、その時は海外行かれていて、運悪く不在だったのですよ。
だからこそ私を貶めた奴は、その時を狙ったのだと思います。
そうすれば、私が肆方院様に泣きつくことも出来ないとわかった上で。」
私は八百代から、その話を聞いて、四堂が彼を庇わなかった理由がわかった。
いや、正確には庇いたくても庇えなかったのだ。
その事件の最中に自分がその場に居ないのであれば、どうにも出来ないではないか。
八百代の言う通り、彼をハメたがっていた人間は、海外に行っている四堂に、
すぐにその事件の連絡もしなかっただろう。
四堂と彼を引き離したかったのだから、するわけがない。
世の中には汚い人間がいるものだと、私は改めて思い知った気分だった。
「はい。あいつが盗んだと思われるのは、その1冊だけです。」
「でも、貴方も本を盗まれたと疑われるくらいだったのなら、他にも盗まれた本が
あったんじゃないですか?」
「それなのですが・・・」
私の質問に、八百代は困惑した顔をする。木本と言う男が、その1冊しか本を盗んでいないのなら、
何故、八百代までが本を窃盗したと疑われたのだろうか?
他にも数冊無くなったから、共犯だと疑われたのではないのか?
「無くなったのは、日本の茶道の所作などが書かれた本で、
5冊で1セットになっているものでした。
有名な茶道家が書いた本で、希少価値が高い本だったのですが、
買い取り手が決まったから、私にそれを、地下の書庫から営業部署の机に、
移動させておいて欲しいと、受付の女の子に言われて、その通りにしたのですが・・・
次の日には、会社のどこを探してもなかったのです。」
「え?そんなことがあったのですか?誰かが売り手に渡したとかでなく?」
「はい。誰も触っていないとのことでした。私は言ったんです。
昨日、受付の女の子に指示されたので、言われた通りに本を移動したと。
そしたら、だったら何故、その本が会社のどこにもないんだ!と、
営業の奴らに理不尽にどやされて。
私だって、何で本が無くなったのか全然わからないのに・・・」
「それで、最後は八百代さんが盗んだと言う事に?」
「そんなところです。私はやってないと何度も言ったのですが聞いて貰えずで・・・
最後にその本を触ったのは、お前なんだから、犯人はお前だろうと・・・その一点張りで・・・
木本の件もあったから、尚のことでした。」
「酷すぎますね・・・その営業部署の方々は・・・」
私は八百代の話を聞いて、同情した。ただ受付の指示に従っただけなのに、
あっさりと犯人扱いとは、その会社の運営に問題があったのではないか?
あの四堂がこんな事態を見過ごすわけがないと思うのに、一体どうしてしまったと言うのか。
「ただ、私が長年警備を勤めていたと言うのもあり、警察には言わないと、
その代わりに本の代金さえ弁償すれば、そこは穏便に済ますと言われました。
私は最後まで無実を主張したかったのですが、その当時は病の母がいまして、
私が彼らに反発して、警察に捕まってしまうと、母の看病出来る人間が、
その時は学生だった妹だけになってしまうので・・・
父は戦争で亡くなっていたので、働けるのは私しかいなかったから、
それで最後は私がやったと認めるしかありませんでした・・・」
「それは・・・悔しかったですね。状況が状況であるなら、
会社の言い分など認めず、戦えたのに・・・」
「仕方がありません。母や妹を悲しませて、苦しい生活をさせるわけにはいかなったですから。」
「けど、本当に誰も貴方の味方になってくれなかったのですか?
肆方院って人さえも?」
「肆方院様は、その時は海外行かれていて、運悪く不在だったのですよ。
だからこそ私を貶めた奴は、その時を狙ったのだと思います。
そうすれば、私が肆方院様に泣きつくことも出来ないとわかった上で。」
私は八百代から、その話を聞いて、四堂が彼を庇わなかった理由がわかった。
いや、正確には庇いたくても庇えなかったのだ。
その事件の最中に自分がその場に居ないのであれば、どうにも出来ないではないか。
八百代の言う通り、彼をハメたがっていた人間は、海外に行っている四堂に、
すぐにその事件の連絡もしなかっただろう。
四堂と彼を引き離したかったのだから、するわけがない。
世の中には汚い人間がいるものだと、私は改めて思い知った気分だった。